10歳 初めての神の襲撃
ホープは10歳になっていた。
少し背も伸び、木の剣も前よりうまく振れるようになっている。
村の外れ。
広い空き地。
「えいっ!」
「はあっ!」
ホープが木の剣を振るう。
相手は父。
本物の剣ではなく、訓練用の木剣。
カン!
父が軽く弾く。
ホープが後ろに下がる。
「くそー!」
父が笑う。
「いい動きだ」
ホープが息を整える。
「ほんと?」
「ほんとだ」
父は少しだけ真面目な顔になる。
「だがな」
木剣を肩に乗せる。
「まだ騎士には遠い」
ホープは頬を膨らませる。
「またそれだ」
父は苦笑する。
「騎士はな」
「ただ剣が強いだけじゃなれない」
ホープは言う。
「知ってる」
胸を張る。
「守るため!」
父が少し驚く。
「覚えてたか」
ホープは誇らしげに言う。
「父さんが言った!」
父は笑った。
そのとき村の鐘が鳴った。
ガン!!
ガン!!
父の顔が変わる。
ホープも驚く。
「……何?」
鐘が鳴るのは、ただ一つ。
警報。
村の外から、叫び声が聞こえる。
「敵だ!」
「空を見ろ!!」
父が空を見る。
その顔が固まる。
ホープもつられて空を見る。
そして言葉を失う。
空に。
何かが浮いていた。
人ではない。
鳥でもない。
空中に立つ存在。
体から光が溢れている。
父が低く言う。
「……神」
ホープの心臓が跳ねる。
「神……?」
父がすぐに言う。
「家へ戻れ」
ホープが驚く。
「でも」
父は強い声で言う。
「戻れ!」
ホープは一瞬だけ迷う。
だが。
父の目を見る。
その目は騎士の目だった。
ホープは走る。
家へ。
振り返ると、
父はすでに剣を抜いていた。
村の騎士たちも集まっている。
父が叫ぶ。
「闘神様へ報告せよ!」
騎士が走る。
空の神がゆっくり降りてくる。
その声が響く。
「……ここが」
冷たい声。
「闘神の土地か」
村人たちが震える。
神が笑う。
「豊かだな」
手を上げる。
神力が集まる。
その瞬間、父が叫ぶ。
「構え!!」
騎士たちが前へ出る。
ホープは家の陰から見ていた。
震えながら。
父が神を見上げている。
その背中は――
大きかった。
神が手を振る。
轟音。
家が吹き飛ぶ。
地面が割れる。
騎士たちが飛ばされる。
ホープの体が震える。
「……」
神。
それは。
人が戦う存在ではない。
そのとき。
空が揺れた。
ドン――
空気が重くなる。
神の顔が変わる。
「……来たか」
空の向こうから。
一人の影が降りてくる。
黒い鎧。
巨大な神力。
村人が叫ぶ。
「闘神様!!」
ホープの目が見開かれる。
父が膝をつく。
「闘神様!」
闘神は地面に降りる。
その目が神を睨む。
そして一言。
「俺の土地で」
剣を抜く。
鋼の音。
「何をしている」
次の瞬間。
戦いが始まった。
ホープは震えながらそれを見ていた。
神と神の戦い。
父が守る理由。
騎士が戦う理由。
そのすべてを。
初めて理解した。
そして。
ホープは小さく呟いた。
涙をこらえながら。
「……父さん」
拳を握る。
「ぼく」
震える声。
「やっぱり」
空の戦いを見る。
圧倒的な強さの闘神。
父。
騎士。
「騎士になる」
それが、
ホープが本当に決意した日だった。




