プロローグ 〜闘神の土地〜
この世界には神がいる。
神は空に住み、
山を砕き、
海を割り、
大地を支配する存在だった。
神々はそれぞれ領地を持ち、
その土地を巡って争い続けていた。
神の戦いは人の戦とは違う。
山が崩れ、
川が蒸発し、
街が一瞬で消える。
人間も、エルフも、魔族も――
ただ巻き込まれるだけの存在だった。
それが、この世界の常識だった。
だが
その常識から外れた土地が一つだけあった。
⸻
そこを治める神の名は
闘神。
戦いを司る神。
無数の神を打ち倒し、広大な領地を手に入れた神。
しかし、闘神は他の神とは違った。
人間も、
エルフも、
魔族も。
種族に関係なく、その土地で生きることを許した。
争いを禁じ、
力ある者にも弱き者にも同じ法を与えた。
そのため闘神の土地では奇妙な光景が見られる。
市場では人間がパンを焼き、
隣でエルフが薬草を売り、
さらに隣では魔族が剣を打つ。
本来なら敵同士の種族が、
同じ街で暮らしていた。
それは、この世界ではほとんど奇跡のような場所だった。
だが、その豊かさと広さは
当然――
神々の欲望を呼び寄せた。
何度も神がこの土地を襲った。
そのたびに、闘神は戦った。
神と神の戦い。
神の血が空に散り、
大地が裂ける戦い。
それでも闘神は一度も負けなかった。
だから人々は呼ぶ。
守護神。
この土地を守る神。
⸻
そして、その土地の片隅の村に
一人の少年がいた。
まだ幼く、
剣も満足に振れない少年。
だがその少年は、よく言っていた。
「ぼく、騎士になる」
それがこの物語の始まりだった。
少年の名は――
ホープ。




