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第36話

「それで、住民達に混乱は見受けられないんだね?」


「ああ、受け入れはスムーズに出来ると思われる。前回の事も踏まえて注意喚起をギルドに頼んであるしな。」


「食料も防衛戦で十分に確保することが出来たから問題ないわ。日持ちする燻製を多めに作ったから外国の人々が成長してギルドに卸してくれる生肉で回ると思うわ。」


 僕は一息ついて他に問題がないか考えた。一応、女神様に人数の許容量を提示したけどどうなるやら…人族のようにいっぱい来られたら破綻しちゃうからね。


「実際に会ってみてどうだった?グル、それにジル。」


「私が見たのは防衛後の素材引き渡しと打ち上げだけだから何とも言えないわ。ただ、学ぶ姿勢は好感が持てたわね。逆になんで他の外国人が打ち上げに参加させないのか不思議だったわ。」


「俺もそれが不思議だったな。最初は目立ちたくないから他の奴らと行動しないんだと思ったが、打ち上げですら疎外されるとは思わんかった。あいつ自身、やましい所なんてないのにな。」


 まさか他の外国人からそんな扱いされているなんて…初めて知ったよ。こればかりは僕が手を出したら拗れてしまうだろうし…


「今回の人数増加で近しい者が来てくれるんじゃねえか?徒弟制度もあるんだろ?」


「そうだね、それでナオヤの親しい人が来てくれたら孤独に感じないよね。ほんとは僕が付きっきりで一緒にいたんだけど。」


「オージュ様にそんなことされたら国が破綻しますわ…見た目に反して仕事と政策は優秀なのですから。」


「し、仕事に見た目は関係ないよ!」


「ハハハ!オージュ様が心配しているのは恋人を連れて来るんじゃないかってとこだろ?」


 言われたことが図星だったため、ハルは恥ずかしそうに顔を赤らめグルを睨みつけた。


「ま、功績である程度の地位まで上がれば重婚出来るし問題ないだろ?あいつなら必ず上がってくるだろうしな!」


 そうだけどさ!魔族って魔法生命体も死霊系もいて肉体がない種族も多かったり生殖活動がなかったりもするんだよね、死霊系でも魔力が高ければ物質化できるけど。

 人族や獣人族、エルフ族は男女の割合が半々だけど魔族は女性に片寄っているし、前の世界から移住する際に多くの男性が犠牲になったから魔力の高い男性はとても貴重で今の魔族は肉食系の女性が多数占めているんだけど…ナオヤ大丈夫かな?





 大学が終わり高杉さんとログイン時間を合わせ、かみ転を起動した。キャラ作成は長くかからないだろうがその後にチュートリアルがあるしギルドの外で待っていれば大丈夫か?たしか隔絶したチュートリアルから戻ってきたのは外に出たらだよな…?

 とりあえず連絡待ちの間にメンターとして弟子の装備を見繕っておくか。確か生産職を目指すと言っていたから自分の装備はそのうち自分で作るだろうから防具というより普段着のがいいのかもしれん。初期費用だけでは食事代と宿代を確保すると装備に回せる金額がほぼないからな…


 キャラメイクで身長は変化しないので服屋で店員に見繕ってもらうことにした。身長と見た感じの体型を伝えると白いワンピースと黒いホットパンツ、そしてなぜかインナーまで準備してくれていた。まぁ…確かに下着の替えは重要だけどさ…女性店員さんそれでいいのか!?好感度が高いのか女性物の服を買っているのに何も言われないんだが!?流石にブラまではサイズ分からないのでスポブラみたいなものを準備してくれた。なんかこれだけでも疲れたぞ…


 服を買い終わったところで高杉さんから連絡が来たのだが、ギルドの1室を借りているので来てほしいという内容だった。んー…チュートリアルの内容が変わったのか?もしくはメンターシステムの実装でなにか説明が入るのか?



 ギルドに着いてアーテルさんに事情を説明すると一室に案内されたのだが、どういうことなのか聞いても見たほうが早いとしか教えてくれなかった。


 扉をノックして、高杉さんからの返事を待ってから開けてみるとなぜか物陰から顔だけ出している高杉さんがいた。


「えっと…これはいったいどういうことなんだ?っと、ゲームの中ではナオヤって呼んでくれ。」


「私はサイって付けた。あ、あんまり近づかないでね…」


「それじゃなんも分からんのだが…顔見るかぎり人族ぽいのになったんじゃないのか?」


 俺がそう言うと、サイは意を決して全身を見せてくれた。その姿は股間と胸の大事な所、手の甲に毛皮が生えており、爪が尖っていて、足も獣のようになっていた。そしてよく見ると頭には犬のような耳も生えており、恥ずかしいのか胸と股間を手で隠している。


「うわぁ…それはすっごい恰好だな。ってすまん、あんま見ないほうがいいよな。それにしても…初期装備は配布されていないのか?」


「なかった…毛皮が初期装備扱いされているみたい。ナ、オヤ君なにか着る物ってない…?」


「一応さっきメンターとして何かプレゼントすべきかと思って服を買ってきたんだが図らずもちょうど良かったんだな…」


 俺は後ろを向きながら買っておいた服を手渡し、声を掛けてから一度部屋の外へ出た。流石に見ていなくても女性が近くで着替えると意識してしまうからな。




 しばらくすると中から声がかかったので部屋の中へ入ると、刺激的な恰好から日常的な姿へと変わったサイがいた。


「身長とある程度の体型を伝えたんだがサイズは問題なかったか?」


「問題ない。少しなら自動調整かかるみたいでピッタリ。ただ、服の中の毛がごわごわするかも…現実では毛がなかったから違和感凄い…」

 

 後半、声が小さくて聞き取れなかったがサイズは大丈夫なようだ。防具となると自動調整が全くないから金属製のものはオーダーメイド品で、しかも自動装備なんてないからフルアーマーとなると一人で着る事も出来ないんだよなこれ…皮鎧や胸当てなら平気だけどな。そもそも重装備で動きが疎外されないスキルを持っていないと重くて動けんだろあれって…

 

「なんか獣人族っぽいけどなんの種族なんだ?」


 サイはステータスを呼び出し確認した。


「魔狼ってなってるけどこれ、フェンリルの事?」


「思いつくのはそれくらいだから合っているんじゃないか?まさか魔族なのに獣とはすごいな…恰好もだったけど。」


「い、言わないで…恥ずかしい。」


 サイは耳まで真っ赤にして俯いてしまった。


「と、とりあえず街を軽く回って見るか。必須なとこから見ていくが…なにか希望ってあるか?」


 そう聞くとサイは少し考えるような素振りをしたが思い当たらなかったのか首を横に振った。


「なにから手を付ければいいのか分からないからナオヤ君の必要だと思う所で大丈夫。」


「んじゃま歩きながら近いとこから説明していくな。まずすぐ右側に行ったところにある宿屋。向かい側にあるのが男性が良く使う宿の小鳥の止まり木亭、こっち側にあるのが女性に人気の潤う若葉亭だからサイはこっちを使うといいぞ。」


「装備じゃなく宿?奈央は使ってないって言ってたけど。そんなことに初期費用使うなら装備整えたほうがいいんじゃないの?」


「いや…他のゲームでよくある満腹度や活力度、疲労度というステータスに載らない所で恩恵があるっぽいんだよ。そのうち実装するんじゃないか?見えないほうがリアルでいいけど。」


「そうなんだ…なんで他の人は知らないんだろう…」


「ハクスラやローグライクと思っているからじゃないか?ああいうゲームは関係ないからな。ちなみに俺が体感した恩恵はスキルの習得と熟練度の上昇速度だな。食事と睡眠をきちんととれば数回狙って行動すれば覚えるぞ。ただし、自分の得意な傾向によって上昇速度は変化するから注意な?」


「…なにそれ、そんな情報知らない。魔族では一般的なこと?」


「いや、知らないんじゃないか?俺が体感で感じたことだしわざわざ他の奴に教えるようなことでもないだろ?その辺は検証班という奴らがどの種族にもいるだろうしな。」


「…ナオヤ君ってゲームのセンスあるじゃん、ビックリ。それなら装備に初期費用当てるより食事代や宿代に当てたほうがいいね。」


 師弟関係を上手くやっていけるか不安だったが、なんとかサイを導く事が出来たようでよかった。ま、俺の知っている事なんて少ないから困ったとき相談に乗るくらいの立ち位置がいいだろうな。


 俺は女性に人気の宿屋の前までサイとともに歩いていった。

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