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平等とは

 領地での最終目的……

 バイト代で皆にお礼をする。

 対象は、父・マキシー・エイジャックス、お金に余裕があれば定食屋に来てくれた騎士の皆に使用人。

 

「よしっ買い物に行くぞっ」


「はい」


 当然マキシーと護衛のエイジャックス付き。

 本人に気付かれないように作戦を実行する。

 

「何がいいんだろう?」


 領地を観光しながら皆への贈り物を考える。

 私が働いた給料でどのくらいの物が帰るんだろう……

 

「万年筆……なんて買えない」


 ハンカチも多分皆の分になれば足りない。

 子供っぽいかもしれないけど、お菓子くらいしか思い浮かばない。

 三人には特別なものにして、他の皆にはお菓子かな……

 まずは父に贈る物だが……


「高い物は予算が足りないしな……だからって安い物は贈れない……」


 色んな店を渡り歩き、候補すら思い浮かばずにいるとふと露店が目につく。

 ある一つの露店に綺麗な髪飾りを見つけた。

 

「これください」


 マキシーに似合いそうだと思い勢いで購入してしまった。


「喜んでくれるかな? ん? これもください」


 エイジャックスにはブローチを選んだ。

 騎士の制服姿では安物だが、平民の恰好をしている今なら似合いそうなブローチ。

 

「これ……二つください」

 

 父にはブレスレットを購入した。

 三人の贈り物が決定すると安堵する。

 あとは騎士と使用人へのお菓子を買いに行く。

 ケーキ屋で全員分ケーキを購入する為に、休憩しつつ試食してみた。


「んっ美味しい。これ沢山買って帰ろうかな」


「いくつ程購入いたしますか? 」


「使用人と騎士の皆の分お願い」


「まぁ、よろしいんですか? 」


「うん、もうすぐ王都に戻るし皆にお礼に買いたいの」


「皆、喜ぶと思います。では、注文してきます」


「お願い」

 

 ケーキを大量購入した為、のんびり美味しいケーキを頂きながら待っていた。


「では、俺は購入品を先に馬車に置いておきますね」


「ありがとう」


「俺が戻るまで、店を出ないでくださいね」


 エイジャックスに荷物を渡す。

 マキシーと一緒にケーキを待つ。


「お待たせいたしました」


 エイジャックスが戻るよりも先にケーキの準備ができたので、お店を出て馬車に向かうことにした。

 私とマキシーの二人だが、領地で危険な目に遭ったことがなかったので油断があった。

 目の前から集団がやって来たので避ける事に気を取られマキシーとはぐれてしまう。


「お嬢様っ」


「マキシー……キャッ」

 

 突然腕を掴まれマキシーから引き離される。

 叫ぼうとした瞬間相手の顔を確認した。


「リッリアムさん? 」


「どうして俺の誘いを断る」


 怒っているのか腕を強く掴まれている。


「痛いっ」


「テオバルドは良くて、なんで俺はダメなんだ? あいつとは付き合ってないって言ったよな? 」

 

 テオバルド? 

 何の話?

 それより腕が痛い。


「ちょっ……離して……」


「あいつのことが好きなのかっ。なんで俺じゃないんだっ」

 

「落ち着いてっ」


 こういう時『落ち着いて』という言葉は逆効果と聞いたことがあるが、咄嗟の時にはそんな事忘れてしまう。

 

「何度も誘ってんだろ、俺の方が愛してっ……ぐぁてぇぇぇぇ離せぇぇえええ」


 突然腕の痛みが解放され、リアムが離れたので距離を取った。


「何しているっ」


「離せっ、あんたもこいつ狙いかよっ? こいつは俺のだっ」


 男性に押さえつけられながらもリアムは叫び続ける。


「ふざけるなっ、自分の気持ちを押し付けるだけが愛じゃない。嫌がっているのが分からないようなら、お前は相手を見ていないっ」


 私を助けてくれた人は、後ろ姿と声でキングズリーだとわかる。


「お嬢様っ」


 はぐれたマキシーとエイジャックスが駆け寄る。


「申し訳ありません」


 エイジャックスは離れた事を謝罪する。

 彼だけが悪い訳ではない。

 荷物を運んでもらってしまったし、領地は安全だと油断してしまったのは私。


「お嬢様、大丈夫ですか? お怪我は? 」


 マキシーに抱き留められながら背中をさすられる。

 私は自身の行動を反省した。

 彼とテオバルドに言い寄られてるのは、互いに認知していただろう。

 普段の行動範囲で出掛ければ、相手の耳にも入る。

 片方だけの誘いに乗り、片方を蔑ろにしていた……

 配慮がなかったばかりに私は彼を傷つけた。

 二人の誘いに乗るか、二人とも断れば……

 いや、私がもっとはっきりお断りしていればこんなことにはならなかった……


「ここは私が処理しますので、行ってください」


 キングズリーに指示されるも、リアムと二人きりにするのは危険すぎる。

 今のリアムは冷静ではない。

 逆上したリアムが彼に何かしたら、私は……


「でも、先生一人じゃ……」


「貴方は早くここから離れなさい、早く」


 初めて見るキングズリーの表情や言葉で、これ以上迷惑かけるわけにはいかないと感じ私はその場を去った。

 エイジャックスは馬車に戻る私達の護衛中、非番の騎士に遭遇し先程の事を話し騎士を手配するよう頼む。

 その間、私はキングズリーが心配でならなかった。 

 もし、何かあったら……

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