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第49話

 相槌を打ってくれていた存在が精霊ってことに驚いたんだが、見えてないと思われていた事のがビックリした。確かに透けているんだがはっきりと姿も見えるし声も聞こえるし。


『いや、普通は見えないし声なんて聞こえないからね!?魔力に敏感な人だと威圧感があって畏れてそそくさと退散するのよ!』


 そうは言っても魔力が大きい存在なのは分かるが敵意を感じなかったんだし分からない事をちゃんと教えてくれたんだから友好的って思うだろ?


『なに首を傾げているのよ…これでも私はそれなりに高い地位なんだからね!女神様からこの世界の水を担当するよう仰せつかっているんだから!』


「へぇそれは凄いな…まぁ俺としては残りの樽に水を入れなければいけないから、放置してくれていいぞ。」


 俺がいれ終わった樽をしまい、新たな樽をセットすると精霊が水を並々と注いでくれた。


『…何呆けているのよ?ほら、残りの樽を全部出しなさいよ。』


 手伝ってくれたらこんなに早く貯まるとは思わないだろ…先ほどまでの待っている時間はなんだったんだろうか?

 俺が平な所に残りの樽を出すと精霊は片っ端から水を注いでくれた。


「いや…手伝ってくれてありがとな?これだけの樽を全部満たすとなると結構時間を取られていただろうし。」


 樽を定期的に換えないといけないから寝て過ごすことも出来ないからな…


『これで用事は済んだわね?それじゃあなたの事を教えてちょうだい。なんで私の姿や声が見えるのかしら?』


「いや、俺も良く分からないんだが…魔力に関してなら探査があるくらい…あ、マナを使っている点か?」


『あなたマナを使えるの!?…ほんとだわ、いくら魔人だからって珍しいわね。私達精霊なら基本がマナだから珍しくないのだけど…それなら私達の存在に気づけるし声が聞こえるのも当然よね。自然に溶け込んでいるのだから。』


 外で昼寝をすることで自然を感じたりしていたのも原因なのかもしれんな…これは嬉しい誤算だが普通の人には声も姿も見えないなら話している姿を見られたら変人扱いされそうだ… 


「じゃ、じゃあ俺はそろそろ水を納品しに戻るかな。」


 俺が踵を返し歩こうとしたら精霊は髪を引っ張ってきた。


『ちょっと待ちなさいよ!作業がすぐ終わったんなら時間はあるでしょ!』


 そうは言うがなぜこんなに絡まれているのか分からないから落ち着かないんだよな。そもそも魔力に関しても魔法が使えるわけじゃないし。という事を言うと精霊が呆れてしまった。


『生涯かけて到達するようなマナの運用をあなたがしているからよ。いい?魔力には波長というのがあるのは知っているわよね?』


 あぁ、プレイヤーは初期だと特殊な波長をもっているが魔法を食らうと染まってしまうと聞くやつか。それがどうしたんだ?


『魔力の波長は各個人で違うんだけど、マナはそこから更に色があると思えばいいわ。例えば…水なら青とか火なら赤とかに染まっているの。』


 ほほう…そうなると千差万別で本当に色々な可能性があるんだな。それを放棄しているのが非正規の方法で魔法を覚えていくプレイヤーという…


『それで、あなたは周りからマナを吸っているんだけど放出しているマナは無色なのよ!』


「呼吸で酸素を取り入れて二酸化炭素を出しているようなものか?不勉強ですまんが何が凄いのか全然わからないんだが…」


 精霊はため息を吐くとその理由を教えてくれた。


『まず無色の魔力は自然には存在しない。いえ、短い時間ではあるけれどすぐ周りの色に染まってしまうの。そして精霊は自分の色しか吸収することができない。

 他の色…ううん属性の場所では力が発揮できないの。例外として無色の魔力は吸収できるわ。』


 力を発揮できる環境ってよく漫画で見るやつだ。っとすると無色の魔力が近くにあるなら…


『そう言う事!つまりあなたは精霊に好かれやすいしどんな環境でも精霊の力を十二分に発揮することが出来るのよ!分かった?あなたの特異性が!』




 しばらくの間、精霊が落ち着くまで宥めていたがもう大丈夫と声が掛けられた。


『決めたわ、あなたに付いていく。人柄も問題なく、なにより自然に溶け込むような人なんだし。』


「いや…女神様にこの場所を任されているんじゃないのか?勝手に場所変えていいのか?」


『別にこの場所を任されているわけじゃなくこの世界の水をだから関係ないわ。そもそも管理なら下位の子に任せておけば問題ないのだから。私がここにいたのは落ち着く場所だし気まぐれよ。』


 それでいいのか精霊さん…んまぁ自然って良く聞く全は一、一は全って言うし精霊もそんな感じなんだろうな。


「俺に付いてきても楽しいことはないと思うぞ?戦闘は避ける方向だし、精霊から力を借りれるとしても敵に対して使わんぞ?」


『え?なんで?水だって攻撃出来るのよ?』


「いやいや、攻撃できるだろうなぁってのは分かるんだが自分の力じゃないし、強すぎる力ってのは厄介な問題も引き寄せるだろ?」


『精霊に好かれるのはあなたの力なんだし気にしなくてもよさそうだけど…まぁ分かったわ。それじゃ契約しましょ!』




 空中に契約書っぽいものが投影された。何々…要約すると俺が提供するのは無色の魔力、精霊から提供するのは魔力に応じた精霊の力。違反に対しては魔力が提供出来なくなったらなのは当然だな。


『大丈夫そうね、それじゃ少量の血を貰うわね。』


 ん?拇印的なものでも押すのか?人差し指に一瞬だけちくっと痛みが走り、血玉になったところを精霊が舐めている。ちなみに水の精霊はウェーブのかかった水色の髪に青白い肌、水自体が服になったようなドレス(透けてはいない)を着ている。

 しばらくすると精霊との間になにやらパスが繋がったような感覚を覚えた。


『これでOKね。あなたと私の間にパスをつないだからこれからは頭の中で語り掛けてくれたら私に伝わるわ。』


 それは助かる。街中で精霊に話しかけている姿を見られたら変人にしか見えんもんな。契約したってことは俺のいる場所に飛べるってことなのか?今度イベントで他の島に飛ばされるんだが大丈夫なんだろうか?


『島?そういえば女神様が小さな島を創造するから管理を任せるって言って来たわね。なら一緒に行けるから問題ないわ。』


 おぉ…これで水の確保が出来て野営が楽になるぞ!


『精霊の力をそのくらいの事でありがたがるのはあなた位よ…普通だったら巨大な力を手に入れて暴れまわってもおかしくないのに。』


 いやいや、人が生きていくには水は必須なんだからすっごく助かるぞ?そもそも人によって優先順位が違うからな?敵を倒したいって人もいるだろうし俺みたいにのんびり過ごしたいって人もいるさ。


『ま、私も争いは好きじゃないから助かるけどね。』


 お互いWin-Winの関係ってやつだな。とりあえずここで話しててもしょうがないから街に戻ろうか。敵の気配を感じないから隠密系のスキルを意識してさっさと通り抜けよう。


『ふふ、街には行ったことないから楽しみだわ。』


 精霊は俺の肩に座り呟いた。期待に添えられるか分からんが、一緒にいるんだしせっかくだから楽しんでもらいたいと俺は心から思った。 

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