闘神の死、時の神の覚醒
空が裂けていた。
黒い雲の中から、次々と神の姿が現れる。
十。
二十。
それ以上。
神の軍勢。
怒りと殺意が空を満たしていた。
その中心に立つのは、雷の神。
神殿の会議で決断を下した神の一人だった。
雷が空を走る。
雷の神が低く言う。
「闘神」
その声は大地を震わせる。
「神を殺した罪」
「そして」
その視線がホープへ向く。
「その子」
「神々への脅威」
そして腕を上げる。
「ここで終わらせる」
空の神々が一斉に神力を集める。
雷。
炎。
風。
水。
すべてが花園へ向けられる。
そのとき闘神が一歩前へ出た。
妻とホープの前に立つ。
まるで――
壁のように。
闘神の声が落ちる。
「……下がれ」
ホープが言う。
「でも――」
闘神は振り返らない。
ただ言う。
「これは」
剣を握る。
神の剣......闘神の剣。
闘神の力が宿る刃。
「神の戦いだ」
次の瞬間
空から神々が降りる。
轟音。
地面が砕ける。
神々の力が闘神へ襲いかかる。
だが闘神は動いた。
一瞬だった。
剣が閃く。
雷の神の腕が飛ぶ。
神の血が空に散る。
次の神が突っ込む。
闘神の蹴り。
神が地面に叩きつけられる。
大地が割れる。
風の神が風を放つ。
闘神が剣を振る。
風ごと斬る。
神が崩れる。
神々が叫ぶ。
「化け物……!」
だが闘神は止まらない。
一歩、
また一歩。
神を斬る。
蹴り飛ばす。
砕く。
神の体が次々と地に落ちる。
圧倒的だった。
花園はすでに戦場。
花は焼け。
地面は裂け。
神の血が流れる。
闘神の背中の後ろ。
そこには妻とホープ。
闘神は決して後ろへ攻撃を通さない。
神々の攻撃すべてを前で受けていた。
ホープが呟く。
「……すごい」
それは、神の戦い。
だがその戦場の中でただ一人、動かない神がいた。
空の高み。
神々の中心。
創造の神。
すべての神の中でも最も古く。
最も影響力を持つ神。
その手には、槍。
神の始まりの槍。
創造の神が言う。
「……やはり」
静かな声。
「闘神」
「お前は危険だ」
そして槍を構える。
闘神がその気配に気づく。
振り向く。
だがその瞬間
槍が――
放たれた。
光。
空間が裂ける速度。
闘神が剣を上げる。
だが間に合わない。
ドン――
衝撃。
槍が
闘神の胸を――
貫いた。
背中まで突き抜ける。
闘神の体が止まる。
剣が落ちる。
血が流れる。
ホープの声が裂ける。
「父さん!!」
闘神の体が崩れる。
膝をつく。
妻の目が見開かれる。
次の瞬間走っていた。
闘神の元へ。
「……!」
闘神の体を抱く。
胸には槍。
血が溢れている。
妻の手が震える。
「……いや」
声が震える。
「いや……」
闘神がゆっくり目を開ける。
妻を見る。
その目は、いつもの闘神ではない。
ただの男だった。
妻の頬に手を伸ばす。
震える手。
そして言う。
静かに。
「……愛してる」
妻の涙が溢れる。
「だめ……」
闘神の手が落ちる。
目が閉じる。
呼吸が止まる。
闘神は――
息を引き取った。
世界が静かになる。
妻の目から涙が落ちる。
そしてその瞬間何かが壊れた。
胸の奥で。
大きな何かが崩れた。
妻はゆっくり立つ。
目は涙で濡れている。
だがその目は――
変わっていた。
足元に落ちていた剣。
闘神の剣。
妻はそれを握る。
手が震える。
神の剣。
その瞬間体の奥から力が溢れる。
時間が歪む。
空気が震える。
時の神。
その力が完全に目覚めた。
だがそれは正常な覚醒ではなかった。
暴走。
妻の目が空を見る。
神々。
敵。
すべて。
視界が赤く染まる。
ホープが叫ぶ。
「母さん!!」
だが妻は振り向かない。
その目は誰も見ていない。
愛するものを失った悲しみ。
絶望。
怒り。
それが混ざり。
力が暴走する。
妻が呟く。
低く。
壊れた声。
「……全部」
神々を見る。
「消す」
空が歪む。
神々が初めて
恐怖の顔をした。




