不安が不安を呼ぶ
長期休暇も終わろうとし、今日王都に戻る。
使用人に見送られながら馬車に乗り込む。
私と父が王都に戻る為に使用人が見送りに集まっている。
「お嬢様、ケーキ美味しかったです。ありがとうございます」
領地でお世話になった使用人にお礼を言われる。
「いえ、美味しかったので皆さんにもと思っただけです」
「エイジャックスに聞いております、お嬢様が働いたお金で購入されたと」
「あっ、それは……」
「お嬢様のお気持ち大変嬉しかったです」
その事を知っているのは彼女だけでなく、控えていた使用人全員がお辞儀する。
領地に到着した時に比べ、皆の表情が変わったように見えた。
私は来た時と同じようにマキシーと一緒に馬車に乗り込む。
数日かけて王都に戻る。
「はぁぁぁぁあああああ」
王都の屋敷に到着すると自然と体を伸ばしていた。
公爵令嬢としてあるまじき行動だが、長時間の移動をするとこうなってしまう。
私よりも使用人の方が疲れているはずなのに、マキシーは疲れている姿を一切見せない。
「私より貴族ね」
マキシーの働きに感心している。
私と言えば領地でのこともあり、学園が始まるまで大人しくしているつもり。
「先生に手紙を書いたら迷惑かな? 」
助けてもらったのに、お礼も言わずに王都に戻ってきてしまった。
「お礼の手紙は問題ありませんよ」
「なら、書く」
キングズリーに手紙を書くと決めたものの、なんて書いていいのか分からず机に向かって時間が経った。
「お嬢様、休憩なさいますか? 」
「……そうする」
手紙が書けないでいる私に見兼ねたマキシーが紅茶を差し出す。
「お嬢様、二日後には学園が始まります。手紙が難しいようなら直接お礼を伝えてはいかがですか? 」
「直接……それの方が難しいっ」
マキシーの言葉で手紙へのやる気が出て、急いで書き終えキングズリーに届けた。
手紙でお礼を伝え安心していると、次第に不安が押し寄せる。
「あれ? 手紙にあんなこと書く必要なかったのか? 」
手紙にはお礼と……
『勘違いさせてしまったのは私の至らなさですが、あの人とは何の関係もありません。誤解しないでください』
等と、言い訳のような手紙を書いてしまったような気がする。
「あの言葉いらなかったのかな……ねぇ、先生からの返事はない?」
「届いておりません」
学園が開始となれば生徒よりも教師の方が忙しい。
そんな時期に重要でもない手紙の返事を頂こうなんて……
「学園で直接お礼すればいいよね。手紙は事前告知のようなもの……」
手紙の返事がないまま長期休暇が終わり、学園が始まる。