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闘神の子  作者: ありり
闘神の妻
15/48

神の闘い

神々の戦は突然起こる。


その日もそうだった。


昼過ぎ、城の空気が変わった。


遠くの空に黒い雲が渦巻き、神の力がぶつかり合う気配が広がる。


闘神は窓の外を見ていた。


そして短く言う。


「来たか」


妻は少し離れたところで給仕をしていたが、その言葉に顔を上げた。


次の瞬間。


城の奥から兵が駆け込んでくる。


「闘神様!

北の領地に暗黒の神の軍勢が!」


闘神は静かに立ち上がった。


怒りも焦りもない。


ただ戦場に向かう神の顔。


妻は思わず言った。


「……戦い、ですか」


闘神は振り向く。


そして少しだけ考えたあと、言う。


「来い」


妻は驚く。


「え……?」


「戦場を見る」


短い言葉だった。


「だが俺の後ろから離れるな」


妻は戸惑う。


だがすぐに頭を下げた。


「……承知しました」



城の外。


戦場。


妻は初めてそれを見た。


大地は裂け、空には雷が走り、炎が燃え上がる。


人間の戦とはまったく違う。


神の戦争。


兵たちが叫び、魔物が暴れ、神の力が空を裂く。


そしてその中心に――


闘神がいた。


槍を手に。


暗黒の神が空から降りる。


巨大な神だった。


「久しいな、闘神」


闘神は答えない。


黒い雷が落ちる。


だが闘神は一歩も動かない。


次の瞬間、

槍が閃いた。


空が裂ける。


暗黒の神の体が、真っ二つに割れた。


神の血が空から降る。


妻は言葉を失った。


闘神は振り返りもしない。


戦場を歩く。


神を殺し、魔物を薙ぎ払い、軍を蹴散らす。


それは戦いというより――


蹂躙だった。


妻はただ立ち尽くす。


「……これが」


小さく呟く。


「神の……戦い……」


闘神はすでに戦場の中心にいた。


そして戦は終わった。


あまりにも早く。



夜。


城に戻った闘神は血のついた鎧のまま歩いていた。


兵も侍女も近づけない。


神の血の匂いがまだ残っている。


私室の扉を開ける。


中には妻がいた。


闘神を見る。


血の跡。


戦いの気配。


それでも妻は静かに頭を下げた。


「……お帰りなさいませ」


闘神は何も言わない。


ゆっくり鎧を外す。


妻が近づく。


「お手伝いします」


鎧を外す手伝いをする。


その距離は近い。


だが妻は震えていない。


闘神はそれに気づく。


「怖くないのか」


妻は少し考える。


「……怖いです」


正直な声。


そして続ける。


「ですが」


闘神を見上げる。


「あなたが戻ってきてくださって、安心しました」


闘神の動きが一瞬止まる。


妻は鎧を外し終えた。


闘神はしばらく黙っていた。


そして低く言った。


「……寝室へ来い」


妻は頷く。


「はい」



寝室。


炎の灯りだけの静かな部屋。


闘神はベッドの端に座っている。


戦場の気配がまだ残っている。


妻が部屋に入る。


静かに扉を閉める。


闘神は言った。


低い声で。


「……抱かせろ」


命令だった。


妻は驚かない。


少しだけ息を吸ってから、頭を下げる。


「……承知しました」


妻はゆっくり闘神の前に立つ。


そして言う。


「お疲れになっていらっしゃるでしょう」


静かな声。


「お側におります」


闘神は彼女を見上げる。


戦場では神を斬る目。


だが今は、どこか違う。


妻はゆっくりと闘神の肩に触れた。


その夜。


闘神は初めて――


戦いのあとで、

ただ静かに人を求めていた。

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