第41話
今日の講義は初っ端宗教学ですごく眠くなったがなんとか耐えられた。宗教関連の話ってゲームにも思想にも影響を与えるものだと思うし、色々な思想が交わるかみ転にも応用できそうだからだ。
しかし…ゲーム中心の考え方になってきてゲーマーの事をとやかく言えないな…ま、どんな些細な事でも捉え方次第で色々と応用が利くってことはその活かし方を学ぶチャンスともとれるから悪い事ではないか。
それだけかみ転に嵌っているんだろうがリアルに及ぼすVRの影響が問題視されるのも理解できる。成人向けのゲームだがこれだけ影響があるんだから幼少期からやっていた場合を考えるとぞっとする…しかも加速空間だった場合は見た目と精神の乖離がすごそうだ。
あと残っている講義は1つだけなんだが、3人娘も同じ講義を取っている。講義室に入るとテンションが異様に高い坂田さんとは対照的に飯塚さんと高杉さんは机に突っ伏していた。高杉さん…そこ俺の座る場所なんだが、どうしよう…
呆然としていると坂田さんがこちらへ気付き、手招きをしてくれたのでとりあえず向かってみることにした。
「やほ!早く講義終わらないかなー!」
「坂田さんどうしたんだ?何かいい事でも?」
「そうそう!なんと、なんと!第2陣に当選したんだ!これで獣人族で始められるー!」
な、なるほど…だからテンションが高いのか。しかし、じゃあなんで2人は暗い感じなんだろうか。
俺の視線に気づいたのか坂田さんが説明をしてくれた。
「あぁ…彩は単なる寝不足。まるで奈央がかみ転始めた時と一緒だね!奈央はなんか種族のほうで問題があったらしいよ?」
あー…やっぱ高杉さん夜更かししたのか。それと人族側で問題?確かに人が増えると問題が出ると思うけど一人一人に招待枠があったわけじゃなく種族事に何人ってなっていたから本番は今日だと思うんだが。とりあえず、狭いが高杉さんが座っている横にちょこんと座っとく。
「高杉さん、昨日注意したのに遅くまでやっていたの?」
「買った本を読み始めたらキリが悪くて…そのまま全部読んじゃった…」
そんな俺達の様子を見ていた坂田さんが茶化してきた。
「お?なになに?なんか二人とも距離が近くない?」
「席を取られていて少しだけ座っている状態だから物理的に近いぞ?」
「いや、そういうんじゃなくて。んまぁそう言う事にしとこう!うん!」
ん?何か良く分からんが納得しているようだからいいか。隣で突っ伏している高杉さんの耳がちょっと赤くなっているんだが風邪か?
「あぁ…青木君こんにちは…」
「種族で何か問題があったみたいだが大丈夫か?」
「よくある人間関係かな…紹介で増えた人達が拠点近くで狩場独占するのは別に良いんだ…私のPTは次の所で活動しているし。でもMPKは止めて欲しい、せっかくスキル育ってきているのに死んだら嫌だし。擦り付けてきたPTは悪びれなく「集めてきてやったんだから感謝してほしい」とか言い出すし、倒したら「ドロップ品はこっちに渡せ」とかさ…」
なんというか酷すぎるな。人が多いのも困るんだが、この調子じゃ今日から始まる第2陣が合流したらどんだけ世紀末感漂うんだ…?それにしてもやっぱ戦闘していたらスキルの育ちがいいのか?
「それは災難だったな…関わらないようになるべく奥側で活動したほうが良さそうだ。結構スキル育っているのか?」
「うんうん、今70まで上がっているよ!まぁ何度も死んでやっとここまで来たって感じ。でも慎重になりすぎて全然狩れてないんだよね…」
え…70?もしかしてスキルレベルの上がり方が人族は分かっていないのか?それでよく防衛成功したな…俺が驚いたのでその様子をみていた高杉さんが耳打ちをしてきた。
「というか普通にスキルが育っているのは直哉君だけだよ。でも、これってかなり不味いよね?」
耳が擽った過ぎる!初めて耳打ちされたんだが背筋がぞくぞくする。これ、顔を高杉さん側に向けるとすごく近くて気まずくなるやつ!俺はちょいと顔を離し相談した。
「流石に教えたほうがいいよね?種族の足並みそろえて進まないといけない感じがするしさ。大胆に狩れなくて進行が停滞しそう。」
俺が小声で聞くと高杉さんもほっとしたのか小さく頷いてくれた。流石に友人のこんな姿を見るのは忍びないもんな。
「飯塚さん、残念だけど多分それLv70って事じゃないと思う。Lv0の熟練度70って事。100まで熟練度が溜まるとレベルが1増えて、連続で死ななければレベルが下がる事はないかな。まぁ使わないと少しずつ熟練度が落ちてレベルが下がるみたいだから気を付ける必要はあるけど。」
「えぇぇぇ!?うそ!?そうなの!?」
俺と高杉さんはそろって頷いた。Lv1までは自分に合ったものならすんなり上がるから高杉さんもそこまで上がったのかもしれない。
「あと、自分の性格に合ったものだと伸びが良いってのもあるぞ。まぁ、戦闘スキルとして1個は欲しいからしっくりくるものを選ぶべき。」
「そ、そうだったんだ…掲示板で検証班が違いはないっていってたのに!」
「検証することが多すぎて適当になっているのかもしれんな。俺はそこまで戦闘しないから育ってないが槍はLv2ってとこ。」
「そんなシステムになっていたんだね…全然しらなかったよー…」
「というより、人族で熟練度が100になった人がいなかったことにビックリだぞ?いくらデスペナがあってもそれだけ人数が多ければ合うスキル持ってる人だっていそうなのに。」
「掲示板に書かれたことを真に受けたり、新しいこと発見するより既存の情報で済ませて先へ進もうって雰囲気だったから…」
そんなことを話していると坂田さんが目をキラキラさせて話に混ざってきた。
「そ、それって第2陣でも追いつけるって事だよね!?やった!」
「あー、確かにそうかも。獣人族は防衛上手くいったって話だからもう既出の情報かもしれないが。」
「上手くいった魔族も浸透していないから獣人族も知らないかも?」
ゲーム内で情報は転がっているのに逆になぜ知らないのか不思議だよな。規制されているわけじゃないし、人に聞けば教えてくれるのにな。
講義が終わり、直哉が帰った後に3人はそのまま話していた。
「それにしても、スキルのレベル上げにそんな仕組みがあったなんて…でもほんと助かったよぉありがと彩ちゃん。」
「ううん、私も知らなかったからビックリした。」
「いしし、これで私も活躍できそうで助かったよ!それにしてもこんな爆弾情報持っているとは青木君凄すぎっしょ。」
「ゲーマーの基本行動を知らないからこその発見の仕方だったのかも?」
「メンターとして昨日はしっかり教えてくれて助かった。スキルレベル以外にも色々と小技があるんだけど広めていいのか分からない。」
「あはは、流石にそこまで教えてもらうのは悪いから大丈夫!少し違った行動やゲームを楽しむプレイスタイルをすれば分かるって事だよね?」
「うん、そんな感じ。向こうで生活しているって考えるといいかも?」
「おぉそれはかなりのヒント!それより、昨日は一日中一緒だったんでしょ?仲は進展したの?」
「そ、そんな大したことはなかった。丁寧に一つ一つ教えてもらったし、第2陣は初期アイテムが第1陣に比べ少ないみたいでメンターにかなりお世話になる仕様だった。日常の服から装備、寝間着まで整えてくれたよ。」
「わ、わ!すごい!いいなぁ、そう考えると招待枠って羨ましいね!」
「リアルな世界だから汗や汚れ、空腹とか疲労が可視化されるかもと言ってたから替えの服やインナーはあるといい。」
「そうなんだ、確かにリアルだからこそ必要になりそうだね。も、もしかして下着も見繕ってもらったの?」
「お?そのあたりどうなの彩!?」
「そ、そんなこと、教えられない…」
その後も彩は質問攻めされるのであった。