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第27話

 ギルド内にはこれから鉱山に行くのが分かる服装をした集団が数多くいてビックリしてしまった。とりあえず、今日から防衛戦が始まるので護衛任務を受けて荷台と一緒に移動しなければならないので受付に並ぶ。



 今日はアーテルさんのところが比較的空いているのでそちらに。


「こんにちはアーテルさん。拠点を構築する荷物の運搬護衛の依頼を受けたいのですが、大丈夫ですか?」


「ナオヤ久しぶり…私の所に普段から並んでも良いんだよ?」


「いやぁ…前に対応してもらってからアーテルさんの列が伸びてて並びにくくて…そ、それより依頼!」


「大丈夫、ちょうど1枠空いている所があるから。30分後に門前に集合だから遅れないように気を付けて。」


「…条件を言ったら少しは融通してくれるか…?前のことがあったからなるべく女性とは一緒のPTになるのを避けたいんだ。」


 俺が少し迷って相談するとアーテルさんは分かっているとでも言いたげに頷いた。


「平気だよ。そう言うと思って男性のみ、あと外国人のいない護衛隊だから。」


 ある程度、俺達プレイヤーは各護衛隊へ均等に配当されると思ったんだが…俺の配属される場所は違うのか。


「…外国人が現れた時、時間帯的に広場で絡まれていたのってナオヤでしょ?だからあまり一緒にすると居心地悪いかなと思ったんだけど余計なお世話だったかな?」


 まぁ、確かにそれは俺だな…プレイヤー全体と仲が良いというより唯我独尊で全体の輪を乱しているのが俺だからそう見られるのも仕方ない…か。


「いや、余計ないざこざが絡まない配慮助かるよ。それじゃ俺は時間をつぶし「待って」に?」



 俺が受付から離れようとしたらアーテルさんに呼び止められた。今日はやけに呼び止められるな…あ、ハルに言われていた用件があったか!


「鉱山の安定化に貢献したナオヤに報奨が出てるよ。ナオヤ以外の人にもきちんと褒美は渡っているからちゃんと受け取ってね。」


 そう言ってアーテルさんは一枚の紙とペンを差し出した。えっと何々…

 はっ??毎月鉱山の総利益から5%を報奨にするって!?ギルドにいた鉱夫達が納品していったらそれだけでお金が増えるの?しかも横穴の安全性が取れたってことは新たな鉱脈が発見される可能性があるってことだよな?なにこれ。


「やはりそうなりますよね。しかし、これは決定事項なので諦めてその書類の下にサインをしてください…」


 アーテルさんもこの書類を読んだのか、そりゃよく分からんよな。討伐報酬とかでお金を渡すんじゃなく、定期的に収益がもらえる契約なんだから。


「ちなみに、俺以外の奴らは何を貰ったんだ…?」


「金貨で20枚ほどですね。当分鉱山に篭らなくても生活できるほどですが、鉱脈を当てようとしているのでかなり活気があります。」


 俺もそれでよかった気がするんだが、どこで違いがでたんだろうか?指揮か…?まぁ…ハルの言っていた表彰とかが無くなったんだし文句を言ってはダメだろうな。そう考え、俺は書類にサインをした。


「はい、受理しました。…ナオヤ、あまり無茶はしないでね?これで無理しなくてもお金は支給されるんだし…」


 仕事モードから通常モードに変わったのかアーテルさんが心配してくれた。俺としては無茶をしたくてしたんじゃないんだが…これからはもう少し気を付けて行動することにしよう。

 

 鉱山の横穴というフラグが立っていたからこそ起きた可能性があるし。


「あぁ…気を付けることにするよ…今回のことも巻き込まれた形だったからな…俺としてはのんびりと素材採取をしてこの地を巡れたらいいなって思っているだけで英雄願望はないよ。」


俺はアーテルさんを安心させるように言うと待機場所へ向かった。




「お、最後の一人が来たみたいだぞ。それじゃちょっと早いが出発するか!」


 俺が待機場所へ着くと既に他の人は集まっていた。


「すまん、遅れてしまったか…?」


「いんや、まだ時間にはなってねぇが全員早く仕事を終わらせて一杯引っかけたいらしくてな。かなり前から集まってたから気にすんな!」


 そう言って現状を説明してくれたのはグルという名の悪魔族だった。悪魔族はそこからさらに分類化され、女性型は魔法、男性型は物理という感じで特異な分野が分かれているらしい。そのため、グルの肉体は鋼のような筋肉に覆われ、おでこから出ている捻じれた1本角が異彩を放っていた。


「それにしても…荷車か馬車で運ぶと思っていたんだが、これは予想外だったなぁ…」


 俺は荷台を引いている馬…ではなく4つ足の標本骨格のような存在を見ていた。


「あぁ…あれは外国人の狩ってきた狼やら熊の骨を使い、ネクロマンサーが操っているんだ。命令権をグループのリーダーに渡しておけば問題なく言う事聞くぜ。まぁ、もって1日だけどな、ハハハ!」


 長時間の維持は難しいんだろうな…魔力というものが素材から抜けていくってことなのかもしれんし。ま、今回は1日もかからない場所だからこれで十分。


「通常の馬を見かけないからどうするかと思ったがこれはほんとビックリしたよ。」


「よし、ナオヤが来たことだしもっかい陣形の説明をするから良く聞いておけよ!まずこのグループは6人の小隊だ。

 前衛としてタンク役の俺、斥候のできるお前、弓を使えるアンタ。んで後衛に剣士2人、中衛はナオヤだ!中衛は臨機応変に動かなきゃいけねぇがジェイドから聞いた通りの人物なら問題なくこなせるだろ?頼りにしてるぜ!」


  鉱山から帰還して一緒に報告した奴から聞いていたのか…過大評価されている気がして肩身が狭いがやれるだけの事はしなければ。




 俺達は荷車を防衛予定地まで走らせ始めた。ただ、出発する際に他のグループを見てたんだが時間になっても現れない奴がいて険呑な雰囲気が漂っていた。


「他のグループは気にすんな、後ろから攻撃されにくいってだけで死角が1つ消せるんだから先に進む俺達にゃ楽になるってもんよ。それに、堂々と進んでいれば野生の魔物も襲いにくいさ。盗賊に身を落とす奴もいまの景気ならいないしな。」


 確かにグルの言う事は尤もだ。隊列が乱れていない部隊を襲うより内輪揉めしている場所を狙うのは本能で分かるのだろう。

 俺は念の為気配察知を意識して使い、斥候役の穴を埋めるように後ろ側に意識を向けた。



 そこからは何事もなく無事に防衛地点までたどり着くことが出来た。ただ、俺は慣れない警戒をずっとしていたため気疲れしてしまい、着いたときには大きくため息を吐いた。


「よ、慣れない護衛お疲れ様!そこまで気を張らんくて大丈夫だぞ?俺は警戒していますーって見え見えの奴のが逆にあぶねぇんだ。意識の隙間を狙われやすいからな。次からは気をつけろよ!」


 グルはそう言い荷物を指定場所に届けに行った。確かに…油断を誘うという意味でも警戒を相手に悟らせないのは大事だったな…。しばらくすると護衛任務が完了したのかイベントのポイントが加算された。

 ちなみに順位はリアルタイムで更新されるが名前に関しては非表示にすることができる。順位が高い人を妨害する可能性もあるからな…やる気に繋がるだけならいいんだが。


 順位表がバグっているのかなぜか俺のポイントと同数の奴が1位に輝いている。しかも2位に大差をつけて…素材調達と今回の護衛しかしていないから同ポイントだとしても俺じゃないな、うん。


 こうして俺は無事に防衛イベントの開催地までたどり着いた。後は開始時間までの準備といこうか。

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