第18話
宿屋を出てから空を見上げると、まだ早朝と呼ばれる時間帯であることが分かった。ギルドはすでに開いているが、この時間帯は依頼を受ける人でごった返しているだろう。というわけで俺はまず装備を整えることにした。
罠用の道具は補給をしなくても大丈夫なので近接用の装備が欲しいと思い、武器屋に向かった。
「お、らっしゃい。なにか入用か?」
「ソロで活動していて罠メインなんだが、接近された時の為の自衛用が欲しいんだがなにかアドバイスないか?」
俺が聞き返すとミノタウロスの旦那は顎に手を当てて提案をしてくれた。
「魔人族なんて珍しいが…線が細すぎるから筋力を使うようなものは避けたほうが良いな。そこから考えると、盾で攻撃を受け止めるのは出来んだろうな。往なすにしてもある程度筋力が必要でテクニックも必要だ。素早さ特化の種族というわけでもないから超至近距離での戦いは厳しいだろう。」
「魔人族って結構弱点が多いんだな…」
「そう言うな。言い伝えによると魔法を覚えていたら右に出る者はいないらしいぞ。というわけで槍をお勧めする。理由としては鈍器では結局筋力が必要だ。しかし槍、しかも突属性だから相手の勢いを利用することが出来る。あんたがもう少し筋力があればハルバートでもいいんだがな…あれは突以外に斬にも対応でき面の攻撃もできるしな。」
こういう相手に合った武器選択をしてくれる店主は素晴らしいな。ダメな理由も納得できる。魔族は特に種族によってステータスが全く違うから、良く知った人にアドバイスを貰えるのは助かる。
「助かった。それならこの槍を購入させてもらうよ。これって手入れとはどうすればいいんだ?」
俺が変な事を聞いたのか店主は口が塞がらないようだ。
「あー…今まで外国人がそんなこと聞いてこなかったからビックリしただけだ。ここに持ってきてくれればメンテナンスはしてやるぞ。簡単な手入れとしては、これは鉄製だから錆防止のために血糊を拭いたり油を表面にさっと馴染ませるといいぞ。」
今まで誰も聞いていないって?…メンテナンスする前にアイテムをロストしているからか?
「了解、気を付けることにするよ。」
そう言い、俺はギルド証を掲示して料金を払い店から退出した。武器屋に結構いたみたいでギルドに向かえば人が捌けた頃合いだろう。
ギルドに向かっているのだが、今日はなにやら様子がおかしい。というのもプレイヤーと思われる人達が見当たらない。いくら魔族が不人気種族と言ってもここまで出会わないのはなぜだ…?ギルドで聞いてみるか?
俺は足早にギルドへ向かい、扉を潜った。いつも通り人の少ないアーテルさんの所へ並ぶと早々に順番が回って来た。ついでに後ろに人が並んでいないので少し質問に時間をとっても大丈夫だろう。
「おはようございますアーテルさん。質問があるのですが、今日はやけに外国人が少なくないですか?いつもならまばらですが見掛けるのですが…」
「おはようナオヤ。あの人達ならレイドを組んで依頼を受けてたよ。プライバシーの問題でどんな依頼を受けたか教えられないけど…」
ほうほう、人数を集めて攻略に乗り出したか。5人がシステム的に1PTなんだろうが複数グループ集まったレイドか…1人当たりの取り分は少ないだろうが、全方位に注意することができ討伐も容易にはなるから奥に進むにはいいかもしれん。俺はまだまだスキルが育っているわけでもなく探索に慣れているわけでもないので攻略に乗り気ではない。もっと足元を固めてからのがいいと思っている。
初討伐特典などあるかもしれんがな…
「それだけ聞ければ問題ないよ。あ、そうだ。魔物って急に誕生したりするのか?例えば、討伐隊が倒した街道にいきなり現れたり。」
俺が問うとアーテルさんは首を横にふるふると振った。
「魔素をとりこんだ魔物は時間をかけて誕生する。でも人里近くや街道沿いでは発生しない。それは魔素溜まりと呼ばれる人の手が入らないような場所で発生するの。街道には野生動物なら現れるけど、魔物のように能力が高くないから対処は楽。」
「そう言う事か。つまり人が通って空気が攪拌されると魔素の流動がおきて魔物の発生が下がるのか…となると今はチャンスってことだな。アーテルさん、次に近い薬草の群生地を教えてもらって平気?」
俺がたどり着いた魔物の生態についてアーテルさんは小さく拍手して喜んでくれた。
「次に近い場所となると…こことここかな?よく人が通る道を挟んであるから安全。と言っても採取する箇所はそこまで人が通らないから警戒は怠らないほうが良い。」
地図の上でアーテルさんが指をさしてくれた場所は、前回まで採取したところから500mほど離れた場所であった。縮尺から考えると示された2か所の群生地は直線距離で1kmほどか?何事もなければ全て採取することは出来そうだ。
「ここの群生地もスキルを使って採取しても問題ないか?俺以外にも採取依頼を受けるだろうから取らないほうが良いかもしれんが…」
「地元の探索者は街中の見回りになっているし、外国人の探索者は薬草を持ち込んでこないし討伐しかしていないわ。だから採取しても大丈夫。」
そうなのか…俺からすると討伐は敷居が高いから敬遠するのにすごいな。この世界の人らが見回りに切り替えたのは外国人による犯罪を防ぐために見張ったり死んでしまうと復活しないからかもしれん。
「それなら遠慮なく採取させてもらうかな。いつも通りのラインナップ以外にも採取するものはあるのか?」
「…群生地の近くが鉱山になっていて採取することが出来るよ。取れるものは銅と鉄、錫。もし行くなら掘るのに熱中しすぎて落盤や毒ガスに気を付けて。」
あぁ…魔物以外にも危険があったか…それなら今回は入口付近で様子見をして道具を整えるだけにしとくか。スキルがあるわけじゃないからじっくり腰を据えて鉱石採取する必要が出て来るだろうからな。
「ちゃんと準備しなきゃ危険そうだから、今回は様子見だけに済ませるよ。」
俺がそう言うと、アーテルさんはホッとした。やはり心配だったのだろう。アーテルさんにお礼を言ってギルドから退出した。
鉱山ねぇ…地元の探索者も採取しておらず、プレイヤーも採取していないとなると街の物価が上がる可能性があるか?武器や防具、道具にも結構鉄が使われているから消費ばかりでは品薄になるもんな。
そう考えると近々取りに行かなければ。鉱山での採取に必要な物を考えながら俺は街の外へ向かって歩き出した。
かみ転魔族総合掲示板
1:転生せし魔族
ここはかみ転の魔族専用スレになります。スキル考察、クエスト関連、検証は専用スレでお願いします。
2:転生せし魔族
人すくな!!
3:転生せし魔族
スレも動かないな
4:転生せし魔族
3>>やっと人が来てくれた!
悪役が好きなら魔族に来てもおかしくないよな?
5:転生せし魔族
人に寄るんじゃないか?魔族のなかの更に種族がランダムってのがネックだと思う
6:転生せし魔族
とりあえず人が来るまで探索してみるか
100:転生せし魔族
まともにスレが進んできたな
101:転生せし魔族
そう言えば警備の奴らに3人引っ張られて行ってたぞ
102:転生せし魔族
見てたけど女に言い寄ってたぞ
103:転生せし魔族
ざまぁぁぁぁ
104:転生せし魔族
女も結構可愛かったな
105:転生せし魔族
お、お近づきになりたいんだな
211:転生せし魔族
街の外にでる門前で座り込んでる奴ら多い
212:転生せし魔族
死んだんだよ言わせんな
213:転生せし魔族
俺も死んだからなかーま
214:転生せし魔族
動かなきゃ意味ねーんだが次にやる気出すのがな…
215:転生せし魔族
俺とPT組もうぜ…死んだ者同士さ
216:転生せし魔族
そういや昨夜、ギルド併設されている食堂で女が捕まってたな
217:転生せし魔族
あー、前に話題になっていた女か。なにやったんだ?
218:転生せし魔族
俺、その女に美人局された
219:転生せし魔族
金持ってそうな奴狙って荒稼ぎしていたらしいぞ
220:転生せし魔族
なんだ、自業自得か
221:転生せし魔族
魔族は人数が少ないんだからやらかせばすぐ伝わるよな
222:転生せし魔族
狭い世間はある意味強み
223:転生せし魔族
皆でまとまって敵倒しにいかね?
224:転生せし魔族
1人当たりの報酬は少なくなるけどゼロじゃないもんな
225:転生せし魔族
んじゃ明日まとまって行こうぜ