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第9話

「ふぁぁ…今日も良く寝た。テスト期間がまだ先だからゆっくりノートまとめられるな。高校の時と違い、話の脱線や順序よく板書できないからあとで流れを見てからじゃないと分からん。」


 伸びをしながら呟くと後ろからくすくすと笑い声が聞こえた。


「ふふ、あいかわらずだね青木君は。今日もほとんど寝てたでしょ?でも…たしかに板書が飛び飛びになって分かりにくくなっちゃうよね…見返すときわからないや。」


「飯塚さんも今日はよく寝てたね、涎垂らしながら。寝言も凄かったよ。」


 俺がそう言うと慌てて口元を吹き出した。


「えぇぇ!?ねぇ…跡残ってるかな?」


「講義中に後ろ向いてないんだから涎垂らしていたか分からないな。寝言はすっごく聞こえたけど。どんな冒険してたの?」


「なっ!?もう!ほんとに慌てたんだからね!って…そんなに寝言聞こえた…?確かに見ていたのは敵を倒したりだけど…」


「きちんと睡眠とらないと勉強に支障でるから気を付けたほうが良いよ。ゲームしてると時間なんてすぐ過ぎるんだから。それじゃねー。」


 そう言って俺は教室から出た。この後はどうしようか…食材は昨日買い足したから1週間は大丈夫として、早めにノートのまとめと家事を終わらせるか。一人暮らしだから洗濯は1週間ため込んで休日にやるから今日はしなくて大丈夫、食器類も洗い終わっているから掃除かな。気持ちの良い睡眠は環境からだからね、大事。

 窓を開けて空気の入れ替えをしながら上からほこりを落とし、掃除機をかけてからフローリングを磨いた。最後に消臭剤を撒いてっと。


 ノートのまとめは動画を倍速で見直してから始める。慣れてきたからいいけど、最初は倍速にしても何を話しているのか分からなかったんだよな…一応、ノートもある程度空白箇所を残し、教科書に載っていないが教授の話した事を書き込んでおく。たまにテストでこういう一言のが出て来るんだ…興味のある事はあとから図書室に行って調べるために付箋を貼っておく。


 夕食は親子丼。卵と鶏肉の相性は抜群。鳥は安めなのが家計に優しい、卵は痛むの速いから注意が必要だ。


 やる事すませたからログインするか。接続っと




 意識が浮上し、俺は寝ていたベッドから起き上がり背伸びをした。


「ん~~~っはぁ、ずっと同じ体勢で寝てたと思うんだけど、体の調子は大丈夫そうだな。どれだけリアルに見えてもそこはゲームなんだな。といっても肉体がこちらに残るってことはこれもリアルなんだが…器の中に俺という魂が入るってことか?」


 死んだ場合は神により新しい肉体が作られ、その中に魂が入る。持ち物を引き継げないのは新しい肉体だから、熟練度が下がるだけで済むのは魂に刻まれるから?もし捕まった状態で生かされた場合は新しい肉体に移れないってことか?盗賊がいるか分からんが捕まった場合はやばいな。女性だと苗床として生かされ続けたらトラウマものだぞ…


 その場合、死に戻りする事が出来るのか設定を見てみたが、オブジェクトや動けない状態いわゆるスタックに死に戻りする機能があった。自動で発動するみたいだからトラウマになる前に戻されるってことか。そもそも脱げる仕様にしていなければ問題ないから、脱げる仕様で捕まった場合に犯される前に戻される…と。喜んでやられた場合はどうするんだ…薬とかさ。まぁ…大人なんだから自己責任だな、大丈夫な設定もあるんだし。一応問い合わせに送っとくか。


 部屋からでて併設されている食堂で朝食を貰い、ギルドへ向かう。朝一じゃないからそこまで混んでいないと思うんだけど…お、大丈夫そうだ。


 ペルルとベリルには人が並んでいるけどアーテルには並んでないな…どうしてだ?宿屋を教えてくれたお礼も言いたいからちょうどいいや。


「こんにちはアーテルさん、こないだは宿屋を教えてくれてありがとう。とても過ごしやすかったよ。」


 俺が声を掛けると、周りの人はマジか!?みたいな顔をしていた。そんなに声を掛けるのはおかしいのか?それとも教えてくれた内容?


「別にいいよ、相談された事に答えただけ。あなた、物好きだね。周りを見たら避けられているの分かるのに。」


「俺としてはなんで避けるのかが分からないな。昨日の応対を見てたら丁寧なの分かるしこちらの事情に考慮してくれたから。」


「…私は見ての通り死神の眷属種、探索に出かける前に関わるのは縁起が悪い。」


 ん-…死神ってタロットカードでも死だけを司っているわけではないよな。逆位置だと新しい始まりや転換、再出発だっけ。


「俺の国だと死神は最高神に仕える農夫とも言われて死と再生の神って感じだから気にならないな。今日は採取の予定だから農夫だったら余計に教わりたいね。」


 俺が言ったことを反芻しているのきょとんとした表情をしていた。それから理解が追いついてきたのか恥ずかしがって俯いてしまった。俺、変な事言ってないよな…?周りの人らはもう俺達の事が眼中にないのか見てる様子はないのでアーテルさんの様子を指摘してこない。


 お、顔を上げた。もう大丈夫なのか?


「ありがと…そうなんだ。外国では死の象徴ってわけじゃないんだ。眷属の人達にも教えて平気?」


 お礼を言った時にすごく可愛い笑顔だったがすぐに表情が消えた。こうやってみると普通の女の子だよなぁ。表情の変化が少ないだけのさ。

 というか言霊としてマイナスの称号が付けられそうでそっちのが問題だろうね。イメージも大事だろうが、事実と違うことで苦労させられてもな。


「向こうでも占いや宗教が好きなら知っている内容だから問題ないよ。で、相談なんだけど薬草類を採取しようと思っているんだが、根っこから抜いたほうが良いのか新芽を取ったほうが良いのか、茎を切ったほうが良いのか教えて欲しいんだ。群生地が街から近いようだけど取りつくしても平気なのかとか…道具とかも詳しくなくてね。」


「常設依頼の?薬草は根から綺麗に抜いたほうが品質が良いかな。植物によって採取法が変わるから注意が必要。群生地で普通に採取してもいいけど、種子が出来ているだろうから元の場所に埋めて次も採取出来るようにして。ただ、採取に時間をかけていると魔物が匂いに釣られてくるから引き際注意。

 道具だと手袋、スコップ、ハサミがを使って正しく採取すると品質が保証される。植物によっては素手だと危険なものも多いし。」


「なるほど…次も近くで採取出来るようにするのか。道具も言われてみればそうだな…採取法は事典かなにかで調べるか…今回は薬草だけにしとくよ。束にするための紐は道具屋に売っているのか?」


「紐は材質にもよるけど値段が張るから藁で結ぶほうが良いよ、ギルドで購入できるし。あと…群生地いくなら近くにメリッサというハーブもあるからついでに取るといいよ、これも常設依頼。採取箇所は花で3片1セット。花の根元から切ってね。図鑑は…書店にも売っているけど高いかな。ギルドの資料室にあるけど許可が必要なの。」


 ほぉ…信用もしくはギルドランクが上がった場合に解放される要素か。


「了解、使えるようになったら教えてくれると助かる。とりあえず藁を買わせてくれ。採取道具は道具屋にでも行って見つけてくるよ。」


 藁を購入し会話を切り上げて離れようとした際にアーテルさんに裾を摘ままれていた。


「…これ、受け取って欲しい。そうしたら資料室も使えるわ。」


 そう言われて差し出されたのはなんとフレカであった。え…いいの?俺がオドオドしているとアーテルさんが少し照れながら答えてくれた。


「あなたの言葉で救われたから…やりとりは長くないけど、為人はちゃんとみたから。だから受け取って欲しいの。」


 カードを差し出した手が震えている…軽々しく渡すものじゃないもんな…信頼、信用の証ともいえるし。なんかそう考えると告白に似た感じだな…


「えっと…いいの?呼び出しは用いないと思うけど、渡すってことはそれなりに負担を負うことになると思うけど…」


「いいの。あなたに悩みがあった場合に力添えできたら嬉しいし、あなたなら悪用しないと思っているから。」


 そんなに信用されてるんだ…もちろん悪用なんてしないけど…こう、女の子の連絡先を教えてもらうのって気恥ずかしい…俺は彼女からフレカを受け取った。


「ナオヤだよ。それじゃ時間があるときに資料室へ行かせてもらう、ありがとう信用してくれて。」


「うん、依頼頑張ってねナオヤ。」


 アーテルさんが手を振り見送ってくれた。俺がギルドから出た後に何やら叫び声が聞こえたが俺には関係ないな、うん。

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