試験結果
卒業のかかった試験結果が届く。
答案用紙が一枚、また一枚と返却され卒業資格が確実になっていく。
「んふふ」
そして最後の一枚が返却された日、掲示板に優秀者が張り出された。
答案用紙から無事に卒業が出来ると確信があるので、わざわざ観に行く必要はないかな? と思っていたが一応確認に行く。
「私の名前は……えっ……嘘……十……十四位」
前回の試験からかなり順位を上げた。
周囲の驚いている声が私の耳にも届く。
『嘘ですよね? 』
『あの方が……』
『まさか……成績を買ったんじゃ? 』
『それはありませんわ。いくら公爵が娘を溺愛しているからと言っても不正は許しませんもの』
『そう……ですよね』
『なら……実力で? 』
私よりも父の信頼がここまで高いことに驚くも、この結果には私も信じられずにいた。
学園でキングズリーに評価されることは無かったが、休日には褒めてくれた。
婚約してから、キングズリーは頻繁に我が家に訪れている。
「今回は相当頑張ったんだな」
「……はい」
あの時は、キングズリーの事を考えないようにするために必死だった。
「あの姿が見られないのも惜しいな」
「あの姿……? あっあの姿は……それに、先生も素顔の方がって言ってくれたじゃないですか」
試験期間しかしない悪女の恰好。
あれは、充血や隈などを隠す最終手段。
普段は絶対にしない格好だ。
「あの姿を見るのが俺だけなら問題ない」
「……先生は意外に独占欲が強いんですね」
「惚れてる女には男なんてそんなもんだろう? 」
惚れてる女……
キングズリーの口からそんな言葉が出るなんて。
それに、なんだか性格が変わったように思えてならない。
「男の人の気持ちは分かりません。私にとっては先生が初めてですから」
「ふっ。それはいいな」
私はずっとキングズリーの大人の余裕・色気に翻弄されている。
「もうすぐ、卒業式だな。ドレス一式は俺が贈るから」
「はい……んふっ」
キングズリーからの贈り物が嬉しく、約束してから届くまで私は毎日使用人に贈り物の確認する日々だった。
そこでいらない贈り物も届いたが、それは返却させていただいた。
「なんで彼が私に……まだ、あきらめてないの?」
すっかり忘れていたのに、突然ドレス一式が届いた。
一緒にメッセージも届いたが読まずに返却。
この時期にドレスの贈り物は『卒業式に着用してくれ』という意味なんだろう。
そんな事をしたら、周囲になんて思われるか分からない訳がない。
それでも送ってくるという事は、未だに私との再婚約を諦めていない。
「面倒な事しないでほしいわ」
それから二日後、キングズリーからドレス一式が届く。
「来たのねっ……素敵……」
ドレスの色がキングズリーの色だと思うと、余計に嬉しくてたまらない。