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第66話

 サイとイナがナオヤを見つめているとポリーが起き上がった。


「ふぁ…久しぶりにゆっくり寝た気がするわ。ん?あなた達何をしているの?」


「製作に時間が掛かるものがすぐ出来たから原因を考えていたけど、すぐ答えが分かって可笑しくなってたところ。」


 サイが答えるとポリーは小さくそう…と呟いた。


「それにしても…あなた達って付き合っているわけじゃないのよね?それで抵抗なく膝枕をするって凄いわね。いくら好きだからといって膝枕をする女性は少ないんじゃないかしら?」


「ナオヤ君に関しては逆。膝枕なら恥ずかしがっても受け入れられる核心があった。

手を繋いだりする方が意識されて断るまでもいかないけど嫌がられる可能性がある。」


「多分、今は付き合うって意識より男女感の友情寄りに進めたほうが良いと私も思うかな?ナオヤ君の苦手なタイプや平気なタイプは予想がついたんだけどどこまで踏み込んで良いか分からないもん。」


 踏み込まれたくない領域はポリーにもある。特にメディアはズカズカと土足で踏み込んでくるので毛嫌いしている。


「好きなら好きって伝えられたら楽なんでしょうね…複雑だからこそ燃え上がるのかしら。それと、良い匂いが先ほどからするのだけどゲーム内でも食事は必要なのかしら?」



 サイとイナは顔を見合わせ、ナオヤから教えてもらった事をポリーに1つ1つ丁寧に伝えた。まさかゲームの中でも普段の生活と同じ様に食事や睡眠を取る事によるバフに関しては寝耳に水だったのか驚いていた。

 

「そんな事が…あなた達のナオヤさんに対する信頼度が高いのが良く分かったわ。ステータスがスキルに関してしか分からないのにこんな発見をしているんだもの。何事も地に足をつけて挑戦したほうが良いのかしら…」


「場合によりけり。挑戦も必要。」


「そうなんだよね。せっかくのゲームなんだから冒険したいってのと、強くなりたいってのとのんびり景色を楽しみたいが同居してて大変…っと、そろそろナオヤ君を起こしてご飯食べよ!向こうからミーも戻ってくるのが見えるし。」


「ん、了解。」


「匂いを嗅いでいるとホントお腹が空いてくるわね。今までなんで食べようとしなかったのかしら…」


「重要な成長支援、意識するまでプロテクトが掛かってる可能性。」


 サイはナオヤの頭を撫でていた手を頬に当て、ペチペチと弱めに叩いて起こし始めた。まだ眠りが浅い状態だったのかナオヤはすぐに起き、体を起こした。

 その際に覗き込んでいたサイの唇がナオヤの頬を掠めてしまった為、恥ずかしくてナオヤがおはようと声を掛けてくれたのに小さく「うん…」と呟くだけになってしまった。イナは口元に手を当てて驚き、ポリーはごちそうさまと話しかけて来たので起きたばかりのナオヤには何の事だか分からなかった。




「おはよう。ん、どうした?」


「ううん、何でもないよ!ナオヤ君、ご飯が出来たから拠点の中に入ろう。」


 俺達は連れ立って拠点の中に入り、イナが作った料理を皆でテーブルに並べ終わったところで全員が席に着いた。


「こう見ると…やけに豪華というか手が込んでいるよな?結構時間が掛かっていそうなのに俺が昼寝している間に作り終わっているとか手際が良すぎる。」


「んね!イナが料理出来るのは知っていたけど時短テクニックまで身に付けているなんて凄すぎ!あーしも勉強するべきなんかなぁ…」


 俺とミーが料理について感想を言っているとなぜかサイとミーは困ったような顔をしていた。ちなみにポリーは


「日本の学生はここまでの料理を作れるの?調理学校というわけではないのよね?私も出来たほうが将来的にいいのかしら…でも疲れて帰ってくるからすぐ寝たいし…」


「あはは…ナオヤ君、多分新しいスキルを覚えていると思うよ?それのおかげで製作時間がほぼ無くなった感じなの。」


 そう言われて俺はスキルを確認すると…


スキル:【気配察知】Lv5 【隠蔽】Lv6  【膝枕】Lv7   【昼寝】Lv7

    【採取】Lv5   【解体】Lv3  【槍術】Lv5  【投擲】Lv4

    【魔力回復】☆  【身体強化】☆【魔力探査】Lv3【木工】Lv1 

    【伐採】Lv2   【忍び足】Lv3 【環境適応】Lv3【罠師】Lv2

    【精霊術】Lv2 New【ドリームヘルパー】Lv1



 おぉ…なんか軒並みスキルがレベルアップしている。採取をしたりドラゴンと戦ったからか?と言うか、戦闘職でもない俺が槍術5まで上がっているのにビックリなんだが…魔物毎に熟練値が設定されている可能性がある。あ、Newってあるこれか


「新しいスキルを覚えているな。ドリームヘルパーと言うらしい。」


「夢のお手伝いさん?」


「イナ、違う。多分働き妖精」


「寝ている間にお手伝い…童話で確かあったわね、小人の助け?」


「あ、知ってる!グリム童話っしょ!あれって世界で読まれるほど有名なんだねぇ!」


 あ、靴屋の話のやつか!確か主人が寝ている間に作業を終わらせてくれるな…しかし今回の場合だとPTメンバーにも適用されるほど解釈が広いんだがいいのか?


「寝ている間に作業が終わっているとか羨ましいわ…条件的には同じ気がするのだけど私も覚えないかしら?ほら、寝るのも好きでのんびりするのも好き、精霊魔法を使うのも同じでしょ?」


 同じ…同じなのか?寝るのものんびりするのも好きなんだろうが、何ていうか根本が違う気がする…


『そりゃあ違うでしょ?この子の根本は単にだらけたいだもの。ナオヤと違ってやる事終わらせてからのんびりするとは違うでしょ?』


 ニオ、それをそのまま伝えたらかなりやばいんじゃないか?濁して伝えるのも難しいんだが…


『バッサリ言ったほうが私は良いと思うけどね。ほら、下手に期待を持たせて眠ってばかりになられても困るでしょ?』

 

 流石にそれはない…ないよな?イベント的にはもう問題はない所まで来たが、戦闘スキルを上げるチャンスでもあるからイベント後の事を考えると起こしておいた方が良いか…


「ポリーってやるべき事を後回しにするタイプ?」


「良く分かったわね。学生の頃なんて長期休暇の課題はやらなかったわ。」


「潔い!?あーしはやらなきゃって思ってギリギリに終わらすタイプ。」


「みんなもうちょっと余裕を持とう…私は、最初の1週間でがっつりかなぁ。そのほうが心配事もなく遊べるし。」


「休み明けのテストに備えて制作課題を前半、5教科を後半。」


 サイのやり方は利口だな。実際、休み明けに復習テストを実施している学校が多いから宿題をさっさと終わらせてしまうと結局テスト勉強をし直すことになる。ま、自分が出来る課題の量を把握していないと宿題が終わらないから上級者向けっぽい。


「とりあえず、ポリーは覚えられないかも。グリム童話でもあるように作業をする前提だからな。まぁ…ポリーの場合はリアルが忙しくて家に帰っても寝てしまうから仕方ないのかもしれんが…」


 俺は言いにくかったがバッサリと言うと、ポリーはガーンっと効果音が大きく響きそうなほどショックを受けていた。


「た、確かにリアルではそんな生活よ…でもそれでもう慣れちゃっているから変えるとなると難しいわ…あぁ…あなた達みたいな学生同士で遊んだりしたかったわ…」


「あ、それなら8月に日本にくる??ナオヤの家でゲーム合宿という名の皆で遊び回ろうって決めてるんだ!」


「おいおい…ポリーって今までの話からすると有名で忙しいんだろ?

 来日するってだけでも大変だろうが…そもそもマネージャーもいるだろうし単独行動は出来ないんじゃ?」


「い、一応日本には行くのよ、撮影で…それが終わっちゃえばオフなのだけれど、男性の家に泊まりに行くのは…」


「普通はそうだよね…いくら比率で言うと女性が多くても。」


「イナ、ポリーの表情からして単に恥ずかしがっているだけっぽい。意外と初心?」


「有名人だったら色んな付き合いで男性経験豊富そうなのにポリーは違うんだ!?ドラマだったらキスシーンやヌードシーンあるだろうし、撮影で夏だと水着なのにねぇ。」


 ミーが口に手を当てながらニヤニヤしているとポリーが憤慨した。


「あれは仕事モード!プライベートでなんて恥ずかしいわ!そもそも私の容姿から役に抜擢されるのは子役ばかりだし撮影はグラビアが多いし…そこまで言うならいいわ!私も泊まる!日本に滞在できる期間が決まっているから私に合わせてよね!」


 こういう子供っぽい所があるから子役なんじゃ…と思ったがそれは言わないでおこう。しかし、子役やグラビアばかりねぇ…それって単に容姿だけを見てなのか?それだったら悲しいよな。ポリー自身を見ていないって事なんだから。



 俺は嬉々連絡先を交換している4人娘を見ながら夏季休暇中の苦労を考えるのであった。

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