第50話
第一拠点のアージュまで魔物と出会わないように気を付けて戻ってきた。
『わぁ、ここがアージュなのね!フラムはまだまだ発展途上って感じだだったけれどここは人多いわね。』
これでも外国人が少ないから他の国に比べると人はかなり少ないぞ?俺としては混雑しているよりこのくらいのがちょうどいいな。そう言えばなんて呼んだらいいんだ?
『特に決まった名前はないから好きに呼んでいいわよ?』
それじゃぁ…タマ。
『…前言撤回するわ。まともな名前なら好きに呼んでいいわ。』
これも由緒ある猫の名前なんだが…精霊なんだし自分の属性に関連した名前のがいいよな?ありきたりなのしか思いつかないんだがどうするか。ラテンだとアクアだし…水ってH2Oだから2HでO、順番を変えてニオってのはどうだ?
『ニオ…うん、いいわね!ナオヤ、今はどこへ向かっているの?』
水を取ってくるよう依頼を受けているからその報告。その後はサバイバルで使う道具の買い出し、作業着を何着か買う予定。
『あの建物で報告ね。ごめんなさい、島に関しては私から喋られないみたい。』
公平を規すために当然だから気にしなくて大丈夫。知らないからこそワクワクするって部分もあるからね。っと報告済ませるね。
俺はなにやら固まっているアーテルさんに依頼の報告をする。
「アーテルさん、6樽とりあえず汲んできたけどどこに持っていけばいいのかな?」
アーテルさんは恐る恐るという感じで倉庫を指さした。
「了解、それじゃ置いてきますね。」
倉庫の中に入ると係の人がいたので6樽納品し、割符を受け取り受付に戻った。うん、ちょうど報告に来る人がいない時間帯だったからそのままアーテルさんの所へ戻った。
「割符を貰って来たので完了処理お願いします。」
「ナオヤ、そ、その肩に乗っているのは…?」
ニオ、姿が見えているみたいだぞ?見える人は稀って言ってなかったか?
『あぁ、この子って死神の眷属でしょ?座にいる死神ではないから階級は低いけど、神に連なるなら見えてもおかしく無いわね。』
例外がすぐ近くにあるのにビックリだ…
『何言っているのよ!一番の例外はナオヤでしょうが!』
「湧き水の所にいて、なにやら気に入られたようで付いてきた。」
『私は野良ネコか!』
「そ、そうなんだ…精霊様が街まで来ているなんて初めて見た。しかも最上位…」
『ふふん!ナオヤ見直した?私は偉いんだぞ!』
「まぁ見えるなら気にしちゃうだろうが害はないし、こいつの事は気にしなくていいぞ。それより手続きお願い。」
「あ、うん。今混雑していないからすぐ精算所から呼ばれると思う。今回は無理に頼んでごめんね?」
「新しい出会いがあったし大丈夫。ただ、道中で道を塞ぐようにトレントがいたから注意喚起が必要かもしれん。不意打ちされると危ないからな。」
任せて、と言いアーテルさんは奥に引っ込んだ。それじゃ呼ばれるまで端で待っているか。
『ナオヤって怖いもの知らずね。普通死神って存在を怖がると思うんだけど。』
俺の世界では死神は死を司る以外にも役目があるからな。ビックリはするが怖いってわけではないよ。超常の存在より怖いのは生身の人と思っている。
『確かにそうかもね。水を汚すのも木を無駄に伐採するのも火事を起こすのも人がほとんどだし。』
その様子だと精霊は人が嫌いなのか?ニオを考えるとどちらでもないというか楽しそうっていう興味本位が勝っている感じだが。
『かねがね当たりよ。まぁ精霊によっては嫌いって子もいるからそれぞれ違うわ。』
なるほどな。生態が分からんから失礼にあたることもするかもしれんが簡便な。なるべく注意する、っと呼ばれたか。
俺は精算所で代金を受け取りそのまま道具屋へ向かう。
「いらっしゃい、今日は何をお求めだ?」
「道具しか持っていけないサバイバル生活をするんだが、何が必要なのかアドバイスをくれないか?」
「サバイバルか。それは寝場所が確保出来るのかで大きく変わるぞ?必須なのは火起こし、明かり、食料、毛布、魔物対策だが…1人だと見張りが出来ないって考えると魔物避けの魔道具があるといいかもな。」
やっぱり必要なのはそこか。火起こすにも薪が必要になるが…枯れ枝がない場合火が付きにくいよな?ニオ、木から水分を抜く事って出来るか?
『それくらい簡単にできるわ。ちなみに生物からも出来るわよ、ふふふ。』
いや、それはやらなくていいです。流体操作とか物騒すぎるだろ!攻撃に使うより生活を豊かにする魔法のが嬉しい。洗濯した後に水気を取るとか髪洗った後に乾かすとか肌の保湿とか…あ、でも解体のときに手伝ってくれると嬉しいかも?
『ナオヤはほんと変わっているわねぇ…そのくらい頼まれなくても力を貸すわよ?私ばかり貰っているのも悪いからね。』
ニオ、ありがとう。
「拠点は1日目じゃ厳しいから火打石、毛布とテント、あとは調味料を頼む。」
光源があったほうが良いのかもしれんがたき火以外の明かりがあると獣が寄ってくる可能性もあるからな…調味料として塩と唐辛子は置いてあるが流石に胡椒は置いてなかった。
「あいよ。毛布とテントは1つずつでいいのか?テントは大きさもそれなりに種類はあるが?」
流石に他の人も買ってくるよな?すぐ拠点として機能する建物があると思っている可能性も否定できないのが困る。一応買っておくか。
「毛布は4つ、テントは5人用を1つと3人用を1つで頼む。あとは魔物避けの魔道具ってどんなのだ?」
「魔物の嫌いな匂いもしくは音波を出すものがあるぞ。」
「んー…メリットとデメリットを教えてもらってもいいか?」
「慎重だな、探索者としてはそれが正しいぞ。音波を出すやつは高価だが魔物の種類を選ばない、だがここには誰かいるっていうのがバレる。匂いのは安価だが匂いによっては効かない魔物もいるから種類を揃える必要がある。」
やっぱりそういう細かい所で違いがあるんだな…魔物の種類が分からないから度の匂いを用意すれば分からないからこれは音波じゃないとダメだな。
「音波のやつで頼む。後は木の枝払い用の道具、食器かな。」
店員が選んだ道具を購入して、次に服を準備することにした。作業着を何着かとインナーを購入する。インナーは他の人のを購入したらやばいので男女兼用で使える作業着と寝間着を念のため買っておいた。
『ナオヤの知り合いって女性が多いの?女なら流石に服くらい自分で用意すると思うわよ?』
装備だけで良いって思う人もいるかもしれんのがなぁ…下着は買うわけにはいかないけどこのくらいなら準備しておいたほうが良いでしょ。ま、今回は装備を修理・修復することが出来ないからなるべく消耗を抑える必要があるからな。
『なるほどね。考えすぎって思うけれど流れ人ならかばんに入れれば問題ないし使わなくても邪魔にならない道具ばかりだから平気なのね。』
そういうこと。とりあえず俺としてはこれで準備は終わりだな。明日はスキルを育てる方向で行こうか。その時はニオがどんな事出来るか試すかもしれんが大丈夫か?
『問題ないわ。流れ人の睡眠中は私も近くで休んでいるから何かあったら守ってあげるわよ?』
あ、魔族の女の子が寝場所に忍び込んでくるけどいつもの事だからそれはスルーしていいからね。お世話になっている子だし俺のスキルを育てるのに力を貸してくれているから。
『…すっごい状況ね。分かった、任せて!』
とりあえずこれで問題ないな。明日学校で準備の状況を聞いておくかな。