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闘神の子  作者: ありり
神々の戦争
31/48

花園での出会い

さらに数日が過ぎた。


城ではいつものように時間が流れている。


騎士見習いたちは朝から剣を振り、

兵たちは城壁を巡回し、

侍女たちは城の奥で働いていた。


そして――


その日、城の庭にある花園に妻はいた。


十三年前と同じ場所。


花は相変わらず静かに咲いている。


妻は花を手入れしていた。


この花園は、今では彼女が世話をしている。


侍女たちも入るが、

多くの時間を彼女がここで過ごしていた。


風が静かに吹く。


そのとき、

遠くから、若い声が聞こえた。


「……ここか」


妻が顔を上げる。


花園の入り口に、一人の少年が立っていた。


まだ幼さの残る顔。


だが体つきは鍛えられている。


腰には訓練用の剣。


少年は少し困った顔をしていた。


「すみません」


妻を見て、慌てて頭を下げる。


「ここ……入ってよかったでしょうか」


妻は少し驚いた。


騎士見習いがここに来ることは珍しい。


そして訓練所で気になったあの少年。


だが優しく言う。


「ええ、大丈夫ですよ」


「是非みていってください」


「なるべく多くの方と、この空間を共有したいので」


少年は安心したように笑う。


「ありがとうございます」


そして中へ入ってくる。


花を見回す。


「すごい……」


思わず声が漏れる。


「こんな場所が城の中にあったんですね」


妻は小さく微笑む。


「最近見つけたのですか?」


少年は頷く。


「はい、仲間から聞きました」


少し恥ずかしそうに言う。


「剣ばっかり振ってるので」


「こういう場所は初めてで」


妻は花を見ながら言う。


「あなた確かお名前はホープ」


少年は姿勢を正す。


「はい!」


元気な声。


「ホープといいます!」


その名前を聞いた瞬間。


妻の手が、ほんのわずかに止まった。


胸の奥が静かに揺れる。


――この子はやはり私たちの......


だが顔には出さない。


妻は穏やかに言う。


「そうですか」


少しだけ目を細める。


「いい名前ですね」


ホープは少し驚く。


「本当ですか?」


「はい」


妻は花に水をやりながら言う。


「希望という意味でしょう」


少年は嬉しそうに笑う。


「はい、育ててくれた父が言ってました」


「いい名前だって」


妻は静かに頷く。


「ええ」


小さく言う。


「そうですね」


ホープは花を見回す。


「奥方様は」


ふと気づいたように言う。


「ここを管理しているんですか?」


妻は少し考えてから答える。


「そうですね」


「好きなのです」


花を見る。


「こういう静かな場所が」


ホープは少し笑う。


「闘神様とは全然違いますね」


妻は小さく笑った。


「そうですね」


「確かに」


ホープは少し空を見上げる。


そして言う。


「でも」


真っ直ぐな声。


「闘神様はすごい人です」


妻は少年を見る。


ホープの目は輝いている。


憧れの目。


「この前、剣を交えさせてもらいました」


興奮したように言う。


「一瞬でしたけど」


笑う。


「でも」


少し照れながら言う。


「いつか」


「もっと強くなって」


「また挑みたいです」


妻の胸が静かに揺れる。


この少年は知らない。


その神が――


自分の父であることを。


そして、

目の前にいる女が――


自分の母であることを。


妻は静かに微笑む。


「きっと」


花の向こうで優しく。


「強くなりますよ」


ホープは嬉しそうに笑った。


「ありがとうございます!」


その笑顔を見ながら。


妻は思う。


この子は生きていた。


元気に。


強く。


それだけで

胸の奥が、静かに温かくなった。

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