ホープの決意
戦場となった花園の上空。
神々の力がぶつかり合い、空は裂け、大地は砕けている。
その中心で。
母と子が向き合っていた。
時の神。
そして
新たな闘神――ホープ。
神々は遠巻きに二人を見ている。
先ほどまで戦っていたはずなのに、
今は誰も手を出せない。
空気が張り詰めていた。
母がゆっくり歩く。
闘神の剣を手に。
その目は、狂気の奥にまだ何かを残していた。
ホープを見て言う。
静かな声で。
「ねえ」
ホープは剣を構えたまま答える。
「……何だ」
母は首を少し傾ける。
「どうして?」
その声は。
先ほどの神ではなく――
母の声だった。
「神々のくだらない争い」
空を見る。
神々を睨む。
「そのせいで」
胸に手を当てる。
「私はあなたを手放さなければならなかった」
ホープの胸が揺れる。
母は続ける。
「あなたが生まれた夜」
「私は泣きながらあなたを抱いていた」
その声は震えている。
「そして」
闘神の亡骸を見る。
「あなたの父は」
小さく息を吐く。
「殺された」
ゆっくりホープを見る。
その目には悲しみがある。
「なのに」
問いかける。
「どうして」
神々を指す。
「そいつらの味方をするの?」
沈黙。
風が止まっている。
ホープは剣を握る。
そして言う。
静かに。
「……守るためだ」
時の神の目がわずかに揺れる。
ホープは続ける。
空を見る。
遠くの城。
闘神が築いた領地。
人間の街。
エルフの森。
獣人の村。
様々な種族が暮らしている場所。
「父さんが」
言う。
「守ってきた土地」
真っ直ぐ母を見る。
「俺も守りたい」
剣を握る。
「種族とか」
首を振る。
「神とか人間とか関係なく」
「みんなが生きられる場所」
「幸せになれる場所」
その言葉は
闘神が守ってきたものそのものだった。
ホープは言う。
「だから」
母を見る。
「俺は戦う」
沈黙。
長い沈黙。
時の神はしばらくホープを見ていた。
その目は、
悲しそうだった。
母は小さく笑った。
「……残念ね」
闘神の剣を持ち上げる。
時間の力が刃に集まる。
世界が歪む。
神々が息を呑む。
「終わりにしましょう」
剣を振りかざす。
ホープも剣を構える。
次の瞬間。
――
すべてが止まった。
風。
神々。
炎。
雷。
落ちていた石。
すべて。
完全に。
止まる。
ホープだけが動ける。
だが。
何が起きたのか分からない。
「……?」
剣を構えたまま。
周囲を見る。
神々は空中で止まっている。
雷も止まっている。
炎も動かない。
そして。
目の前。
剣を振りかざしたままの母。
その刃も。
止まっている。
ホープの胸がざわつく。
「……何だ」
声が響く。
「何が起きた」
世界が完全に静止していた。




