第69話
—これにて、第1回サバイバルイベントを終了します。各自、イベントポイントを消費した上でエリアから退出をお願い致します。
また、この後サーバーメンテナンスを行うためログインすることが出来ません。それをふまえてエリアから退出してください。
うん…イベントは終わったし、連合軍のドラゴン戦も意外と見応えあったんだけどすっきりしない。いやまぁボスなんだから形態変化やギミックの切り替えがあるのは当然なんだけどさ。一瞬で終わったよね。
俺達が敵の数を増やしつつ、徐々に難易度を上げ敵のレベルアップに対応していくことで確実にスキルを育成している間、他のイベント参加者は大変だったということを後からイナに教えてもらった。
まず、6時間ごとにエリアが縮小していくことによりどんどんと退路がなくなり、島の中心に近づくことになる。最終ウェーブに到達する1段階前は拠点を建てる事も出来ず、ずっと死に戻りを繰り返していたようだ。
ただし、最終ウェーブになると敵が一切現れなかったのでなけなしの素材で装備の修理を行い、ドラゴンのいる洞窟で全種族合流したようだ。そこからはもうゾンビアタックの繰り返しであった。
物語や創作の中ではこのような劣勢で強敵と戦うと覚醒する人もいるのだろうが、そのような都合の良い事は起こらなかった。ドラゴンと相対する前にやられすぎてハイになっている者もいたが、ほとんどの者は早くイベントが終わってくれと思っていたと書き込まれていたとも。
それでも戦いを諦めていない者達が少しずつドラゴンにダメージを与え続けたようだ。特に魔族のケンタウロス男とスライム女が中心となったグループが目立っていた。あのグループ、男1に対して女性6人とか凄いな。
また、ドラゴンのヘイトは一人だし遠距離攻撃もブレスに注意していたら平気だから死に戻っても態勢を整える時間があるし。
いい流れが来ていたのだが、突然ドラゴンの行動が止まったのだ。連合軍はここがチャンスとでも思ったのか総攻撃を仕掛けたのだが地響きが鳴り響き、地面が崩れ、溶岩の中に飛び石の様に小さな足場があるステージに切り替わったのだ。突然の事で慌てた連合軍はそのまま溶岩の中へダイブ、運よく足場に乗れた者もドラゴンの空中からのブレスによって焼かれ、全員ほぼ同時にやられてしまい、ドラゴンが初期の状態へ戻ってしまった。
その後はもう挑戦することなく時間が過ぎるまで情報交換の場となっていた。
イベント終了のアナウンスでもあったが、エリアを退出したらログインが出来ないということなのでパーティーを組んでいた人達で情報交換をしろってことなんだろう。しかし、もう会わない種族の人もいるのに情報交換?掲示板もあるから攻略情報などはそっちに書き込めるよな?そうなると…
「あー!いたいた、ナオヤ君みんな向こうに集まっているよ!イベントの交換品、色々あって迷うみたい。」
考え込んでいたのか、イナが近づくまで全然わからなかった。どれ、皆の所に行きますか。イナ、サイ、ミー、がポリーと連絡先を交換したような掲示板に書き込めない情報を交換しろって事なんだろう。
「ね、ね!何交換しようか!やっぱり定番の装備品?それよりスキル熟練度上昇UPかな!?」
「結構ポイントもらえてた、ぶい。まだ入手不可な素材を交換予定。」
「サイ、ポイントを全部素材につぎ込むって言うんだよ…私は熟練度上昇かな、遅れを取り戻さないと!」
「私はどうしようかしら…今回、色々と教えてもらったから熟練度がいいのだろうけど…交換レート高いのよね。」
どれどれ…確かに交換レート高いな、それに1枚12時間となっているし。というよりポイント順位を見る限り交換できるのって俺達のパーティー内くらいじゃないか?まぁ、パーティー内でもポイントに差があるから絶対ではないが。
この交換品を見る限り装備や素材はレートが低めに設定されている。と言っても、素材は数を揃える必要があるから普通だと厳しいだろう。
「皆の意見を聞く限り、俺達だったら熟練度じゃないか?イナは第1陣だけどメイン武器を変えたし、第2陣なら少しでも熟練度をあげたいだろうから。ちなみに、武器は交換レート低いが修理をするのに素材が必要って考えると罠の可能性。しっかし…俺はそこまで熟練度を急いでいるわけじゃないからどうするか…」
リストを下から順に眺めていると一番上に【古びた鍵】というアイテムが表示されていた。え、なにこれ。俺の持ちポイントほぼ使うんだけど!?罠の気もするが惹かれている俺がいる。そもそも戦闘はそれなりでのんびり過ごしたい俺としては迷惑のかけない程度に戦えればいいのだから交換したいものが限られている。とりあえず聞いてみるか。
「皆には古びた鍵ってアイテム、リストに載っている?」
聞いてみたのだが皆は首を横に振るばかりだ。
「あーしは見てないよ。一番上?熟練度のチケットだけど。」
「…人によって内容変わる?私もないから罠?」
「でも夢があるよね!宝探しが始まりそう!」
「それに目が向くって事はナオヤさんは交換したいのかしら?ナオヤさん的に交換したいものなさそうだものね…」
まだ出会ってから日が浅いポリーにまでなぜか把握されているんだが。罠だったとしても笑い話になるだろうし交換するか。
「よし、交換完了。皆も大丈夫か?」
周りを見渡すと頷いて大丈夫と答えてくれた。ただ、なぜかポリーの背中を3人で押して、俺の前へ連れてきた。
「え、えっとね…ナオヤさん以外の人とは連絡先を交換したのね。だから、その…せっかくだからナオヤさんともいいかしら?む、無理にとは言わないのだけど…」
3人娘はなぜかニヤニヤしてるし、ポリーはへにゃっと困ったような顔をしている。3人に無理やり言わされてないか心配だ。ポリーはサイと同様、背が小さいので基本的に上目遣いになるので保護欲が湧いてくる。
「あーっと…俺は問題ないんだが、大丈夫か?後ろの3人に強引に言わされていない?結構、女性って男性と連絡先を交換するのは慎重になるし有名人なんだろ?」
「ナオヤさんの為人はこのイベントを通してなんとなく掴めたし、皆の反応から普段も変わらないというのがわかるので大丈夫よ。というか、普通の男だったら喜んで交換するわよ。」
確かにポリーは可愛いし普通だと喜ぶんだろう。俺としては可愛い、綺麗、美人ってなるとちょっと間を開けたくなる…勘違いを引き起こしそうになるし、そういう人らは恋人がいると考えているからな。3人組は性別を超えた友達って感じで付き合いやすいのは助かる。
「それなら交換するか。ただ、ポリーの感じからすると北欧系のイメージだから地域の言語…というか英語ですら翻訳通さんとわからんぞ?」
「この機会に勉強になるでしょ?1言語しか使えないよりせめて英語が使えると助かるわよ。経験上ね。」
流石モデルやら役者を経験しているだけあって説得力がすごい。そうだな…何事も経験だしこの機会に外国語の勉強をし直すのもいいかもしれないな。