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審査

 芸術祭当日。

 学園の至るところに作品が展示されている。

 保護者に芸術に精通している一般客、教師に専門家達が審査に回る。

 芸術祭で優秀作品に選ばれると、王族に謁見できお言葉を頂ける。

 貴族にとって、王族に称賛されることは名誉なこと。

 貴族達に名が知れ渡り、芸術家の道も拓け作品が美術館に展示される。


「お知らせいたします。上演の準備が整いました。審査官の方は会場までお越しください」


 時間と場所が決まっているのは、演劇と音楽の審査。

 本日は演劇を何組か上演する。

 生徒間で噂が飛び交っていた。

 有力候補と言われていたグループが急遽演目を変更したらしい。

 アクシデントがあり順番を変更してくれないかと他グループに交渉していたが、『公平に決めた順番の変更は認められない』と断られ揉めていたらしい。

 なんでも、主役の二人が学園を休学中だとか。


「へぇ……そんな事あるんだね」


 この時期に休学だなんて……

 こういう事があるからグループって面倒なのよね。

 ただの表彰ならそこまで目くじらを立てることはないけど、今回のは王族と謁見できさらに貴族としての名声にも影響する。

 誰か一人が失敗してグループの皆にも影響を及ぼすなんて……

 考えただけ憂鬱。


「私とは関係ないけどね」


 演劇の方はどのグループも問題なく? 終え、翌日には音楽の審査が行われた。

 ピアノにヴァイオリン、チェロにハープそして声楽。

 たった一人で舞台に立つという緊張感から途中演奏が止まってしまう人もいた。

 彼らの緊張が伝わり、見ているだけで正直疲れてしまう。


「今日が最終日……」


 多くの者は鑑賞の順番を決めている。

 二日目には演劇。

 三日目には音楽の発表が行われる。

 その時間帯は動かせないので、一日目に多くの者が展示作品の鑑賞をする。

 三日間が終わると審査に入る。

 優秀作品の決め方だが、保護者や一般客の投票と専門家の推薦と教師の評価にて決定する。

 毎年有力候補の作品は意見が割れることは無いが、今年はかなり白熱した討論になったと聞く。

 ある一つの作品に対して、熱狂的なファンと断固として認めない否定派で話し合いが纏まらなかったそう。


 学年集会。

 芸術祭で最優秀賞に選ばれた者の発表が行われる。


「今年の優秀作品は……声楽のパメラ・ビアット」


 今年は音楽の分野で選ばれ、王族の前でも披露することが決定。

 

「そして、今回は特別賞がございます。強烈なインパクトを残し多くの方の支持を得た作品……シャルロッテ・アイゼンハワー」


 聞いたことのある名前だと、他人事のように聞き流した。


「何をしている、行きなさい」

 

 傍にいたキングズリーに壇上に上がるように促される。


「あっ私か……」


 壇上に上がり、学園長に特別賞の勲章を制服に付けられる。

 学園での功績を勲章として与えられ、卒業までに数多く頂いた者は卒業式に表彰される。

 卒業後には大人として扱われる貴族にとっては、一つでも多くの勲章を手に入れ社交界で箔を付けたいのだ。

 今の私の制服には何もついていない。

 勲章を貰えることは滅多にない為、芸術祭に力を入れる者は多い。

 だが、まさか私のあの作品が特別賞に選出されるとは少しも思わなかった。

 だって……

 キャンバスが倒れやけになって絵具を飛ばしただけなのに……

 何故評価されたのか私が一番疑問を抱く。


「アイゼンハワー、良かったな」


「……はい。信じられませんが……」


「ふっ。いろんなところでちゃんと評価されているってことだ」


 キングズリーの言葉は全く納得できない。

 私は評価を受けるような事はしていない。

 どこを評価されたのか……

 全ては勘違いなのではないか? と言いたくなる。

 だって……あんな絵ですよ?

 キャンパスを倒して絵の具がペチャッとなった……通称ペチョ絵。

 何故それが選ばれた?

 一周回ってあれが芸術家の目に留まった?

 分からない……

 分からないが、真実を言う勇気はない。

 

「芸術って素人には分からない……」

 

 努力はいずれ実を結ぶ……ということなのだろうか?

 それとも、棚から牡丹餅?

 

「……うん、私は牡丹餅だわ」


 牡丹餅作戦賞を取る……


「え? 賞を取った作品は王族にも拝見されるんだよね? あれを王族に見せるの? 本気? 」


 賞を取って不安なんですけど……


「声楽だけで良くない?」


 これは新手の嫌がらせなのか?

 辞退……出来ないだろうか……

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