表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闘神の子  作者: ありり
神々の戦争
32/48

騎士見習いの少年の正体

夜。


闘神の寝室は静かだった。


城の奥深く。

外の戦の気配も届かない場所。


窓の外には暗い空と遠くの星。


ベッドの中で、二人は並んでいた。


灯りは消されている。


闘神は仰向けに横たわり、天井を見ている。


妻はその隣で、少しだけ闘神の方を向いていた。


沈黙が続く。


やがて妻が小さく口を開いた。


「……今日」


闘神の視線がわずかに動く。


妻は続ける。


「花園に」


少し息を吸う。


「騎士見習いの少年が来ました」


闘神は何も言わない。


だが、誰のことを言っているのかは分かっていた。


妻は静かに言う。


「ホープという名前でした」


その名前が落ちる。


部屋の空気が少し重くなる。


闘神はまだ何も言わない。


妻は少しだけ目を閉じる。


そして言った。


「……あの子」


声はとても静かだった。


「私たちの子ですね」


闘神の呼吸が、ほんのわずかに止まる。


沈黙。


長い沈黙。


闘神はすぐには答えなかった。


ただ天井を見ている。


隠していた事実。


言うべきか。


言わないままでいるべきか。


その迷いが、少しだけ胸をよぎる。


だがもう隠す必要はないと、どこかで思った。


闘神はゆっくり言った。


「……ああ」


低い声。


「そうだ」


妻の目から、静かに涙が流れる。


闘神は続ける。


「十三年前」


目を閉じる。


「あの夜」


「俺が城から送り出した」


その声はいつものように冷静だった。


だがほんのわずかに、重かった。


妻は涙を拭わない。


ただ静かに言う。


「生きていましたね」


闘神は答える。


「ああ」


「強く育っている」


そして少しだけ間を置く。


「……お前に似ている」


妻は小さく笑う。


涙を流しながら。


「そうですか」


闘神は少しだけ顔を妻の方へ向ける。


そして言う。


「だが」


声が低くなる。


「ホープには言うな」


妻が闘神を見る。


闘神ははっきり言った。


「俺たちの子だということは」


「まだ言うな」


妻は少しだけ息を止める。


闘神は続ける。


「神の子だ」


「それが知られれば」


「神々が動く」


その声には、戦場の神の冷たさが戻っていた。


「今はただの人間の騎士見習い」


「それでいい」


そして最後に言う。


「……あいつのためだ」


妻はしばらく何も言わなかった。


そして静かに頷く。


「……分かりました」


少し間を置いて。


小さく言う。


「言いません」


部屋はまた静かになる。


しばらくして、

妻は闘神の腕にそっと触れた。


小さく。


ほんの少しだけ。


そして目を閉じる。


十三年ぶりに知った事実。


自分の子が。


すぐ近くにいる。


その夜、

妻の涙は、静かに枕を濡らしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ