休日
パーティーの翌日は休み。
今日は珍しく、父もいる。
「お父様、お茶を一緒にしませんか? 」
「もちろんだ」
私が誘うと父は仕事を中断してお茶に付き合ってくれる。
昨日、父がキングズリーと何を話したのか気になり探りを入れるために誘った。
「お……お父様……これを……」
「なんだい? 」
「私が……初めて働いて購入したブレスレットです」
以前購入した贈り物を渡す時が来た。
いつ渡そうと思っていたら時間が過ぎてしまっていたので、いい機会。
「そんな貴重な物をくれるのかい? 」
「はい……お父様には安物でみっともないと思いますが……」
「そんなことは無い、シャルロッテからの贈り物大切に使わせてもらうよ」
父はすぐに身に着けてくれた。
公爵という立場の人が身に着けるには相応しくない代物。
今日だけだろうが、その行動が嬉しい。
「それ、私とお揃いなんです」
私も身に着けているブレスレットを見せた。
「おぉ。シャルロッテとお揃い。毎日つけるからな」
「これは安物なので……」
「金額じゃない、シャルロッテの思いが詰まったものだ」
父の嬉しそうに眺める姿に、この後自分が聞き出したいが為に贈ったと思えてしまいそうで話の切り出し方が分からない。
「学園はどうだ? 」
「慣れた……と思います」
「不安なことがあればすぐに言いなさい、私が解決する」
「ありがとうございます。今のところは……問題ないです」
「そうか? 我慢するんじゃないぞ」
「はい」
「昨日、ロヴァルト様に送られたようだが親しいのか? 」
父の方からキングズリーの話をされた。
「私の異変に気が付き、色々お世話になっております」
「記憶が無い事を話したのか? 」
「はい」
「彼はいつ気が付いたんだ?」
「……初日です」
「初日にシャルロッテの変化に気が付いたのか?」
私が迷子になって気が付かれたとは言い辛い。
「あっ……はい」
「そうか……彼はとても生徒の事を見ているんだな……どうだ? 彼は」
「えっと……素敵な先生だと思います。優しくて、いろんな場面で助けてくれるので」
「婚約者には? 」
思いがけない父の言葉に驚く。
「婚約者ですか? 」
「あぁ。私は昔、シャルロッテとロヴァルト様との婚約を考えていたんだ」
「そう……だったんですか? 」
何してんの過去の私。
絶対に、アンダーソンよりキングズリーの方が断然いい男よ。
婚約と言う重大な事は、目の肥えた父に任せておきなさいよ。
幼かったとは言え、なんて過ちを……
「シャルロッテの気持ち次第だ」
「私は……キングズリー先生と婚約出来たらと思いますが……過去の失敗から相手の気持ちを蔑ろにしたくありません」
「ロヴァルト様はシャルロッテの気持ちが大事だと話してくれたよ」
もうすでに話しているの?
父よ、行動が早い。
でも嫌いじゃないよ。
相手がキングズリーなら……
「大事に……私が、望んだら婚約が? 」
「あぁ」
「少し……考えさせてください」
「急いで結論を出す必要はない。ゆっくり考えなさい」
「はい」
父とのお茶会は終わった。
過去、見た目で婚約者を選んだことのある私だから、先生の容姿で父が乗り気になるのではないか? と再び話を持ちかけたとか?
だけど、まさか過去に父が私の婚約者に選んでいたのがキングズリーだったとは……
「私が先生と婚約したいと言ったら、本当に婚約するんだろうか? そこに先生の気持ちは? 先生が私を……ありえない」
私はこの提案を喜んでいいのだろうか?
もし公爵の父が婚約を申し込んだら、侯爵家の先生は断ることが出来るのだろうか?
もしかしたら、キングスリーは私が婚約を申し込むことがないと思い私に決断を託したのではないだろうか?
ここで私が『先生と婚約します』なんて言ったら、キングスリーを困らせるだけ……
「はぁ……どうしたらいいんだろう? 」
嬉しい提案なのに……