神々の闘いが始まるとき
花園は静まり返っていた。
夕焼けの光の中。
地面には――
神の亡骸。
体は真っ二つに裂け、神の血が花に落ちている。
その前に、ホープは立っていた。
剣を握ったまま。
動かない。
息だけが荒い。
「……」
頭の中が真っ白だった。
目の前にいるのは、神。
さっきまで動いていた。
話していた。
それを――
自分が斬った。
ホープは剣を見る。
血がついている。
神の血。
「……俺」
声がかすれる。
「俺……今」
言葉が続かない。
そのとき、花園の入り口から、重い足音が響いた。
ドン……
ドン……
圧が空気を変える。
ホープが振り向く。
そこに立っていたのは――
闘神。
黒い鎧。
いつもの冷たい目。
だが、その視線は真っ直ぐホープを見ていた。
闘神はゆっくり近づく。
神の亡骸を一度だけ見る。
そしてホープを見る。
沈黙。
ホープが口を開いた。
「闘神様……」
声が震えている。
「俺……」
剣を見せる。
「変なんです」
息が荒い。
「急に」
「体の中から」
手を胸に当てる。
「力が出て」
「時間が……止まったみたいで」
目を上げる。
「何なんですかこれ」
ホープは必死だった。
「俺」
「普通の人間ですよね?」
闘神はしばらく黙っていた。
その少年を見る。
十三年前
城から送り出した赤子。
今、目の前に立っている。
そして、神を殺した。
闘神は静かに言う。
「……神の子だからだ」
ホープの目が瞬く。
「え?」
闘神は続ける。
「その力は」
「神の血だ」
ホープは理解できない。
「神……?」
少し笑う。
困ったように。
「俺が?」
「そんなわけ……」
闘神は言った。
低く。
はっきりと。
「お前は俺の子だ」
花園の空気が止まる。
ホープの思考が止まる。
「……え」
言葉が出ない。
闘神は目を逸らさない。
「俺の血を引いている」
少し間を置く。
「そして」
「時の神の血も」
ホープの頭が追いつかない。
「ちょっと待ってください」
笑いそうになる。
「闘神様が……」
自分を指さす。
「俺の父?」
首を振る。
「いや」
「無理です」
混乱している。
だが闘神は動じない。
ただ言う。
「事実だ」
ホープは言葉を失う。
そしてふと後ろを見る。
妻。
花園の奥に立っている。
その目
涙を浮かべている。
ホープの胸がざわつく。
だが次の瞬間空が揺れた。
ドン――
雷のような音。
空が裂ける。
雲の中に――
神の影。
一体。
二体。
三体。
さらに増える。
神々の気配。
闘神は空を見上げた。
目が冷たくなる。
「……来たか」
ホープも空を見る。
恐ろしい気配。
体が震える。
「……何ですか」
闘神は静かに言う。
「神々だ」
ホープの顔が固まる。
闘神は続ける。
「お前が神を殺した」
「それで終わりではない」
空の神々が近づく。
怒りの神気。
闘神は剣を抜く。
鋼の音が響く。
そして言った。
「神々の戦いが始まる」
その言葉は
この世界の運命が動いた瞬間だった。




