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4つのおくりもの                         

作者: 菅原とも

大寒波の試練。


職人の国のの子どもたちの言葉からはじまった、


職人の国、学者の国、芸術家の国の助け合いの物語。

あるところに学者の国、芸術家の国、職人の国という3つの国がありました。3つの国はとても仲が悪くていつも張り合っていました。

 今日から大雪の日が続きます。

 3つの国にとって試練のような日が始まりました。


「今日はよく降るな」

「まったく、雪かきする身にもなれよな」

「学者の国では家からでられないおばあさんがいるってよ」

「芸術家の国では雪かき中に埋まった人がいるってね」

 大人たちの話を聞いていた子どもたちが集まってきて心配しています。学者の国の人たちは子どもたちに絵本を。芸術家の国の人はお菓子を作るのが得意。職人の国の子どもたちは2つの国が大好きです。

「絵本の国とお菓子の国の人、大変なの?」

「助けにいってお願い」

 子どもたちの言葉を聞いて、職人の国の大人たちは2つの国の困っている人たちを助けにいきました。


 学者の国はおじいさんやおばあさんが多く、雪の多い日は家からでられません。おばあさんは助けを待っていました。食べる物も飲む物もなく、さびしくてしくしくと泣いていると。外から掛け声と物音がします。

「助けにきたぞ、学者の国のおばあさん」

「あなたは職人の国の人?」

「さあ、温かいスープと柔らかいパンだよ、おばあさん」

 おばあさんは湯気の立つスープとふんわりしたパンを受け取りました。スープとパンのおかげで心も体も温まりました。

「さて、芸術家の国の人たちを助かっただろうか?」


 真っ暗で冷たい。足ももう痛みを感じなくなってきた。何分立ったんだろう。ぼんやりとした意識の中、芸術家の国の青年は眠くなってきました。

 その時、雪から光がこぼれてきます。

「おい、芸術家の国の青年!」

「あ、あなたは?」

「意識はあるぞ。足をけがしているな、急いで病院へ運ぶんだ」

「助かった」

 青年はほっとすると眠ってしまいます。


 目を覚ますと青年のお母さんが横でりんごをむいています。並んで座っているお父さんは新聞を読んでいました。りんごをもらって、新聞を見る、そこには職人の国の人たちが学者の国や芸術家の国の人たちを救ったことが大きくのっています。

「なんでも、2つの国の子どもたちにおもちゃを寄付したって」

「お父さん、まずは足が無事であることを知らせるのが先でしょう?」

 1つめのおくりものはおもちゃです。


 職人の国と芸術家の国で病気が流行り始めました。

 あっという間に2つの国中に広まってしまい、2つの国が困っていると学者の国のおばあさんは新聞で知ります。助けてくれた職人の国の人が小さくのっていました。

「こうしてはいられないわ。2つの国を助けにいかなくちゃ」

 おばあさんは女医だったのです。学者の国の知り合いを集めて職人の国と芸術家の国へいきました。

 職人の国に着くとおばあさんたちは患者たちをみていきました。薬をだし、看護師たちと協力して職人の国の人たちを治していきます。

「あなたはあの大雪の時のおばあさん?」

「ええ、助けてくれた恩返しにきたのよ」

「ありがとう。子どもたちのお願いを聞いてよかった」

「子どもたちの?」

「絵本の国とお菓子の国が大好きな子どもたちがいるんだ」

「その子どもたちは?」

「家族の心配をしているよ」

「しょんぼりとしていてね、元気づけたいんだけどさ」

「まかせておいて、とっておきのおくりものがあるの」

 おばあさんは子どもたちに会いにいきました。

 子どもたちは集まって家族の話をしています。病気で辛そうな家族に小さな花束や手紙を届けたこと。それを見て家族が笑って元気がでたよと言ったことです。

 おばあさんは子どもたちの輪に入り、絵本の国からきたこと、子どもたちのお願いのおかげで助かったことを話します。子どもたちは顔をかがやかせます。

「絵本の国からきたの!」

「そうよ、みんなにおくりものを届けにきたの」

「なあに?」

 おばあさんは子どもたちに絵本を渡します。

 わあ、と子どもたちは集まってきます。おばあさんは職人の国のみんなに届けにきたのよとやさしくほほえみます。ひとりひとりに絵本を手渡していきます。

「あら?」

「ぼくの分は?」

 病室にいた子たちも顔をだしました。

「たくさん持ってきたのよ、そうね、お菓子の国の子どもたちにもね」


 同じ空の下、松葉杖をつきながら青年は国中の子どもたちが、学者の国から届いた絵本をうれしそうに見せ合う姿を見ます。家族が心配で泣いていた子どもも絵本を見て笑顔を取り戻しました。

「次はおれたちの番だな」

 芸術家の国の青年は松葉杖をつきながら力強く歩いていきます。

 2つめのおくりものは絵本です。


 大雪に病気と、学者の国も職人の国の人もすっかり元気をなくしていると芸術家の青年は新聞で知ります。転びそうになりながら仲間を集めて、職人の国と学者の国へ急ぎました。

 どんよりとした空の下、職人の国はどこも不安そうな顔でいっぱいです。町をゆく子犬もしっぽをたれています。

「なんて顔してるんだ」

 町の中をおいしそうなにおいとおしゃれな音楽が聞こえだします。

 職人の国の人たちは顔を上げると、そこにはキッチンカーとイスやテーブル、音楽を演奏する人たちがいました。

「さあ、たっぷり食べて歌おう踊ろう!」

 みんなでおいしいものを食べて、となりの人とおしゃべりして、音楽に合わせて歌って踊って。職人の国の人たちは楽しい気持ちを取り戻しました。

 お持ち帰りのデザートをもらって、職人の国の人たちは家に帰っていきました。子どもたちを集めて青年はいいました。

「みんな、お菓子の国からきたコックからおくりものだ」

 子どもたちひとりひとりにチョコレートの動物たちを渡します。

「わんちゃん!」

「ねこちゃんもいるよ」

「これは、ペンギン?」

 子どもたちはお互いにチョコレートの動物たちを見せ合って遊びだしました。

 喜ぶその姿に芸術家の国の青年は心の中が温かくなります。仲間たちとハイタッチをします。

「学者の国でも今頃はきっと喜んでいるだろうな」


 小さな女の子が音楽に合わせて歌い、男の子は踊っています。

 学者の国でもチョコレートの動物は大人気です。

 おばあさんはこんなにおいしいものは久しぶりに食べたと感じました。

 3つめのおくりものはお菓子です。


 明日は最後の大雪の日ですが、吹雪になると新聞にのっています。

 吹雪が学者の国、芸術家の国、職人の国をおそいます。ガタガタビュービューと窓をゆらす雪に、3つの国の人はもう不安な心に流されたりしません。

 吹雪は翌日止みました。3つの国の人たちはお互いの国に雪かきを手伝いにいったり、不安だった人の話を聞いたり、みんなをたくさん笑わせたり、吹雪の間に病気になった人を治したり、おいしいスープでみんなの心も温めたり、ステキな音楽を演奏して元気づけたり、ただとなりにいたりです。

 みんなが自分にできる人助けをして、助け合いの輪は前よりもずっと大きくなっていました。


 3つの国にとって試練のような大雪をのりこえて、4つめのおくりものを3つの国の人たちは子どもたちへ届けます。

 ずっと仲良く助け合いながら暮らしていくことです。

                                                           

最近のニュースに心を痛めている方も多いことでしょう。


すこしでもあったかい気持ちになってくれたら嬉しいです。

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