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広い家でやりたいことといえば

 その後の学園はキングズリー先生の助言もあり、周囲に不審がられることなく一日を終えた。

 

「もし困ったことがあればすぐに来なさい」

 

「はいっ、ありがとうございます」


 今のところまだ頼るような出来事は起きてはいないが、キングズリーの言葉は私にとってお守りのようなもので安心する。

 何事もなく数日が過ぎ、今日は学園が休み。


「えっと、貴方の名前は……」


「マキシーです。お嬢様担当侍女です」


「マキシーね……」


 使用人との関係を築こうと、一人一人に直接名前を尋ねまわっている。

 皆仕事中という事もあり、私との会話はよそよそしい。

 だが、忙しなく働いている彼らに声を掛け仕事を中断させるのが申し訳ない。

 何かいい方法がないだろうか……

 私が彼らの名前を覚える事ができ、彼らにも利益に繋がるような……


「あれ? ここはどこ? 」


「お嬢様、こちらはお客様専用のお部屋です」


「お客様専用……」


 お客様用と聞き部屋を見渡すも、内装や家具はもちろん掃除も行き届いている。


「お部屋まで私が案内いたしましょう」


「……ありがとう」


 学校以前に自身の屋敷さえ把握できていないのは問題かもしれない。

 屋敷と使用人を一気に覚えられ、更には彼らにも利益になるような何かってないかなぁ……


「あれ? あの本がない……」


「お嬢様何かお探しですか? 」


「あっ、ここにあった……何でもない」


 私の事をよく知るマキシーだとしても『ここにあった官能小説どこに行ったか知らない? 』とは聞けない。

 恥ずかしすぎる。


「あっあの本でしたらこちらに……」


 マキシーは本棚の前に立ち何冊か一気に掴む。

 その奥に一冊の本が隠されていた。


「うわぁ……」


 隠していることも、更には隠し場所さえ把握されていることにも恥ずかしい……


「私がお嬢様の事で知らない事はありませんから」


 誇らしげにするマキシー。

 きっと彼女に隠し事は出来ないのだろう。

 

「隠す……見つける……あっ、あれが良いかもっ」

 

 隠れて、見つけて、さらに逃げ切った人間には賞金がもらえる。

 皆でやったら楽しそう。

 

「一度やってみたかったんだよね、こんな大きな家を舞台に」


 子供の頃の夢。


「お嬢様? 」


 そうと決まればお金持ちのお父さんにおねだりしなくちゃっ。


「お父様に明日、お小遣いが欲しいって伝えて」


「畏まりました」


 お小遣い欲しいなんて、まさにお金持ちのワガママ令嬢みたいっ。

 小説に登場するワガママ令嬢を堪能している私だが、マキシーの反応はいつものお嬢様への対応。

 

「お小遣いって言ったけど、いくらぐらい貰えるんだろう? それによって、皆のやる気も変わるわよね……大の大人が百円ぐらいの価値で私のワガママに参加してくれないだろうな……娘への溺愛を信じるしかないわね」

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