登校初日
「可愛い制服ね」
異世界の制服は過去の高校とは違い可愛いを追及しているような制服だった。
コスプレ感覚でテンションが上がるのは、シャルロッテが綺麗で何でも似合ってしまうからだと思う。
「馬車? 」
そして極めつきが馬車。
初めて乗車する。
「うっ……」
初めこそ興奮したが、車に慣れている私からするとかなりの振動を感じる。
酔ってしまう程ではないが、気になる。
幸いなことに公爵家から学園がそこまで遠くないという事。
朝の通勤通学ラッシュの電車内や乗り換えがない分、楽は楽。
馬車が停車し扉が開かれる。
「わぁぁ……すごい……」
ゆっくり乗り慣れない馬車から降りると、またしても現実離れしたような学園が目の前に広がっていた。
事前に準備した地図を手に、自身の教室を目指す。
気のせいか通り過ぎる人達は私を極端に避けている。
「公爵令嬢だから?」
人の波に流されながら、道順を記憶して教室へ向かう。
第一関門と言える自身の教室には無事辿り着くことが出来、席に着くことも。
「ふぅぅぅうううう」
問題はこれから。
どんな授業があるのか不明だし、今日の授業に付いていけるのかも不安。
私が記憶喪失であるのを公表してしまえば楽なんだろうが、それはズルい気がする。
どの転生者も記憶喪失や事前情報がない中、乗り越えていた。
私も転生者スリルを味わいたい。
「んんんんんんんん」
過去とは全く違う授業を受けるのは面白いと感じるのだが、ふとした瞬間に日本語で文字を書いてしまうので気が抜けない。
授業の記憶はないが、文字は読むことも書くことも出来ることが分かった。
もうすぐお昼になろうとするが、私は今のところ誰とも会話していない。
その事に寂しいと感じるよりも、記憶喪失という事に気付かれていないことに安心する。
食堂でも、全校生徒がいるので私が一人で席についても誰も何も思わない。
「あっ美味しい」
学園の食堂というのは初めてで何食べようか悩んでしまい、本日のおすすめを頼んだ。
食事を終え次の授業の時間まで学園内を散策する。
中庭を抜け建物内に入り彷徨っていると、次第に人の気配がなくなっている事に気が付いた。
「やばっ、もしかして戻らないと遅刻するんじゃない? 」
広すぎる構内なので予鈴がなる前に移動しないと間に合わない気がする。
それに私は地図を見ながら移動している。
「えっと教室は……あれ? 今どこだ? やばい……迷った……」
地図を見るも自分が何処にいるのか把握できない。
誰かに付いて行こうにも人がいない。
「やばい、やばい、やばい」
目立ちたくなに遅刻なんてしたら目立ってしまう。
どうしよう、どうしよう、どうしよう……
「…………ンハワー……アイゼンハワー……アイゼンハワーッ」
「キャッ」
声を掛けられていたが、迷子である自分に夢中で気が付いた時には至近距離に相手がいて悲鳴を上げてしまう。
アイゼンハワーという名前にまだ慣れておらず、自身が呼ばれているとは思わなかった。