12歳 父の死と騎士になる決意
12歳のホープ。
村の外れ。
木の剣がぶつかる音が響く。
カンッ。
ホープが踏み込む。
「はあっ!」
父が軽く受ける。
ホープがもう一度振る。
「まだ!」
だが父が体をずらす。
ホープが勢い余って転ぶ。
「うわっ!」
父が笑う。
「焦るな」
手を差し出す。
ホープが立ち上がる。
悔しそうに言う。
「今の当たってた」
父が笑う。
「当たってない」
ホープは頬を膨らませる。
「くそ……」
父は木剣を肩に乗せる。
「だが」
少し目を細める。
「強くなってる」
ホープが顔を上げる。
「ほんと?」
「ああ」
父は真剣な顔になる。
「でもな」
ホープを見る。
「騎士は剣が強いだけじゃなれない」
ホープはすぐ言う。
「知ってる」
胸を張る。
「守るため」
父の言葉を覚えていた。
父が笑う。
「そうだ」
ホープが言う。
「ぼく騎士になる」
父の表情が一瞬止まる。
ホープは続ける。
「父さんみたいに」
「この土地守る」
父は少し黙った。
そして小さく笑う。
「……そうか」
だがその笑顔の奥には、少しだけ影があった。
⸻
夜
家の中。
母がスープをよそっている。
ホープが食卓で言う。
「母さん」
母が振り向く。
「なあに?」
ホープは言う。
「ぼく騎士になる」
母の手が止まる。
父が静かに座っている。
母はゆっくりホープを見る。
「どうして?」
ホープは言う。
「父さんみたいに」
真剣な目。
「守る」
母はしばらく黙る。
そして言う。
優しい声で。
「ホープ」
「大事な話があるの」
ホープが首を傾げる。
「なに?」
母は父を見る。
父が静かに頷く。
母が言う。
「あなたと私たちは」
少し息を吸う。
「血のつながりはないの」
ホープの動きが止まる。
「……え?」
母は続ける。
「あなたは」
優しく言う。
「私たちの子ではない」
ホープの胸がざわつく。
「どういうこと?」
父が口を開く。
「ホープ」
静かな声。
「お前は赤ん坊の頃」
少し目を伏せる。
「俺が引き取った」
ホープが言う。
「なんで?」
父は答える。
「守るためだ」
母がホープの手を握る。
「でも」
優しく言う。
「あなたは私たちの子よ」
「ずっと」
涙が少し浮かぶ。
「大事な子」
ホープは黙る。
混乱していた。
そのとき。
外で鐘が鳴った。
ガン!!
ガン!!
非常警報。
父が立ち上がる。
顔が騎士の顔に変わる。
「神だ」
母の顔が青くなる。
父が剣を取る。
ホープが言う。
「父さん」
父が振り向く。
ホープは言う。
「ぼくも行く」
父は首を振る。
「駄目だ」
ホープが叫ぶ。
「でも!」
父が近づく。
そして。
ホープの肩に手を置く。
「ホープ」
優しい声。
「お前は」
母を見る。
「ここにいろ」
ホープの目が揺れる。
父が言う。
「母さんを守れ」
少し笑う。
「それも騎士だ」
ホープは何も言えない。
父は扉を開ける。
外へ出る。
ホープが叫ぶ。
「父さん!!」
父は振り返らない。
⸻
村の外。
神が降りていた。
黒い神。
破壊の神。
騎士たちが前に立つ。
その中心に。
ホープの父。
神が笑う。
「人間が」
「神に刃を向けるか」
父が言う。
「ここは」
剣を構える。
「闘神様の土地だ」
神が笑う。
「だからどうした」
神力が落ちる。
轟音。
騎士たちが吹き飛ぶ。
父が突っ込む。
剣が閃く。
神に斬りかかる。
だが神の力は圧倒的だった。
神の一撃。
父の体が吹き飛ぶ。
地面に叩きつけられる。
ホープが叫ぶ。
「父さん!!」
神が近づく。
手を上げる。
神力が集まる。
そのとき空が震えた。
ドン――
闘神が降りる。
一撃。
神が斬られる。
戦いは終わった。
だがホープは父の元へ走っていた。
「父さん!」
父の体を抱える。
血が流れている。
父が目を開ける。
「……ホープ」
ホープが泣く。
「死ぬな」
父が笑う。
「……聞け」
弱い声。
「お前とは」
息が途切れる。
「血のつながりはない」
そして少しだけ笑う。
「だが」
ホープの胸に手を置く。
「お前は」
「俺の息子だ」
涙が落ちる。
父が言う。
「騎士に……」
声が消える。
手が落ちる。
動かない。
ホープの世界が崩れる。
ホープは父を抱きしめた。
泣きながら。
そして静かに言った。
「……父さん」
剣を見る。
闘神の騎士の剣。
「ぼく」
涙を拭く。
「騎士になる」
拳を握る。
「守る」
父が守ろうとした土地。
みんなの命。
「父さん」
「ぼくが守る」
その夜少年は騎士になる決意をした。




