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第39話

「よし、ここが薬草の群生地だよ。街から一番近くて街道沿いに行けば魔物と出会いにくいから一人で素材を採りに来るのも楽なはず。」


 俺は街から一番近い群生地に案内を終え、まずは採取の仕方を教える事にした。


「薬草の採取は教えられるが他の素材についてはギルドの資料室や受付で分かるから割愛するぞ?薬草は根元から丁寧に土を掘り起こして筋を傷めないように優しく採取、根についている球根を植え直して群生地が枯れないようにする。これはマナーの問題な?」


 俺が説明をしながらゆっくりと作業を見せる。サイは教えてもらっていることを一言も逃さないように聞いてくれているので教えがいがある。…大した事じゃないけどな。


「きちんとした採取方法があるんだ…資料室使えるようにギルドの依頼をこなさないと情報開示されないってこと?」


「多分そうじゃないか?俺はなぜか早めに見せてもらえたが…まぁ誰も採取系の依頼をしていなかったから貢献ポイントというのが高かったのかもしれんな。サイも一人で採取しにくるかもしれんから実践してみよう。道具は俺のを貸すから。」


そう言い、俺はかばんの中からスコップを取り出し手渡した。


「採取道具も道具屋で売っているから自分が必要そうなのを揃えるといいぞ。」


 サイは黙々と教えたことを振り返りながら作業を進めている。というか、第2陣が来たというのに採取しに来る人がいないのはどういう事なのだろうか?もしかして魔物を倒したらドロップするとでも思っているのか?流石にそれはないか…第1陣がそれくらい教えているだろうし。


 

 30分ほど、サイは採取をしていたが疲労の色が見え始めたので休憩を勧めてみた。 根をつめてやることでもないからな。


「はぁ、はぁ…い、意外と大変…な、作業だね…」


「リアルでも園芸や農業は大変って話を聞くからな…スキルが覚えられたら一気に簡略化されるぞ?ただし、簡略化は採取したやり方を自動登録されるから間違った方法で採取したら素材が劣化するから注意な。」


「そ、そこにもシステムの罠があるの…?知識は力なりってやつね…あ、なんとか採取のスキルが覚えられたみたい、よかったぁ…」


 サイは覚えたばかりの採取を試して薬草を採っているのだが、その楽さに一喜一憂している。


「薬草はそこまで香りが強くないから良いけど、物によっては風向きに気を付けないとだな。っと俺も少し採取していくか…」




「とりあえずこんなもんで大丈夫かな。採取したものをギルドに提出すれば完了だ。あと、群生地の状態も報告すると探索者に情報を共有してくれるから怠らないように気をつけろよ?採ったら自然と生えて来るだろうってわけじゃないんだし、新芽を摘まれても困るから。」


 採取しに行ってまだ育ってない状況になったらがっかりするしな…自分がされたくないからきちんと報告しておきたい。


「探索者としてしなければならない事多いね…でもチュートリアルではその辺り言われていないのが気になる。」


 確かに俺も言われていないな。冊子貰って、採取の方法を聞いたときに教えてもらえたってくらいだし。


「貰った冊子をよく読めば書いてあるのかもな。あとは採取依頼を受けた人に教えているのかもしれん。ま、分からなかったらベテランに聞くっていうコミュニケーションをとれって事だと思う。」




 俺達は今度は森を突っ切らず街道沿いを通り、街まで戻った。途中、新人らしい探索者の集団とすれ違ったのだが皆満身創痍という風体だったのが気になる。メンターがいるわけじゃないしどうなっているんだ?


「ギルドで報告してみようか。今の時間帯は混んでいないしな。ギルドの受付は基本早朝と夕方が忙しいから急いでいないなら時間帯をずらして依頼を受けたり報告するといいぞ。常設依頼は受付じゃなく向こうの依頼板に張ってあるからチェックするのもあり。常設依頼以外は期限があったりするからそこは注意な?」


「わかった。チュートリアルで教えてもらったランクの上げ方が良く分からないんだけど、依頼を達成していけばいいの?」


「いや…生存率と探索深度って聞いた。無謀な挑戦をして死亡しまくると信用度が下がるって事じゃないか?あとはランクごとに必須の技能がありそう。戦闘力だけ、知識だけでは俺だって信用出来ないし。パーティ単位でのランクってのなら大丈夫そうだけどな。っと受付の人が見てるから向かおうか。」


 俺はサイを連れ立ってアーテルさんの所へ向かった。


「ナオヤ、今日は新人さんの案内?」


「アーテルさんこんにちは。こちらは同郷のサイ、これからお世話になると思うからよろしくお願いします。」


「あ、あの。よろしくお願いします…ナオヤ君って結構顔広い?」


「いや、それはないだろ。素材採取しかしていないし奥地まで行っているわけでもないから。」


 そうやって否定したのだがアーテルさんが首を振って答えた。


「街への貢献度だけでもかなりのもの。それに人当たりもいいし他の人が受けない依頼をやってくれている。優良物件。」


「…そんな話初めて聞いたんだが。自分に見合った依頼を受けているだけだぞ?考えて受けているわけじゃない。」


「それが重要。自分の力量を見極めるのは探索者として必要な能力。」


 復活できない住人からしたらそれが基本なんだろうな。プレイヤーはそのあたり慎重になる必要がないが…ランクアップの条件に引っかかるんじゃないか?


「へぇぇ。ナオヤ君有名人じゃん。しかも可愛い子ばかり親しくない?」


「いや、それは偶然だろ。それより依頼報告してくれ。」


「あ、うん。えっと薬草5本1セットで3束あります。」


 サイは藁紐でまとめた薬草を提出した。


「…うん、品質にも問題ないのでこの番号が呼ばれたら清算所で受け取ってください。」


「師匠の教えがいいからだね。品質が大事ってなると魔物の倒し方にも工夫が必要になりそうで大変かも…」


「そうだね。皮が取れるならボロボロにされてもギルドとしても高値で買い取れない。…ん?どうしたの?」


 隣の受付でペルルさんが慌てているのに気づいたアーテルさんが声を掛けた。


「期限が今日までの依頼を受けた探索者さんがまだ戻ってこないんです!依頼者がもうすぐ現れるというのに…」


 期限を守らないと間に入っているギルドとしてもめんどいんだろうな。だからこそ信用度や依頼達成率でランクが決まっているんだろうが…


「ギルドで予備があるものではないの?」


「レア品の琥珀を3つもありませんよぉ!あぁぁやっぱり拒否すればよかったです…今まで何度も依頼を放棄してきた人なのに報酬が美味しいからって!」


「その人のランクダウンと戻ってきたときに衛兵へ連絡。依頼者へは探索者から違約金を巻き上げて対処。」


「ちょっといいか?」


 俺は2人の会話に入り、前に伐採した時にとれた琥珀を3つカウンターに載せた。


「他の探索者が渡してもいいかわからんが依頼者へはこれで対応することが出来るか?探索者が琥珀を持ってきて余るならギルドで予備として取っておくのもいいし。」


 そう話すと2人は頷いて対処を決めていく。


「ナオヤ君、いいの?希少なんでしょ琥珀って。」


「偶然の産物だし俺も使い道がないから、それなら役立ててもらったほうがこちらとしても助かるし。」


 サイはもったいないって顔をしたがこのゲームの生産系はリアルと変わらないことを思い出し、それもそうかと小さく呟いた。


「ま、プレイヤーの不手際が原因っぽいからな。ギルドに迷惑かけられて全体の評価が下がっても困るし。」


 俺は肩をすくめながら人数が増えると問題が浮き出て来るなっとサイと話して清算待ちの間食堂へ向かうのだった。

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