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第44話

「ね、ね?ナオヤさん、もっとこのゲームの事教えてくれませんか?」


 リーナから教えて欲しいという提案にジョスも乗っかり乞うてきた。


「それいいな!そうすればわざわざ騎士団に入る必要ないし!」


 ん-…教えるにしてもどんな事教えればいいんだ?基本のシステム?


「とりあえず、こんな大勢の場所で立ち止まって話していたら邪魔だろうから酒場にいくか。今の時間なら受付も混んでないから報告する次いでに飯食いながらでいいだろうし。」




 俺は2人をギルドへ連れて行き、席を取っておいてもらうように頼んだ後に丁度空いているアーテルさんの場所に行った。


「ナオヤ、今日も引率みたいだけど大丈夫?」


「こんにちは、まぁ軽くこの世界の事を教えるだけだから大丈夫かな、多分…昨日一緒に来た子は師弟関係だからそれなりに一緒に行動するかも?とりあえずいつもの薬草とメリッサを納品するよ。木材も一応採って来たけど供給が過多ならかばんにしまったまま乾燥させとくよ?」


「うん、フラムを建築したときの資材がまだ余ってるから大丈夫。ただ、寒気がくる前の準備でもうすぐ必要になるから需要が増えるよ。」


 あぁぁ…やっぱり季節によって需要が変わるよな…薬草やメリッサは第2陣がきたから需要があるもんな。それに薪として使う木材って乾燥させてからじゃないといけないって聞いたこともある。

 工芸に使うにしても水気を含んだままよりは乾燥していたほうが良いだろうし難しいな…こういうのを考えながら採取品を転々とする楽しさがあると思う。農作物でいうなら旬のものというか…


「それなら追加で採取しておいて需要が出てくるころに教えてくれ。あとは…足りていない素材ってあるのか?」


 俺が聞くと、アーテルさんは少し考えてから答えた。


 「お言葉に甘えようかな。フラムから北に行った森の中に湧き水がでているんだけど採ってきてもらって平気?期限とかはないけど…そうね、大樽で6個ほど納品してほしいの。料理に使うと美味しくなるし、ポーションに使う水としても効能が少し上がるからね。」


 単なる水の採取でいいのか?アーテルさんの事は信用できるからランクが違う依頼は持ってこないと思うが…


「いいけど、何か危険な生物がいて納品が遅れてるとかだと俺じゃ厳しいぞ?戦闘は得意ではないからなぁ…」


「特にいないけど出来たら外国人の人がいいし信用できる人がいいからね。その点ナオヤなら安心。外国人が良い理由はかばんの性能だね。それって容量多くて重量が反映されないでしょ?普通の探索者に頼むと4~5人必要なところを1人で済ませられるから人件費が減らせるし。」


 お願い、と少し上目遣いで見て来るのはずるい…

 どの世界でも削減出来る事はなんでもするんだな…確かにその理由なら俺達のが適任ではあるし、採取をしている人が皆無なのが…サイが学び舎卒業したら薬草あたりはやってくれそうだが。


「了解、その依頼受けるよ。樽は支給されるのかだけ心配だ…」


「大丈夫、裏手に準備してあるから持って行って。ナオヤ、ありがとね。」


「いや、俺もフラム周辺は全然探索が進んでなかったから、機会をくれたことに感謝するよ。そうでもなきゃずっと同じ場所にいそうだしな…」


 そう挨拶を交わすと、俺は裏手に周り大樽を回収した。ただ、何個持っていけば分からなかったので多めに10個ほどかばんに収納した。



 俺が併設された酒場へ到着するとジョスが大きく腕を振って場所を教えてくれた。


「遅かったけど、何か問題でもあったのですか?」


 リーナが不思議がって聞いてきた。


「いや、受けた依頼の説明と準備をしてきた。」


「そうだったのですか。注文もせずずっと席にいたので肩身が狭かったです…」


「あ…そういえば無一文だっけか。それじゃ今回は俺が出すから遠慮せずに食っていいぞ。」


 そう言い、俺は腹がいっぱいになるようなメニューを中心に持ってくるよう給仕に伝えた。


「マジっすか!ナオヤさん良い人っすね!でも飯なんて食う意味あるんすか?」


 第2陣で調べてきたらしい人でもこんな反応なのか。リアルに比べると調味料の関係で薄味だろうがかなり美味しいしリーズナブルだと思うんだがなぁ。ジビエ系の料理なんて食べる機会ないし。


「ステータス上では表記されないバフがかかるって感じかな、体感だが。これだけリアルなゲームなんだしプレイヤーが慣れてきた頃にいきなり空腹度や汗、臭いなど反映してくるかもしれんだろ?その予行練習という形でやっといたほうがいい。」


「えぇぇ!?それじゃお風呂はいらなきゃ汚れが肌にまで現れるの!?それはいや!

それは嫌!きちんと宿に泊まりたいわ!」


「え?スライムって汚れんの?」


「何言ってんのよジョス!女性としてお風呂は必須なの!汗や汚れが反映されるなら着替えも必要よ!」


「えー…そんなのに金かけるより装備買おうぜ?最前線まで行けば金も入ってくんじゃね?」


「あんたね…反映されるようになったら交換していないパンツを履いた状態だったら近づかないでね。」


「うげ…マジかよ…リアルとおんなじじゃんか…」


 リーナのおかげで話がすんなりと進みそうで助かった。


「ま、そういうことだ。表記されていないだけで重要な事が多い。飯を食うのも風呂に入るのも、ベッドで安眠するのもな。っと飯が来たようだ。」


 給仕がテーブルの上にどんどんと並べていく。それを2人は勢いよく食いつき、美味い美味いと食べている。もしかしてデスペナに満腹度が減少するというのもあるのだろうか?


「ナオヤさん、これ美味しいですね!最初に教えてくれてホント助かります!食事をしないなんてもったいなすぎますね!」


「ほんとほんと!ナオヤさんマジすげえわ!いやぁあの時言い争っててナオヤさんに付いてったのは当たりだった!」


「奢るのは今回だけだぞ?生活を維持したいなら堅実な探索が必要ってことだ。」


「厳しいー…でもそうなのかもしれないですね。死にゲーって言われているけど無茶しなければ確実に良い生活が出来ますもんね。」


「リーナ、食事は美味しいが俺としてはハイリスクハイリターンとは言わないが冒険はしたいぞ!コツコツとレベル上げってのは性に合わん!」


 ワクワクとする冒険がしたいか世界を満喫するか、コツコツ強くなるか、そこはまぁ人それぞれだもんな。俺としても第2陣に手を貸すのもこれくらいでのんびりと依頼を受けたり昼寝して過ごしたいから、こいつらが強くなって有名になってくれたらなっていう打算もあるし。


「そこはPTですり合わせしたらちょうどいい感じになるんじゃないか?というわけで精算所によって今日は引き上げることにするよ。食事の支払いはしとくから追加で頼むんじゃないぞ?」


 俺は後ろでありがとうございます!という声を背に受け、支払いをしにカウンターへ近づくといつもの店員さんが素早く、しかし優雅な歩きで回ってくれた。


「お客さん、新人さんのお世話もいいけれど安請け合いはお勧めしませんよ?」


 それは俺も感じている所だから身代わりになってもらえるように少し誘導したんだよな。恩に感じて何かとこちらを立てるようにして来たら大変だが…


「そうならないように探索の心得みたいなのを言っといたよ。あとは自分達の力で進めるはずだ。いつも心配してくれてありがとな。」


 そう言うと店員さんは恥ずかしそうにそっぽ向いた。


「あなたが困っているとアーテルが無茶するからね!だから気にかけてるの、わかった?」


「はいはい分かったよ。店員さんも心配してくれているってのが。」


「あ、あなたねぇ!…はぁ、ほんと気を付けてね?良い人ってのは美徳でもあるけど悪徳でもあるんだから。」


 そう…だな。ほんと身に染みる言葉だ。

 トラウマを克服するには時間が必要なんだが過去を思い出に変えるのにも時間という残酷。優しくもあり厳しい二面性…


 だが、かみ転を始めたことによって急速に癒されているのを実感している。まぁ、まだハルやアーテルさん、サイという容姿が幼い女性に…異性にたいして少し余裕が出てきている。


 ゲームを始めてよかった。

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