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闘神の子  作者: ありり
神々の戦争
28/48

13歳の騎士

それから――

十三年の歳月が流れた。


神々の戦争は続いている。

領地は広がり、闘神の城はさらに巨大になっていた。


だが城の奥では、かつてと同じように静かな時間も流れていた。



朝。


城壁の上。


闘神は遠くの大地を見下ろしていた。


広い領地。


村や街が点在し、人間たちが生活している。


その横に――

妻が立っていた。


白い衣をまとい、風に髪を揺らしている。


十三年前よりも落ち着いた顔。


闘神を見ることもあれば、遠くを見ることもある。


二人の間には、穏やかな沈黙があった。


妻が言う。


「今日は騎士見習いの誓いの日でしたね」


闘神は短く答える。


「……ああ」


城では、毎年数人の若者が騎士見習いとして剣を学ぶ。


神の軍に仕える騎士。


今日はその日だった。


城の訓練所ではすでに若者たちが並んでいる。


その中に――


一人の少年がいた。



少年は十三歳。


まだ幼さの残る顔。


だが目は真っ直ぐだった。


彼はこの城に仕える騎士の養子として育った。


本当の親の顔は知らない。


名前だけを与えられている。


ホープ。


その名をつけたのは、育ての父だと言われている。


だが本当は違う。


その名前は――


母がつけた。


十三年前。


赤子を城から送り出す夜。


闘神は一つだけ、妻の願いを聞いた。


「名前だけは……」


涙を流しながら妻は言った。


「私に決めさせてください」


そして彼女は言った。


ホープ。


それが少年の名前だった。



城の訓練所。


騎士見習いの誓いの場。


兵たちが並び、神兵も見守っている。


闘神が高い階段の上に立つ。


その存在だけで空気が張り詰める。


若者たちは膝をついた。


剣を前に差し出す。


騎士が順番に名前を呼ぶ。


「前へ」


少年が一歩出る。


「名を言え」


少年は顔を上げた。


真っ直ぐな声。


「ホープです」


闘神はその少年を見ている。


表情は変わらない。


視線だけは――


離れなかった。


少年は続ける。


「今日より騎士見習いとして」


剣を握る。


「この領地と」


そして闘神を見る。


「闘神様に忠誠を誓います」


その言葉は力強かった。


十三歳とは思えないほど。


闘神は黙っている。


その少年を見ている。


少しだけ胸の奥が揺れた。



城壁の上。


妻もその様子を見ていた。


少年の姿。


真っ直ぐな目。


妻の手が、わずかに震える。


十三年前の夜がよぎる。


赤子。


泣き声。


自分の腕から離れていった命。


妻は小さく息を吸う。


そして言った。


「……あの子」


下では、

少年が剣を握り、頭を下げている。


まだ何も知らない。


自分が誰の子なのか。


誰の前に立っているのか。


知らないまま。


誓いを立てていた。



闘神は静かに言う。


「立て」


それが許しの言葉だった。


少年――ホープは顔を上げる。


その目は、まっすぐ闘神を見ている。


尊敬と憧れの目。


自分の息子と思われる少年が、

今、目の前に立っている。


闘神は何も言わなかった。


ただ静かに、

その姿を見つめていた。

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