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第8話

 あの後、宿で寝ることによってログアウト処理を行い現実に戻って来た。ゲーム内で結構寝たからか、全然眠くない。もしや結構現実に影響を与えるのか?そうなると確かに18歳以下には影響力がやばいな…探索といっても採取ではなかったらモンスターを討伐という殺害でもあるし、肉を切る感触とか覚えてしまう…心がある程度育ってないと問題が起きるだろう。


 こうやって考察してみたが、個人ではどうしようもないし運営側もCERO:Z指定して、規約や同意書にも責任を負いませんってなってるから完全に自己責任になる。個人的にはゲーム内で寝て、そのまま学校に向かっても大丈夫ってのは嬉しい誤算だ。まぁ…寝すぎないように注意が必要だし、ゲームにログインしたままだと滞在時間で宿代が膨れ上がるからログアウトする方が安心か。…お金に余裕が出来たらそういう生活もありだよな。


 今日の講義は2限からだからもう少しゆっくりしていっても平気だが、1限では使われない教室だから早めにいっても問題ないだろう。


 教室に着いたが、講義まで30分ほど時間があるようだ。俺が自分の席について寝ようとしたところで後ろから声がかかった。


「おはよう青木君。」


「あ、飯塚さんおはよう。目元にすっごい隈出来ているけど?」


 俺が指摘すると慌てだした。


「え?メイクで隠せたと思ったのに!?そんなに分かりやすい…?」


「この距離だからかもしれないけど、うん。すれ違う人には分かるんじゃないかな?」


「えぇぇぇ…恥ずかしい…」


「昨日は学校終わってからずっとゲームしていたの?そういうの廃ゲーマーって言うんだっけ?」


「連続ログイン時間目一杯かな…ゲームはね、スタートダッシュが大事なんだよ!」


 最初は反省したような顔だったが、なんか開き直ったのか力強く宣言していた。


「青木君は何かスキル覚えられた?私は【剣術】と【投擲】と【蹴撃しゅうげき】だよ!」


 見事に戦闘系なんだな…


「昨日は試しにログインしただけだからギルドに寄って少ししてから落ちたな。」


 そう答えると小さく「なんだぁ…」と呟いていた。ん-…情報共有でもしたかったのか?


「まぁギルドがあれだけ混んでいると疲れちゃうから仕方ないか。でも、完全に皆に置いて行かれてると思うからPT組むの大変だと思うよ。進行度が同じ人や活動時間で組むのが一般的だし。」


「そうなのか。まぁ俺の目的はのんびりすることだからPT組むのは難しいだろうから気にしないさ。」


「青木君ってほんと変わっているね。人族で始めた人達は掲示板で情報共有しているんだよ。スキルの覚え方とか効果とか一覧になってきてるんだ。結構攻略に乗り気みたいで楽しいよ。私のスキルもそれを見て覚えたんだ。」


 へぇ…でも説明には生活や生き方で各自のライフスタイルに合ったものってなってたよな?自分に合わないものを取ったとしてそれは本当に普通に熟練度が溜まるのか?気持ちによって熟練度の上昇率も変わるんじゃなかろうか?人の情報から覚えたスキルは劣化版にならないのだろうか?色々と考えられるよな…デメリットがないなら情報共有はいいが、知ってしまったら発生しない依頼とかでるんじゃないか?そもそもAIがあれだけ柔軟な対応をするってことは同じ依頼は発生しないだろう。


「飯塚さん、掲示板に頼りっきりはお勧めできないかも?攻略法を見てからゲームって楽しめるのかわからないし、情報を共有することのデメリットとかありそうだよ?」


 俺が指摘すると飯塚さんがちょっと睨んできた。


「青木君はあまりゲームに詳しくないでしょ?オンラインゲームは情報が命なの。攻略法もアイテムの取り逃し防止にもなるしプラスなんだよ。珍しいものとか他の人が欲しがっているものを高めに取引するのにも便利なんだよ。あと、スキルも何十人も同じ条件でやって差がなかったんだから大丈夫だよ。」


 それは全員同じ方向性を持った人達が検証したからじゃないかな…?心の中で思うだけで口には出さないけど。はぁ…個性が無くなるってこういう事なんだね。魔族は閉鎖的だから人それぞれ覚えるものが変わるだろうし種族的なものも覚える可能性はあるね。うん、俺は魔族でよかった。


「そうなんだ、ちゃんと検証しているなら大丈夫そうだね。ゲームのやりすぎで違反にならないよう注意するんだよ。」


「もちろん!違反してログイン出来なくなっちゃったら周りに置いて行かれちゃうからね。なんかすっごくPTに招待されちゃったりフレンドになりませんかって誘いがあって大変だったよー。なんとか男女3:3のPTに入る事ができて良かったかな。死に戻りもして全ロスとかしちゃったけど皆で笑いながら次がんばろーってなれてたし。」


 うん…なんかちやほやされるのが嬉しいって感じがする。前までの飯塚さんだったら迷惑って感情になってたんじゃないかな。それと3:3って結構やばい気もする。安全性だったら男2女4が良いはず。3:2で2ペアが付き合っていた場合、流れで余ったペアが付き合うとか?罠と考えることも出来るわけだ…ま、他人の恋愛に口だしたらこじれるだろうから言わないけどね。


「俺がPT入るなら同性だけのが気楽かなって思うな…まぁそれは個人の考えだけど。」


「私も安全性ならそう思うけど、前衛とか後衛など役割で考えると異性が必要な面もあるんだよね。インナーだって脱げない仕様にしておけば襲われないし、破けないし。まぁ…青木君の心配は心に留めておくね。ありがとう。」


「いえいえ、どういたしまして。それにしても…人数が多いとのんびりし辛そうな雰囲気だなぁ…全員が攻略に向けて頑張っているのに街中でぼーっとしていたら何か言われそう。」


「あはは…確かにそうかも?応募時にかみ転をする人はコアなゲームユーザーが多いってアンケート結果になっていたし、攻略するなら一人でも頭数が欲しいからね。特に全滅で全ロスすると復帰するまでに時間かかって停滞しちゃうから。」


 そこは慎重に進めようよ…全滅も織り込み済みの攻略ってどうなの?死にゲーというジャンルだったらトライ&エラーになるんだろうけど、これはお金も装備もロスト

して熟練度も下がるんだから時間かけるやつじゃないの…?まぁ、自分のゲームスキルに自信があるなら突っ込んでいくってことなんだろうな。


「俺は魔族の国でのんびり過ごすことにするから頑張って攻略してくれ…人数で考えたら人族が一番進むの速いだろうし。」


「まかせて!奥に進んでなにか珍しいことがあったら教えてあげるね!そうしたら青木君もやる気でるかもしれないし。」


 それは期待しておこう。森の中に泉があるとかだったら最高、ロッジとか作って拠点にしちゃうかも。でも…ハルが言っていた全種族で均等に進めるほうがってやつは他の人は知らない情報なのか。今は力をためて人族が突破したら続くって感じで協調するほうがいいな。


 PTか…ソロより確かに生存率があがるだろうが依頼の報酬も人数で割られるから困る。人数いたほうが効率が良いって場合もあるだろうけど。ソロ活動をする人用に向こうの人からもらうフレカが活用されるのかもしれん。


 ガイドブックがログアウト後でも見れたから確認したんだが、デメリットも大きい。成長補正にマイナスがかかるということは素直にプレイヤー同士でPTを組んだほうが良いしな。依頼をこなすために呼ぶよりは情報を教えてもらうというか、雑談するために使ったほうがいいんじゃないかこれ?


 例えばボスがいてハルにボスを倒してもらうとかそれはそれでつまらないよな…苦労することでよりリアルさを出すのがフルダイブの醍醐味ともいえるし。そもそもハルの強さが分からん…フレカの相手が自分より低ければその住人に成長補正がプラスされて育成ゲームみたいになるんだが…見た目幼女のハル…最近のゲーム界隈についてちょっと調べたんだが、ギャップによる強さを求めている雰囲気だった。幼いのに強い、老人なのに活発、筋肉隆々だが乙女なパティシエなど。そう考えるとハルは探索に呼ばないほうがいいか。


「おっと…そろそろ講義が始まりそうか。それじゃいつも通り寝るんで何かあったら起こして。」


「あはは、私も今日はちょっと眠いかも…この講義の教授、一部じゃ睡眠ボイスって言われているし我慢できそうにないや…」


 案の定、俺も飯塚さんもすぐに眠りについた。…飯塚さん、夢の中で敵でも倒しているのか?怪しい笑いとか寝言が聞こえてきたんだけど、大丈夫か?

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