009.日常のお仕事(6)
みゃー探偵社の朝は遅い。 主な原因はマエが寝坊だからだ。
それでも問題ない、依頼者はもっと遅いからだ。
何故かというと、開業時間をマエに合わせて遅らせている。 表向きは10時から、マエには9時からと言ってある。
私はそれがバレないようにマエの出社する時だけ毎日看板をかけかえている。
マエから毎日「遅くなったゴメン」と言われている。
スメちゃんも協力してくれている、まったく無駄な仕事だ。 おかげで私達の仕事時間は長い。
スメちゃんとの会話で、この様にマエを通さないで話したい時は、50音表と数字のボードの上を肉球で高速に指し示していくという技を編み出した事で実現したのだ、そしてスメちゃんはそれを高速に読み取る技を得た事で会話が成り立っている。
まあそんなに焦って開店しても客は言うほど来ない、そんなに毎日来ても処理できないし。
今日は昼頃に新しい依頼主が来た。
「依頼内容は『埋蔵金の調査』です。」
「いやいや、そんなの見つけられるぐらいなら探偵社してませんよ」
「いえ、見つけろとは言っていません、調査です」
「でもそれって資格が要るんじゃないの? 発掘員だったかな」
「はい、その準備と費用に関しもうちが費用を出します。 その資格も本来は発掘調査員の資格が必要なんですが・・・」
「そうまでして、なんで探偵社なんかに依頼するんですか?」
「実はテレビ番組制作会社のディレクターをしておりまして・・」
テレビ?
「実は、この探偵社、世間では結構有名になっているんですよ」
「はあ、そうなんですか? 別に宣伝はしていないんですが・・」
「ネコ探偵って言われてましてね」
私か
「なんでも、探し物が得意とか・・」
物が得意なのはノラだけど。
「犬も使うとか」
わんにゃんサーカスじゃないよ
「それで『埋蔵金発掘番組』でゲスト出演してほしいんです」
それ絶対に見つからないやつだ、主から聞いたけど、いろいろな国から指名手配されたときに腹癒せに世界中の埋蔵金全部取っちゃったって言ってた。 大人げない主だと思ったので覚えている。
あっ、でも代わりのもの残してきたとか言ってたな。・・・何だっけ?
トラップとかもあったはずだ。
思い出した、ダンジョンにしたって言ってたんだった。
魔獣とかは出てこないけど、落とし穴とか色々あるとか言ってた。
確か危険だから近づくなと言って地図をくれた・・・・あった。
えっと、ここと、ここと、ここに落とし穴。 よし覚えた。
これはやめさせるべきなのか?
テレビ的には面白いかもしれない。
私はネコだ。 知らんぷりしても問題ない。 ネコだから。 でも親切に教えてあげよう。
テレビ局の人が地図を持ってきた。
肉球でぺたぺたぺたっと覚えていた3箇所に印をつけて、
ここにゃー、マエに頼んで「注意」といってもらった。
テレビ局の人は何を勘違いしたか、ここに注目?
いや違うし・・・
掘り始めてしまった。
「さあ、ネコ探偵による指示で掘り始めましたぁ!
出るか?
さあ、出るかぁ?」
あらためて「ここ注意」といってもらっても
「ここを注意してみててくださいと言っています。
よほど自身があるのか?」
どどどどーー。
落とし穴に落ちてしまった。
私しーらないっと。