014.社員旅行(3)
流石に神経が図太いと思われるスメちゃんも社員旅行を中断して帰る事に同意した。
事務所に帰ると、溜まった新聞からあの山荘の事件を見つけて、全員どよよーんとしたのだった。
残りの日程は休暇とした。
もちろん “キャンプ” は私達の中で禁句となった事は言うまでもない。
休暇明けの初日
「おう、お前ら、キャンプに行かないか?」
「「「「嫌だーーー」」」」
珍しく署長が来たが、全員拒否った。
「どっ、どうしたんだ揃って」
とりあえず事情を話したら
「やっぱりトラブル体質だな」
と言われた。納得いかないが・・・事実が物語っていた。
「で、依頼なんだが・・
友人がやっている△△山荘に呼ばれていてだな。 旧友たちが集うんだ、
各自2名の同伴可能って言ってたから誘おうと思ってな。
キャンプもできるそうだが・・・・」
「「「山荘も嫌だー」」」
「だよな、でもこれは専属アドバイザーとしての依頼だ」
「なんで、そんな個人の集いに?
それに、それってもろに “物語の◯◯山荘殺人事件のシチュエーション” じゃん」
「だからだ、 だから依頼したいんだよ」
「必ず事件が起こると?」
「そういうシチュエーションなんだろ? だがそれでは警察は動けない。
お前たちに依頼するしか無いんだよ」
「署長がいるでしょ」
「私はデスクワーク専門だ」
「わたしたちは迷い猫・犬専門ですけど」
「ちょっとアンバランスなチームではあるな」
仕方がない、誰か臨時で応援をつけてもらえないか主に頼んでみよう
「戦力不足? なるほど、
期間限定でタエラ(タエ)を貸すわ、マエとも知り合いだし、ちょっとした里帰りもいいかな」
主が護衛のタエラを貸してくれるらしい。 タエラは眷属なので私よりも上だ。 ちょっと緊張する。
「タエ、いや、タエラ、久しぶり本当に生きてたんだ」
「マエ、久しぶりね、一度は死んだわ、肉体はね」
積もる話もあったらしい、ずっと話し込んでいる、主に頼んで良かったな。
マエはいつしか寝てしまった。
タエラは主とおなじで寝ないので、その後私は経緯と事情を詳しく話した。
タエラは皇姫亜に会いたいらしい、説得するのではなく、ただ同じ病で苦しんだ人と話したいと。
主はもう一つの可能性をうっかり忘れていたらしい。
それはゴーレムではなくホムンクルスに魂をいれる方法だ。
そのホムンクルスは同じく日本人転生者の異世界魔王の作ったものらしい。
それならば人体と同じなので苦しみも少なく、自分が自分でいる事が出来るらしい。
そして、現在は動力源もダークマターから取り出せるのでこの世界でも生きていけるらしいのだ。
ただ、人ではなくなる事は変わらない。 ・・見かけは近づける事が出来るけど。
その方法を提案してみるらしい。
姫亜はその提案に興味を示した。
死期も近くなり、同じ病だったタエラの話も心に通じたのだろう。
あとは主がなんとかしてくれると思う、これで安心だ。
そうこうしているうちに、署長と約束の日が来てしまった。
嫌だな。