表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/63

不安が不安を呼ぶ

 長期休暇も終わろうとし、今日王都に戻る。

 使用人に見送られながら馬車に乗り込む。

 私と父が王都に戻る為に使用人が見送りに集まっている。


「お嬢様、ケーキ美味しかったです。ありがとうございます」


 領地でお世話になった使用人にお礼を言われる。


「いえ、美味しかったので皆さんにもと思っただけです」


「エイジャックスに聞いております、お嬢様が働いたお金で購入されたと」


「あっ、それは……」


「お嬢様のお気持ち大変嬉しかったです」


 その事を知っているのは彼女だけでなく、控えていた使用人全員がお辞儀する。

 領地に到着した時に比べ、皆の表情が変わったように見えた。

 私は来た時と同じようにマキシーと一緒に馬車に乗り込む。

 数日かけて王都に戻る。

 

「はぁぁぁぁあああああ」


 王都の屋敷に到着すると自然と体を伸ばしていた。

 公爵令嬢としてあるまじき行動だが、長時間の移動をするとこうなってしまう。

 私よりも使用人の方が疲れているはずなのに、マキシーは疲れている姿を一切見せない。

 

「私より貴族ね」


 マキシーの働きに感心している。

 私と言えば領地でのこともあり、学園が始まるまで大人しくしているつもり。

 

「先生に手紙を書いたら迷惑かな? 」


 助けてもらったのに、お礼も言わずに王都に戻ってきてしまった。


「お礼の手紙は問題ありませんよ」


「なら、書く」


 キングズリーに手紙を書くと決めたものの、なんて書いていいのか分からず机に向かって時間が経った。

 

「お嬢様、休憩なさいますか? 」


「……そうする」


 手紙が書けないでいる私に見兼ねたマキシーが紅茶を差し出す。


「お嬢様、二日後には学園が始まります。手紙が難しいようなら直接お礼を伝えてはいかがですか? 」


「直接……それの方が難しいっ」


 マキシーの言葉で手紙へのやる気が出て、急いで書き終えキングズリーに届けた。

 手紙でお礼を伝え安心していると、次第に不安が押し寄せる。


「あれ? 手紙にあんなこと書く必要なかったのか? 」


 手紙にはお礼と……

 『勘違いさせてしまったのは私の至らなさですが、あの人とは何の関係もありません。誤解しないでください』

 等と、言い訳のような手紙を書いてしまったような気がする。

 

「あの言葉いらなかったのかな……ねぇ、先生からの返事はない?」


「届いておりません」


 学園が開始となれば生徒よりも教師の方が忙しい。

 そんな時期に重要でもない手紙の返事を頂こうなんて……


「学園で直接お礼すればいいよね。手紙は事前告知のようなもの……」


 手紙の返事がないまま長期休暇が終わり、学園が始まる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ