表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/63

私のやりたいこと……悪い事

 私という人物がどんな人間なのか。

 使用人の話と部屋の内装からお金持ちなんだろうと推測できる。

 見栄で豪華な内装にしている可能性もあるが、そこは考えないようにしよう。

 今はこの見た目と偽物のお金持ちを満喫しようと思う。

 使用人と話していると、次第に自分の立場を受け入れていく。


「私は……死んだんだ……」

 

 徐々にあの時の記憶が鮮明になって行く。

 過去の私はつまらない人間だった。

 学校に登校して、授業を受けて、帰宅する。

 私は部活に入部はしていないし、校則に決められているバイト禁止も守っている。

 周囲は隠れてバイトしているけど……私はしていなかった。

 というより、校則を理由に面倒だからしていないだけ。

 受験に失敗して遠い学校に通っていたので、朝は早く帰りが遅いのでバイトしている余裕がなかった。

 なので家と学校の往復。

 何の変わり映えもない日常。

 いつものように慣れた道で家に帰る。

 滅多に車の通らない道路でも、必ず信号は守った。

 守っていたのに……

 私は車に撥ねられた。

 

「私に似合いの終わり方……ハハッ」


 自身の人生を振り返れば、つい笑ってしまう。

 元々自らの意思で生きていたのか分からない人生。

 世間に流され……常識に縛られ……規則に囲われ……

 私はよく『真面目』と言われるが本当は違う。

 教師に怒られるのが嫌。

 後始末をするのも面倒だから無遅刻・無欠席・無早退。

 委員会の委員長をしたのは、誰もやりたがらず教師に指名されたから。

 いざという時の誰かの代行で仕事を頼まれた時も『信頼されている』からだと勘違いした事は無い。

 同級生にも。『バイトで居残り出来ないから交代して。今度、言ってくれたら交代するから』と言われ交代するも、私が交代してもらったことは無い。


「頼みやすく、断らない、都合のいい人間」


 それが私への周囲の評価。

 『してはいけない事』でも『やりたいことをする人』に憧れを抱いていた。

 私は周囲からの勝手な評価さえ裏切ることが出来ない、小心者。

 過去を受け入れ、新しい自分を確認すると私の転生は幸運と言える。

 

「お金持ちで……父親に溺愛されている。性格に難ありの令嬢に転生なんて……私の理想そのもの……」


 性格に難ありの令嬢に転生する事に不安を抱く者もいるだろう。

 だけど、私は嬉しくてたまらない。

 それにお金持ちで父から溺愛だなんて……


「それって……怖いものなしってことだよね? 」


 元々悪い噂しかない令嬢であれば、評価など気にせず私が今まで出来なかった『悪い事』が出来る。

 そう思うと嬉しくて堪らない。

 それが『肩書がなければ何もできない小心者』と嫌われるような人間だったとしても私はそれでいい。


「私はこれから、やりたい事を経験するんだっ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ