第33話
ゲームの中で気持ちよく快眠出来た為かログアウトしてからも体の調子がやけに良く感じる。前回、ナイトバットを討伐した後にログアウトした際は疲れ切っていたのに…ゲームの中での状態が影響受けているのか?…さすがにそれはないか、精神的充足感ってやつがあるんだろう。
講義は話の前後が繋がりにくかったり板書が飛んだりするから後からまとめたりするから寝ちゃうんだが、ゲームで探索や屋外活動に力を入れていくとなるとサバイバル知識が必要になる可能性があるので図書館に通わないといけないかもしれない。
今はソロでキャンプをしたりするのも流行っているし、昔から登山や無人島での過ごし方などもあるので調べれば色々と出て来るんじゃないか?
後は…やっぱり採取できるものを増やせるといいんだろうな…ゲーム内の採取できるものの図鑑はあるだろうが、こちらの食べ物と似通ったものがスルーされている可能性もあるし、どういう所に生育するのかは当てになろうだろう。俺は一人暮らしだからある程度自炊出来るが、サバイバルとなると水の確保、野生動物の対処、天候による対応などは覚えなければ。ちょいと活動サイクルを見直そう…
「あ、青木君おはよう。魔族、防衛戦クリアおめでとう!」
講義室に入ると坂田さん、高杉さんと話していた飯塚さんから声を掛けられた。
「おはよう、俺は裏方担当していたから詳しくないけどクリアしたね。ありがと。そう言えば人族はどうなったの?」
俺は1年の時に単位を取れるだけ取ったので2年目は休みの日を作っている。20歳になったんだし教習所へも通うことを考えているからな…そして昨日、人族はたしか防衛戦のはず…
「あー…今回はちょっと息が合わなくてクリア出来なかったの…でも!次は今回の反省が活かせると思うよ!それに、掲示板で魔族の人達が戦闘に関して書き込んでくれたの。」
「あーしらもかみてんの全種族掲示板は見るだけなら出来るから見たんだけど、齟齬が見受けられるんよね。」
「分かりやすいのは魔族では補給品装備がある、人族はない、修理無料と素材必須ね。」
坂田さんと高杉さんが魔族と人族の違う所を上げてくれた。それを聞いた俺は、もしやと顔色を変えたんだが、それを坂田さんが気づいてしまった。
「ん?青木君もしやなにかしってるのかにゃ?お姉さんに言ってみ?」
「んー…多分あれかなって思うのはあるが…確証があるわけでもないし、掲示板でその辺りのことが話題になっていたなら理由とか分かるんじゃないか?」
俺は掲示板を見ていないからどういうことになっているのか分からん…そもそも、俺がしたこと以外に他の人だって色々としていただろうからな。MMORPGなんだし一人だけでなんとかなるものじゃないだろう…
「それがね…掲示板に参加していた魔族の人達は知らないみたいなの…NPCの人達からそんな手厚い支援があるのにビックリしたんだから…」
「うーん…ただ、条件がそもそも違うから正解が分かりにくいって気もするな…人数が少ないからNPCの支援があった可能性もあるし…」
「確かにそうね、あーしらは掲示板の事しかしらないけどフィールドは人数の相乗で難易度が上がるんでしょ?それが防衛戦ではある程度影響を受けないってことを考えると人数多いほうが有利だもん。あーあ、青木君が何か知っていたら奈央が色々としてくれたかもね!」
坂田さんの言葉にビックリして俺はつい飯塚さんを見てしまったのは仕方ないと思う。まぁ、飯塚さん自体は顔を俯かせて坂田さんに抗議しているから教えてくれたら儲けものってことなんだろう。
「防衛の時も俺は戦闘していないからな…支援が薄かったってことを考えると色々と分かるんじゃないか?例えば修理素材が個人持ちなら納品依頼をこなしていないとか、支給装備が配備されていないなら街にお金を落としていなくて財源がないんじゃないか?」
とりあえず、こういうのは比較から分かる情報で整理するのがいいだろう。
「ほっほーう…奈央、実際に人族は納品とか装備購入ってしてたの?」
「ううん、薬くらいなら買うけど大量には買わないかな…死んだらロストしちゃうし。基本的に装備はドロップ品のが優秀だから買うまでもないし。こう考えると確かに街に卸していないね…」
「その様子じゃ討伐依頼ばかりしてるんでしょ?それならNPCから支援がなくて当然な気がするよ!」
「やはり裏方は優秀。目立たない事だけどやらないのとやったのでは結果が違う。」
坂田さんと高杉さんが人族のプレイスタイルに関してボロボロに言っている。まぁ俺からしてもなぜそんなプレイをしているのか謎だけどな。RPGってだけで考えると敵を倒して装備を購入もしくはドロップ品なのは分かるんだが、これはMMOで自分のみじゃなく他のプレイヤーやNPCとの交流も前提にしているんだからそこも考えてプレイをしないといけないはず。
特に最近のゲームはゲーム内でも流通があり、AIに感情があって好感度もあったりするからなぁ…
「私は青木君が防衛時なにをしていたのか気になる。戦闘は掲示板に上がってくるけど裏方は分からない。」
「あーしもそっちのが聞きたいかも!獣人族もエルフ族も防衛戦が開始するって状況になってるんよ!」
「うぅ…人族もまた防衛戦開始出来るようになってるから頑張らなきゃ…一番遅れちゃう…」
人数が多いから逆に大変ってのはありそうだよな…クラン単位で動くにしても全体の命令系統をまとめないと包囲の穴が空いてしまうし。そう考えると魔族って悪くないんじゃないかって思う。
「ん-、単に防衛拠点の壁建てたり拠点内に足場を作って遠距離攻撃をしやすくしたりしてたぞ?」
「え?その辺りも自分らでやる必要あるの?そんな話ぜんぜん掲示板で上がってなかったよー?」
そうなの?と高杉さんに視線を向けると頷いていた。
「どんな敵がどのくらい攻めてきた、最後に大きいのが1体でてきたとかそのくらい。人族も魔族も変わらない。」
「そうそう!どの位の人数を四方に割くかーとかそんなのばっかり!」
「人族は主張が激しいグループが多くてその辺りうまく行かなかったんだよね…1回崩れたら装備を時間内に回収して拠点にもどっての往復でどんどん拠点に魔物が近づかれちゃって…」
そりゃ防衛出来んな…やはり死に戻りからの復帰者が自力で回収出来る状況のが崩れにくいし。
「しかも拠点の壁も紙みたいにすぐ溶けちゃってね…青木君が言ったみたいに自分達で防御をあげないとダメなんだね…」
「それと足場を内側に作るのもでしょ?NPCが攻撃に参加しなかったのは内から援護することが出来なかったからじゃない?」
「あ、それもあるのかな?ううーん…こう考えるとほんと戦闘以外にも人割かないとダメなんだね…」
「まぁ、これが正解か分からないけど支援は受けれるんじゃないかな?俺としては早めに防衛戦をクリアしてもらって人族の話聞きたい。」
「が、頑張るよ…」
その様子を見ていた坂田さんが飯塚さんに抱き着いて励ましている。あ、そうだ…いつになるかは聞けなかったけど、とりあえず高杉さんに言っておくか。
「高杉さんちょっといい?」
「ん…どうしたの?」
「近々、第2陣もしくはフレンド枠で招待することが出来るかも。」
俺がそう言うと高杉さんは驚いて詰め寄ってきた。
「ほ、ほんと?」
「あぁ…防衛戦で解体された素材を増える人口の為に使うってのを聞いた。それに初期街と防衛拠点の2か所活動する場所ができるから空白地帯を作りたくないんじゃないかな?招待出来るようになったら教えるね。」
「ありがとう!嬉しい…もっと後のほうになると思った…その条件を聞くと全種族防衛戦クリアなのかも。」
あー確かにそうかもしれん。とりあえず、俺達は他種族を応援しよう。
「まぁ、そう言う事だから。それじゃそろそろ講義始まるし席に着いたほうがいいぞ?」
俺は興奮したためか距離感が近い高杉さんから離れ前を向いた。高杉さんの容姿ではそこまで苦手意識はないんだが…こう、女性らしい匂いがすると意識してしまってな…これもいつか治るんかねぇ…