第67話
全員で食後にまったりと休んでいるとミーが思い出したように言った。
「もうすぐ敵が強くなる時間だから念のためフルパーティーで訓練したいんだけど大丈夫?あ、なにか用事があるなら無理にとは言わないよ!」
そうか、もうそんな時間か。あと3回強くなって明日の正午にイベントが終わりとは長いようで短いイベントって印象…忙しかったから濃密な時間だったってことか。
「私は大丈夫だよ!生活スキルも上げたいけど、これはイベント以外でも上げやすいからね。」
「大丈夫。」
「面倒だけど今後のためにやっておいた方がいいわよね…」
「おんぶに抱っこ状態ってわけじゃないが、採取メインだとこういう機会がないと参加しないもんな。」
全員の了解が取れたのでミーは嬉しくはしゃぎだした。
「ならさ!敵の切り替わり前に慣らして備えよ!一人で黙々と倒すのも良いんだけど色々と試したり考えたりしながらだと大変でさ。」
大学内ではそこまで活発な印象は持っていなかったが、ゲーム内だと人って変わるんだなぁ…いや、良いほうに変わっているから問題はないんだけどな。
それと、猫の尻尾がピンっと立っているし足踏みするのは現実だと喜んでいる行動だっけか。ゲームなのに感情が尻尾や耳に表れる表現が凄いよな。いや、逆にオーバーアクションのものも多いな…赤面、怒り、喜びとかの感情面が特に。
訓練部屋に到着し、各自準備を開始した。
さて、俺は何を意識して上げるか。こういう機会じゃないとあまり使わない【隠蔽】と【忍び足】を意識して敵の後方から攻撃を仕掛けてみるかな。流石にダンジョン内で罠は設置できないし。っと、皆とすり合わせしないとダメだな!
「皆は何に意識して上げる予定だ?俺は採取にも便利なヘイトや発見率を下げるスキルで裏から攻撃しようと思うんだけど。」
「おぉ…これで武器がナイフだったらアサシンだね!というかナオヤって便利なスキル多くない!?戦闘でも十分役立つじゃんそれー!ちなみに私は回避盾が出来るようにしたい!ヘイト集めとか、あとはスタミナが持つようにかな。」
「でもソロで行動するなら有ったら便利というかないと厳しいよね。うーん…私はナオヤ君みたいに一撃必殺みたいに溜めて射るのを意識してみる。」
「…ナオヤ君、いつでも手伝う。ミーがヘイト集めるなら私は薬品を使った攻撃。ナオヤ君のスキルのおかげで補充が容易になったのはでかい。」
「そういうスキルは魔法職でもあると便利そうね。戦闘をするのに意識するのって大事な事なの?」
あまり広まっていないのか?普通、上げたいスキルがあったら意識して使うのは普通だと思うんだが…このゲームはアクティブスキルというより全部がパッシブスキルだから認識の違いってやつかな。
「普通のゲームだと任意で発動するスキルと何もしなくても自動で発動するタイプがあるんだが、このゲームってちゃんとスキルを使っているって意識を持たないとダメなんだよ。
あとは…敵から発見されづらくしたいのにガチャガチャ鎧の音を立てたりしてスキルが成長したらおかしいだろ?自分の性格に合ったものが行動によって覚えやすいのは普段していることの延長だからと思うぞ。」
俺が言った言葉を自分なりに解釈しているのか、ポリーは真剣な顔をしてうんうんと頷いていた。
「どうりで…腑に落ちたわ。私はエルフだから周りと同じ様に弓を最初にやっていたんだけど、伸び悩んでいたから変えたのよ。そうしたら今までよりはるかに上がりやすかったわ。それなら…私は魔力の消費を抑えることを意識したほうが良いかしら。」
漠然と戦闘を行うより、きちんと目標を立てると意欲が上がるし良い事尽くめだよな。
その後、順調に戦闘を行い、休憩を挟んでからレベルの上がった敵に挑戦してみた。
「相手が万全じゃないからかもしれないけど、皆がいる状態だとサクサクだね!トラップなしでやってみる??」
「数が調整出来るから問題ないと思うが、ヘイトを取るミーの負担が増えるぞ?回復魔法があるわけでもないからサイの薬頼りだし。」
「回復薬は問題なし。でも麻痺や毒薬が心元ない。スキルは覚えられたから戦闘継続で平気。」
「はや!?いいなぁ!あーしはスタミナ関連は覚えられたけどヘイトがまだなんよ…」
「私も覚えられたよー。あとはレベルを上げるために意識して使っていくね。」
「私もよ。今までなかなか覚えられなかったことを考えると快挙だわ。」
ミーのヘイトが安定すればもっと楽になるんだろうが…きちんとどの敵にも攻撃してターゲットを取っているのにおかしい。ちなみに俺も【バックアタック】というスキルが取れた。
「なぁ。他のゲームの場合はヘイトを取るスキルってどんなのがあるんだ?現実だと威嚇したり極彩色で目立つって感じだが。」
「んー、有名どころだとシャウト?大声を出したり相手の嫌がる行動、回復行動がヘイトを稼ぎやすいかな?」
「そういえば戦闘中のミーは声を出さずに戦っていたよね?叫んでみる?」
「でもでも!第1陣でそういうスキル覚えたって聞かないっしょ?流石にゲーマーなら試していそうだし!」
「周りと私達、状況が違う。試す価値あり。」
「うーん…恥ずかしいけどやってみる!」
敵を部屋に呼び出し1度だけ戦闘を行ってみたのだが、明らかに今までよりミーを狙うような行動に変わったので俺とイナが背後から強襲、ポリーも魔法と瞑想?を繰り返し消費を抑え、サイが着実に相手を状態異常にしていく。
「…すんなり覚えられた。あんなに苦労したのに!」
「いや、今までの下積みがあったからキーとなる行動で覚えられたんじゃないのか?」
ミーが落ち込んでいると辺りにブザー音が響き渡った。
「え、この音なに!?」
「ダンジョンに侵入者が来た合図ね。とりあえず拠点に戻って確認してみない?」
「偵察部隊が中心に来るとは思っていたが予想より早かったな。」
俺達は急いで拠点に戻り、状況を確認することにした。
「ポリー、侵入者は何人だ?」
「そうね…10人で、これは人族ね。」
人が1番多い種族だから探索に回すことも出来るもんな。もしくは勝手な行動をしているグループかもしれんが…纏まらないと、このイベントは厳しいと思ってもおかしくない。
「あれから3回強くなったドラゴン相手にどう立ち回るのか楽しみだ。」
「で、でも攻略されちゃった場合この拠点取られちゃうの?」
「イナ、拠点は早い者勝ち。つまりドラゴンを倒してもポイントがもらえるだけ。」
「他の人の戦いを見る機会がないからあーしもちょっと楽しみ。」
「それにしても、良さげな装備しているわね。ただ、あんな重そうな鎧を着て機敏に動けるのかしら?もしくはデメリットを無くすスキルがある…?」
スキルに関しては、ない…とは言い切れないな。変なスキルを覚えるし。他のプレイヤーが戦闘をしている所なんて全然見れないし、人族は人数が1番多いからどんな戦い方をするのか俺も楽しみだ。