シャルロッテ・アイゼンハワーについて
「私ってどんな人だったの?」
使用人にシャルロッテ・アイゼンハワーという人物について尋ねる。
「お嬢様は、アイゼンハワー公爵の一人娘。奥様は既に他界しており、再婚などしておりません。旦那様は奥様とお嬢様をこよなく愛していらっしゃいます。現在はテレンシオール学園の三年に在籍しており、お嬢様の婚約者であるジャイルズ・アンダーソン伯爵令息も同学年におります」
「婚約者……」
十八歳で婚約。
過去の私の人生で、婚約者のいる学生はいなかった。
異世界転生では幼い頃に『婚約』するという事は定番なので私もすぐに納得する。
私は公爵令嬢という事なので、貴族階級でいうと最上位に位置する。
そんな令嬢に婚約者がいる事には納得できるのだが……
「私の婚約者って……」
定番で言うなら、相手は自身と同じ階級または王子との婚約だと思うのだが……
伯爵令息……
意外。
鏡で見た私はとても綺麗で強気で、上昇志向の強いタイプに見えた。
てっきり私の婚約者は王子で、愛らしい下位貴族または平民と仲睦まじくしている姿に嫉妬を燃やしている女性だと思い込んでいた。
まさかの伯爵令息。
「アンダーソン伯爵令息の事を覚えていらっしゃるのですか? 」
「いやっ覚えては無いんだけど……伯爵令息……」
私が公爵令嬢で相手が伯爵令息では盛り上がりに欠けるというか……
物語の知識しかない私の思い込みだが、釣り合いが取れている……とは……言えないような……
一人娘という事は彼は婿入りする予定なのか?
では、公爵家への婿入りだから伯爵令息でも問題ないと判断されたのかしら?
娘を嫁がせるわけではないから、婿入りだと相手の爵位はそれほど気にしないものかもしれない。
それとも、同学年に爵位の釣り合いが取れる人物がいなかったのだろうか?
だけど、婿入りであれば前後三歳くらいの年の差なら問題ないようにも……
「はい。旦那様はお嬢様の婚約者を別の方を希望されていたのですが、お嬢様の強い想いで伯爵令息との婚約が決定されました」
「私の強い希望……」
強い希望が、王子様ではなく伯爵令息。
しかも別の相手を願っていたにも拘らず父は娘の願いを叶えた……
娘溺愛の父は政略的な婚姻は望まなかった。
そういえば、先程使用人は『旦那様は奥様をこよなく愛していらっしゃいます』と言っていた。
自身が恋愛結婚だったので、娘に無理強いさせることも利用することもしない人なのかもしれない。
婚約は、幼いながらにも恋愛で繋がっていたようだ。
私の転生先は、お金持ちで父親も良い人。
婚約者とも政略的ではない関係。
「なんて恵まれているの……私」