宣言
「お父様、私……先生……ロヴァルト様と婚約したいです」
父にロヴァルトとの婚約を宣言。
「そうか、分かった」
優しく微笑まれ、婚約の書類が準備される。
正式書類が作成され、キングズリーからサインをする。
ペンを握るキングズリーの長く綺麗な手に見惚れてしまう。
書かれた文字も、大人で格好いい。
その後、私も丁寧に自身の名前を記入する。
「シャルロッテ、婚約パーティーだがどうする? 今から準備するなら招待客などを考え半年は時間が必要になる」
周囲には婚約したことを発表するパーティーを開催するのは決定されているみたい。
「お父様、招待客は最小限で良いので私は婚約発表は卒業してすぐを希望したいです。先生は大変オモテになるので婚約を早く発表したいです」
「なんだ? ロヴァルト様は愛人がいるのか? 」
私の余計な一言で父が要らぬ勘違いをしてしまい緊張感が増す。
「いません、誤解です。婚約者がいないことで声を掛けて頂く機会はありましたが、私が婚約したいと思えたのはシャルロッテ嬢が初めてです」
婚約したいと思えたのが私が初めて……
それより、私の事『シャルロッテ』って……
「そういう事なら。ですがシャルロッテを蔑ろにしたり裏切った場合、私は誰が相手でも許しはしない。妻に誓って報復しますから」
妻……
父が母を今でも愛しているのは我が家だけでなく、社交界でも有名。
神ではなく、妻に誓うところが父らしくて素敵。
『報復』という言葉については怖く、聞こえなかったことにする。
「もちろん。私も令嬢を裏切る行為は致しません。アイゼンハワー公爵のように生涯シャルロッテ嬢を愛し続ける事を誓います」
「ふん……ふん……ふぅん……」
「シャルロッテ、少しは落ち着きなさい」
キングズリーの宣言を聞き、発狂するのを抑えていたが代わりに鼻息が荒くなるのを父に窘められた。
だって……生涯愛し続けるなんて……
「私もっ、先生を生涯愛し続けましゅ」
……最悪だ。
どうしてこういう大事な時に私は……
キングズリーと同じように愛を誓いたかっただけなのに……
「シャルロッテはこういう可愛いところがある。守ってやってほしい」
「はい。そういうところすべてが愛おしいので、全力で守ります」
二人は大人で、私の噛みなど聞かなかった事にしてくれた。
それよりも私の頭の中は
『愛おしい』
『愛おしい』
『愛おしい』
キングズリーの言葉が木霊している。
その日、キングズリーは我が家で夕食を共にして帰って行った。
「ふふ~んっんっんん~ふふ~んっんん~」
キングズリーの帰宅後、私は誰が見ても浮かれていた。