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01 どうやら転生することになりました

 ――あなたは死んでしまったのです――


「はっ?」


 突如そんな言葉を言われた。いや、正確には頭の中で言われた。が正しいのだろう。なぜ?どうして?いったいここはどこ?様々な思考を巡らせたが分からない...


 ――辺り一面真っ白な白銀の世界――


 そしてそこに鎮座する高価そうな背の高い椅子と一人。

 椅子に座っている人はとても美しい…

 白く美しく凛々しいその姿は、言うなれば神様とでも表現するべきだろう。いや、それ以外に表現のしようがない。白を基調としたローマ時代の貴族が着ていそうなゆったりした衣服を纏っている。そして所々に目立ち過ぎず且つ品を感じさせる刺繍が施されているのを見るにそれもかなり高貴な方のようだ。そしてその方は立ち上がり歩み寄ってきて...


「本当に、申し訳ありません!」


 開口一番神様はそう言って頭を下げた。


「えーっと...とりあえず状況説明してもらってもよろしいでしょうか...?」


「はい...まずはこちらの手違いで死亡させてしまい、申し訳ございません...」


 状況が飲み込めない。死亡させてしまった?私は死んだのか?分からない...だけどこの状況が十分納得させる。


「私は死んだのですか?」


 私はそう聞いた。そう聞くしかなかった。


「手違いとはいえ死亡させてしまったのは事実です...」

「本当に申し訳ありません...」


 そうか、私は死んだのか...


 ...


 私、望月詩音は...



 死にました!!!



 と、心の中で叫んでみたものの...恐らく...


「いえ、過ぎたことはもうどうしようもないですよ。たぶん戻してくれって言っても戻れないのでしょう?」


「はい、あなたのおっしゃる通り既に元の世界では死亡判定になっているため戻せません。」


 やっぱり。そうなんだ...


「ですが、今回はこちらの失態ですのであなたさえよければいくつかの能力を持って他の世界で暮らすということも可能です。」


 他の世界で暮らす...そしていま私は死んでいるから...つまりそれって異世界転生...?ってやつなの?夢にまで見たあの異世界ライフをこの目でこの耳でこの体で体験できるというのか!ワクワクが止まらないッ!!!


「異世界転生...いいわね!」


 反射的にそう答えてしまった。


「あ...あっ...」


 なんか神様の様子がおかしい...


「あ?」


「ありがどうございまずううううぅぅぅ!!!!!」


 めっちゃ泣いて鼻水垂らしてお礼を言われた。

 そこまで大事なことだったのだろうか...いや、人一人死んでるんだから大事なことか。特に神様のミスによって私死んだらしいし。


「ええっ!そんなにお礼を言われることなんですか!」


「はい゛、始末書どごろが最悪私の首が飛ぶどころでした...」


 どうやら神様世界にもいろいろあるらしい...あえて聞かないでおこう...

 そしてふと思い出した。


「そういえばいくつか能力を貰えるとかどうとかって言ってませんでした?」


 そう、能力を貰える。それってきっとチートよね。チートよね!


「どんなチート貰えるのかしら!!!」


「はは、そんなに楽しみですか。ふふッ」


 うっかり口に出して笑われてしまった...恥ずかしいッ!!!


「何か希望があれば叶えられる範囲で用意しますよ」


「なんでも好きな能力を貰えるということで良いのでしょうか?」


「そうですね。あまりにも無茶なものは世界の安定上無理ですが」


 つまり、ほぼなんでもいいということだ。それはそれで悩んでしまう...どうしたもの...ていうか...


「転生先ってどんな世界なんですか?」


 そうだ、向こうの世界がどんな世界なのか分からなければチートも決められない。最悪全く使えないチートになってしまう可能性もある。


「そうですね、地球で言う中世のような世界で貴族が領地を王家や皇族が国家に所属する貴族や一部領地を統治しています。また、冒険者と呼ばれる人々もいますね。各国家・都市に支部があり、日々周辺の探索やそこに住む人々を守っています」

「とまあちょっと難しく言いましたが簡単に言うとよくあるアニメのような世界です」


 神様は地球のアニメを見ていたのであった。


「えっ、アニメ見てるんですか!」


「ええ、たまに息抜きに見てますよ。特に異世界系はとても面白いですね」


「異世界は憧れますよね~」


 どうやら異世界ものが好きだったようだ。


「なるほど、喜んでいたのはそういうことですか。ふふッ」

「ご期待に添えられるかはわかりませんが、異世界がお好きなようでしたら少なくともそれほどガッカリはしないと思いますよ」


「むぅ...!」


 また笑われてしまった...恥ずかしい...ッ!


「そ、それよりも!魔法とかもあるんですか?」


「ええ、ありますよ」


 魔法は本当にあったんだ!

 某空飛ぶ城風に言ってみたけど、となると選択肢はかなり広がるから...


「少しだけ考える時間をいただけませんか?」


「構いませんよ。これからの人生に関わることですからね」


 10分後...


「決めました!」


「はい、お伺いします。どのような能力に決めたのでしょうか?」


 私が考えに考え抜いて決めたチート...ズバリ!


「物を考えた通りに操る能力です!」


 これこそ私が熟考した末に出した結論である!物を操れるというのは大変便利なチートだ。好きなように形を作れ、作った物を売ってお金を稼ぐことができ、非常時には攻撃防御自在にできるというオールマイティーになんでもできる能力だ!


「ほうほう、それはどのような能力でしょうか?」


「形や強度、密度を想像した通りに変えたりすることができる...というような感じですかね」


「そんなので良いのですか?その程度でしたらもう少しぐらいご希望聞きますよ」


「ええっ!?」


 え?マジすか?めちゃめちゃ有能なチートだと思うんですけど!!!

 いや、ここはもう少しチートを貰っておいた方がいいかもしれないな。


「で、ではお言葉に甘えて...そうですね...」


 そういえばそもそも言語って大丈夫なのか?アニメ作品だと全部日本語になってたからすっかり忘れてた...そりゃそうだ、日本人向けに作られてるんだから異世界語で話されても意味わかんないもん。


「異世界の言葉が分かるようにしてもらえますか?」


「ああ、言語体系でしたら同じですので日本語で通じますよ」


 マジかーーーーー!!!!!言語同じなの!?

 いやいや、それなら何のチート貰えばいいのか...

 あ、あの能力なら便利かもしれない...ダメ元で聞いてみるか!


「では、アイテムボックスをお願いできますか?」


 そう、異世界では定番のアイテムボックス!わざわざ物理で運ぶ必要が無く、セキュリティも万全な素晴らしい機能!


「アイテムボックス...聞いたことはあるのですが...どういったものでしょうか?」


 どうやら神様はアイテムボックスをよく知らないようだ。

 いったいどんなアニメを見ていたのだろうか...?


「ええと、アイテムボックスというのは異空間にアイテムを保存できるというものでして、アイテムボックス内で保存している間は劣化することなく、しかも本人にしかその空間にアクセスできないのでセキュリティも万全!しかも保存先は異空間なので荷運びの必要が無い!という能力なのです」


「ふむふむ、少々強い能力だと思われるのですが...」


 ダメかー!いや、これは旅をするのには必須なチート!なんとしてでもごり押さねば...!


「少しお考え下さい。」

「異世界の主要な交通手段は主に馬に頼ったものです。ですが私は乗馬経験も無ければ無一文なので荷馬車を借りるお金もない。そもそも御者経験も無いのですから人を雇うことすらできません」

「したがって荷物運搬は直接になるのですが、ハイテクな現代で生きてきた私にとって大荷物を抱えて長距離を歩くというのは難しく、さらに女である私はひ弱でスリや盗賊に襲われてしまえば大荷物のせいで満足に身動きが取れず殺されたりお金が貯まらず貧乏なまま永遠に街から移動できなくなるのがオチです」


「そ・こ・で!」


 少しだけ神様はビクッとした。


「先ほど私が申し上げた『アイテムボックス』の出番というわけです!」


 神様は少し考える...


「分かりました...その能力も追加しましょう」


 どうやらごり押s...げふんげふん大丈夫と判断したみたいだ!

 そして唐突に思い出したように神様は手を叩いて口を開いた。


「あ、そうだ。ついでにちょっと肉体の方も若返りもしておきましょうか」


「えっ?」


 まさかそんな提案を神様からされるとは思ってもいなかった。だがその提案はとても嬉しい!ぜひともやって欲しい!

 そうだよ、今の20代のままだと平均寿命の低いであろう異世界ではとてつもなく行き遅れ状態で転生してしまうことになってしまう!そうなると...考えたくもない...

 だから...!


「お、お願いします!」


「若返りは10才分ぐらいでよろしいでしょうか?」


「それぐらいでお願いします!」


 これで転生先では14になって成人手前ぐらいになっているはずだ。それなら良い人がいれば、の話だけれど数年程度空いても結婚は十分視野に入れられる...と思う。


「では持ち込む能力の確認を」

「転生先の世界へ持ち込む能力は、『物を考えた通りに操る能力』『アイテムボックス』、転生先と現世の言語は同じなので通訳は不要、また能力とは別で肉体の若返りも行う、ということで大丈夫でしょうか?」


 チートの数自体は2つと少ないが、個々のチートはとても強力だから問題ないだろう。他に必要なことあったかな...


「ええ、それで大丈夫です。あ、あともう一つお願いを聞いていただけますか?」


「はい?なんでしょうか?」


 そう、これを忘れていた...


「たぶん私は唐突に死んでしまったのでしょう...だから家族、友人に言伝をお願いできませんか?」


 唐突に死んだ私と未来永劫の別れなのだ...何も言えずに家族と友達とお別れなんてしてしまえば心の整理ができずずっと後悔することになると思う...だから...!


「そうですよね...私のミスでのお別れですからね...分かりました。どのような内容をお伝えすればよろしいでしょうか?」


「まず家族には...

...――

とお願いします。」


「...わかりました。誠心誠意そのお言葉お伝えさせていただきます。」


 これで悔いはない...と思う。必要なチートを貰って、家族に、友達に言葉を伝えて...



 ――そして異世界に旅立つ――



「準備はよろしいでしょうか。」


「...はい。」


「それでは、次の世界では幸有らんことを...」


「...」

「..」

「.」


 視界が白く眩しく輝きはじめ、徐々にそれは強くなってゆく。


 神様の姿はもう見えない。


 そして...


 ――意識が薄れてゆく――




 少し時を飛ばして


「なんで急に死んでしまったの...」


「...」

「...」


 ここは現代。望月家の『詩音』の葬式である。

 突然の詩音の死に家族皆悲しみに暮れていた...


 葬儀が終わり詩音の遺骨と共に帰宅した望月一家は、疲れからか皆早々に寝に就いた。


 その晩...


 ――私、死んじゃった!突然のことだけど、これでお別れなんだよね。だから今までのお礼と最後の言葉を伝えようと思うの。私を生んで育ててくれてありがとう。みんなが笑顔で笑っていていつも楽しい生活だったよ!あ、でもお兄はもう少し勉強頑張りなさいっ!唐突に死んでしまったけど私は次の世界でも楽しく生きるから安心してね。じゃあね...――


 ...!

 朝日が眩しい。


 夢を見ていた気がする...


 軽く身支度を整えてダイニングへ向かう。

 父も母もすでに食卓に着いていた。


「あー...」

「なんか夢を見た気がするんだよな...」


 ぽつりとそう呟いた。


「ありがとうって言ってたわね...あの子...」


「楽しい生活だったとも言ってたな...」


「俺には勉強頑張れってさ...」


「「「はははっ」」」


 家族みんな笑顔になった。


「次の世界でも楽しく生きる...か...」


 あいつらしいな...


 もう永遠に会えないけど、きっとどこか別の地でも楽しく生きてるんだろうなー



 一方、別の場所では...


「なんでよー!!!」


 その子は号泣していた。


「あまりにも早過ぎるわよ...」


 突然の詩音の死に悲しみ、号泣しているこの人達は詩音の友達であった。


 葬式が終わり、各々自分の家に帰った。

 式でお別れを告げて割り切ったと思ったのだが、やはり親友であった詩音が唐突に亡くなったという事実はそう簡単には受け止め切れていなかった...

 部屋に戻るなりまた泣き始める。


「ううっ...なんで...なんで...」


 泣いて泣いて泣き疲れていつの間にか寝てしまっていた...

 そして夢を見た...


 ――突然死んじゃってごめんね。たぶんみんな私が死んだこと悲しんでくれてるよね。だっていつもおかしなこととか面白いことで笑い合ってたもんね!ほかにもいっぱい遊んではしゃいで...とっても楽しかったよ。でもやっぱりあまり悲しい顔はしてほしくないな...いつもみたいに笑顔でいてね。次の世界でもいつものように楽しく過ごすから、そっちも楽しく暮らすんだぞっ!それじゃあね...――


 目が覚めた。

 服はスーツのままだった。

 どうやら泣いてそのまま寝てしまったらしい。そしておぼろげにさっきの言葉を思い出す...

 あれは夢だったのだろうか...?でも悲しい顔をしてほしくないってのはあいつらしいな。


 後日


 たまたま休日が合った友達とカフェでお茶をすることになった。


「ねえ、詩音のことなんだけどさ...」


 少し口ごもりながらこの前見た夢の話を切り出した。


「葬式の後の夜に詩音の言葉を聞いたんだよね...」


「それ...私も聞いた...」


 なんと友達もあの言葉を聞いていたのだ...!


「あれ、詩音の言葉で間違いないよね?」


「うん、そうだと思う...」


 やっぱりあれは詩音の言葉だった。


「詩音、別の世界でも楽しく生きるって...」


「私たちも楽しく生きろって言われたしね」


「詩音らしいわね」


「あははっ」

「ふふふっ」


 悲しい気持ちはある。でもやっぱりあいつのことだ。笑顔じゃないときっと詩音も悲しいだろう。

 うちらは大丈夫!次の世界とやらでも詩音、楽しく生きてよね!

『モノづくりチートで異世界スロー?ライフ!』を読んでいただきありがとうございます。

この小説は書き溜めしておらず、作者は文章を書くのがとても苦手なので更新はとてもゆっくりになると思います。

極力一か月に1話以上更新できるようには頑張りますがなかなか投稿されない時は「あ~忙しいのかな?頑張っているんだろうな~」って思ってもらえると幸いです。

この作品がどれほど読まれるかはあまり自信はありませんが頑張りますので応援よろしくお願いします!

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