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第42話

 買い物を済ませて洗濯をササッと済ませ、俺はゲームにログインをした。

 

 意識が浮上してくると頭の下に慣れ親しんだ暖かみのある柔らかな感触が広がっていた。少し横に寝返りをすると上からひゃっと小さく声が聞こえたという事はいつものあれだろう。

 脚の間に顔が挟まれる感じになってしまったので申し訳なく思いながら俺は頭を持ち上げて起きた。


「あー…おはよう。寝返りしてすまん。」


「う、ううん!大丈夫だよ!なにも反応がないのは寂しいけど僕が好きでやってることだからね!ただ、いきなりでビックリしただけだから。」


「そう言ってくれると助かる。んー…」


 俺は伸びをして体をほぐしながら出掛ける準備を始める。


「ナオヤ、今日は何をする予定なの?」


「本屋に行って魔道具作りについて調べて勉強かな、独学でいけるか分からないけど俺までハルに頼って学び舎通わせてもらうわけにはいかないから。」


 本日の予定を答えるとハルは目をぱちくりさせて驚いた後に、朗らかに笑い出した。


「ふふ、ナオヤは出来るだけ一人でやろうとするのは偉いね。美点でもあるし欠点でもあるんだよ。僕はナオヤの役に立てて嬉しいし頼られるのも嬉しい!す、好きな相手なら特に…ごにょごにょ…

 それに、偉い人は何でもできるから凄いってわけでもないでしょ?個々の能力を生かすことが重要なんだ。」


「捉え方なんだな…俺は頼ってばかりだと申し訳ないと考えてしまう。ハルの考え方は統治者や良い意味での貴族って感じがする、民衆に近い感じの。」


「あ、あはは…毎回宛てにされるのも嫌って人もいるから大変だけど、考え方は人それぞれだからね!個人で努力してみて、それでも分からなかった時に助けてもらうのは良い事だよ!まぁ、今回みたいに最初が肝心な魔道具作りや薬師、魔力に関しては早めに聞いてもらったほうが癖がなくていいんだ。」


 なるほど…専門的なものは苦手意識が出やすいから楽しさが伝わるようにするのも大事なのかもしれん。逆に探索者は個人の責任が大きいので人に聞いてばかりより自分で調べたほうが覚えられるし知識や経験が積めるってことか。


「そうなのか…ハル、すまんが今回も教えてもらっていいかな?」


「ナオヤ、こういう時はごめんじゃなくてありがとうだよ!謝られるより感謝されるほうがいいな!もちろん、ナオヤが魔道具に関心あったの分かっていたから準備してあるよ!ほら、僕が書いておいた魔道具作りの入門書!」


 ハルお手製の入門書…前回の魔力に関しても凄まじい分かりやすさだったことから今回も俺専用に分かりやすく書いてくれたってことなんだろうな。ハルの多才もさることながら教え導く上手さに感嘆させられる。



「本は後から読んでもらうとして、まずは簡単な魔道具について説明するね!必要な物は魔石と木や金属、魔物の素材など刻めるものが一般的かな。

 魔法を使うより魔道具を作るほうが専門的な知識が必要なんだよ。なぜなら魔法ならイメージである程度補完できるものを全部指示として刻まないといけないんだ。物を浮かせるのにもどの高さまで、どの位のスピードで、いつまで浮かせるかとか。」


 ハルが空中になにやら文字らしきものを書きだしていく。ほんと難しそうだなこれ…そう考えると本から入るより実際に目で見るのも重要なんだなと再確認した。


 俺がそこまで理解したのを確認するとハルは続きを話し出した。


「一応、今浮かべている文字が魔道具に刻む刻印になるんだ。まぁこれは人によって書き方も変わるから効率の良い書き方しないと大変な作業になるんだよ。」


「向こうの国でいうプログラミングみたいだな…あれも複雑にならないようにスッキリさせたほうが良い気がするし。ハル、その刻む作業って魔法を使って出来ないのか?判子みたいに押印出来たりは…」


「そのあたりは研究したこともあったんだけど均一の素材を用意できたならって自動化できるって結論になったよ。魔法で刻むのは高い技術が必要だから普及となると現実的ではないんだよね。出来る人にそれだけずっとしてもらうわけにはいかないし。」


 すでに色々と試した後なんだな…俺も探索しているが同一の素材を見たことがない。形、色、状態など全て違うしな。自動化できたら魔道具の値段を抑えられて大量生産が出来るんだろうがそれによって起こる弊害も多そうだ。そういやゲームの説明に機械類は再現できませんってあった気がする。銃火器や自動化に機械は無理ってことでもあるわけか。


「ナオヤの考えている通り自動化することの弊害も多いから無理に変える必要がないってのが本音だね、理解もせずに使う危険性が増すのと就職先の斡旋、輸出等々…」


「なんとまぁ…便利にするのが国の為になるわけじゃないって事でもあるんだな…そう考えると魔族の指導者は上手くバランスを取ってるな…ってハルどうしたそんなだらしない顔をして。」


「えへへ…な、なんでもないよ!とりあえず魔道具に関してはこんな感じ!じゃあ実際にナオヤが刻んでみよう!この木片に浮かばせる刻印を転写したから!ほらほら!」


 渡された木片は手のひらサイズでびっちりと転写された刻印が淡く光っている。え…こんな小さいのに刻んでいくの?そう思いハルの顔をみるとニヤニヤ笑っていた。


「自動化は色々と問題があるけど、利便性を考えると小型化は必要だよね!」


「えっと…ハル、彫るのは良いんだがもしやこのナイフで…?」


「ん?そうだよ、まぁ確かにこれは一般的なナイフだけど魔道具師によっては色んな素材で作られたナイフを使ってるかな。素材によって変えるんだ。金属によって柔らかさが違うから合うものを選ぶんだよ!ちなみに魔石にも純度があって魔道具の性能に大きく影響を与えるんだ。色が濃いほど純度が高いんだよ。」


 あぁ…そうなのか。これは現実の方から改善できそうなことだな。


「とりあえずナイフで今回は頑張ってみるよ。ただ、外国では彫るための道具ってのがあるんだ、こう…こんな感じの。」


 俺は向こうで普及している一般的な彫刻刀の形を絵に描き、ハルに見せた。


「へぇ…向こうではこんな道具あるんだ。持ち手は木、刃の部分は金属…素材によっては木じゃ負ける場合もあるけど刃の部分を取り外し可能にすれば…うん、これなら魔道具作りが楽になるね!劇的に変わるわけではないけれど魔道具師の負担は減るしいけそう!ナオヤ、凄いよ!」


「いや…俺は元々あるものをハルに見せただけだから…凄いのは最初に発明した人だよ。」


「この国ではナオヤが最初だからね!これ、僕が商品化しても大丈夫?」


「ん?いいんじゃないか?」


「そう…それなら僕が形にしたものを商会にもってくよ。ナオヤが3割、僕が2割、商会5割でどう?」


「え、いいのか?俺はただ提案しただけだぞ?」


「この国では初だしナオヤに特許がいくからね。魔道具作成の補助としてもかなり優秀だから広まるのが分かるものだからね!あとは刃を研ぐ必要や消耗品ということで永続的に売れるし。」


 魔道具作りに関して教わっているはずなのだが、なにやら大事になってしまった…と、とりあえず今はこのナイフでハルが刻んでくれた刻印を彫っていくか。

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