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悪い事したい・その八……一度はしたかった、あの格好

「お嬢様……」


「どう見ても顔色も悪いし、目も酷いよね? 」


「……はい」


 朝、マキシーが訪れると私の表情は悲惨と言えた。

 ほんのり隈が現れ、目の充血も目立つ。

 私を目撃した人間は私が徹夜したとすぐに察するだろう。


「……マキシー、お願いがあるの」


「なんでしょう」


 私は私の本当の姿が目立たないように、あるお願いをマキシーに頼んだ。


「……よろしいんですか? 」


「お願い」


「畏まりました」


 急な私の発注にマキシーは一人では対応できないと判断し、数名の使用人を呼び仕事に掛かる。

 私が登校する時間に間に合うよう彼女達は迅速に仕事を熟す。


「……完成です」


「……流石、ありがとう」


 完璧な彼女達の仕事に満足し、私はいつも通りの時間に学園に向かう。

 馬車から降りると多くの生徒の目を惹く。

 注目されるのはいつもの事。

 誰も私に声を掛けることは無い。

 いつもの教室に向かう。

 道中私の行く道を塞ぐことが無いように避けるのも、いつもの事。

 

「ふぅ……」


 この世界の初めての試験。

 準備はしてきたとはいえ、緊張する。

 試験監督が現れると必ずと言っていいほど私と目が合う。

 そして皆、驚いたように見えたのは気のせいだ。

 解答用紙に問題用紙も配られ開始の合図を待つ。


「では、試験始め」


 教師の合図で一斉に問題用紙が捲られる。

 名前を書き、与えられてい試験番号を記入。

 そして問題を解いていく……


「そこまで」


 教師が制止するまで問題と向き合った。

 何とか全ての回答を埋めることが出来た。

 だが最後の問題に辿り着き見返していたが、時間は足りず半分も確認できなかった。

 一つの教科が終わっても、残り二教科ある。

 些細な休憩時間も次の試験にあてた。

 

「今日の試験は終了。生徒は居残りすることなく速やかに下校するように」


 生徒は皆速やかに下校する。

 私も彼らの流れに乗る。


「アイゼンハワー」


「はい」

 

 呼び止めたのはキングズリー。


「その恰好はなんだ? 」


「おしゃれです」


 私の今日の恰好はあの有名な姿。

 金髪縦ロールに厚化粧。

 誰が見ても『ザ・悪役令嬢』な恰好。

 

「こんな姿したことないだろう……ん? 目が充血しているのか? まさか、徹夜したのか? 」


 バレた……


「ま、ま、ま、ま、まさか。この私が試験ごときで徹夜だなんて……そんな事あるはずないじゃないですか。勉強はしていませんよ」


 勉強した? の返事と言えばこのセリフ。

 

「……全く。無理はするなと言ったろ? 」


「だから私は……」


「分かった、早く帰って寝なさい」


 目の充血や隈を隠す為にした格好もキングズリーには見透かされてしまった。

 

「こんな姿じゃない時が良かった……」


 目の充血を確認する際、私の頬に触れる彼の手にドキッとした。

 屋敷に到着するわずかな時間、キングズリーの手の感触を思い出しながら眠ってしまった。


 本日の一言日記。

 徹夜の姿を隠すあの姿は、見つけてほしくない人にだけは真実がバレてしまう……

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