第13話
窓から差し込む光が眩しい…こちらの世界ではカーテンというものがないため、ガラス自体に工夫がされており外から覗き込むことが出来なくなっている。あれ?こんなに枕柔らかかったっけ?ふにふにというか…あと、暖かい感じがするってこれもしや!?
がばっと起き上がるとそこにはハルがいた。
「どこから入ってきたんだ…?」
「え、ナオヤの泊っている部屋を聞いたら案内されたよ?」
「防犯どうなってるんだ…案内されたからって勝手に入ってきたらダメだろ。しかも男の部屋に。」
女将さんに案内されたのは百歩譲って良いとして、なぜ膝枕を…
「前の感じからしてそろそろ来るかなぁと思って膝枕をしてたんだよ!そのスキル、育ったらナオヤも安全になるだろうし!」
知らない間に熟練度上げようと画策している!?そもそも…
「なんで俺が来る時間を把握しているんだ?それと、起きる前にも部屋に入ってきていたのか?」
「そりゃカードを見て確認…いや!宿を出るのを見かけたからね!前回は入ってきてないよ、ナオヤだって知らない所で色々変わっていたら嫌でしょ?」
そりゃな…たしかネット用語でBOTに任せてレベル上げをするっていう行為に似た感じがするし、なによりそんなことをして楽しいのかってなる。今回の膝枕に関しては機会が訪れないと思っていたから嬉しいが…
「俺のスキルを育てようとしてくれるのは嬉しいが、知らんところでするのはやめてくれ…ハルだって異性がいきなり自分の部屋に入り込んで抱き着いてきていたら嫌だろ?今回のはそれに近かったんだぞ?」
俺が指摘すると、すごく嫌そうな顔をした。
「あー、確かに嫌…好きな相手だったら夜這いって事だよね!次からは寝る前に来るよー!それじゃ僕はすることがあるからまたね!」
そういってハルは部屋から消えた。え、ワープ?というか、夜にまた来るの…?メニューを開きスキルの熟練度を確認すると
【昼寝】1:29 【膝枕】1:05
という表記になっていた。ちなみに採取も1:00となっていた。あー…もしやこれってLv1の熟練度29溜っているとかそういう表記?というか2日目にしてすでに上がっているとか自分のライフスタイルに合ったスキル強すぎだろ…
これはデスペナを受けた場合どうなるんだ?1から下がるのか、もしくは昼寝の場合は29という場所が00になる?連続でやられた場合に限りレベルが下がるというやつなのかもしれない。詳しいヘルプがないからNPCに聞けってことかね。ギルドが混んでいなければアーテルさんにでも聞いてみよう。
俺は部屋からでて食堂で朝食を食べた。途中、女将さんがハルを部屋に案内したことを謝ってくれたのと宿代を少し下げてくれたのが嬉しかった。ちなみに、物価は現実とほぼ変わらないからとっつきやすいし目安がつけやすい。武器や防具に関しては現実のことは分からんのでこういうものかと思うようにした。
明日は大学が休みだし午前中にもインすることが出来るからゲームに時間を割く事が出来るな。とりあえずギルドに行って熟練度に関して聞くのと…出来れば魔法を使ってみたいんだよね。やっぱ憧れるものだし。
ギルドに着くと受付は混雑していたが、人の捌ける速度が前と違った。理由としてはアーテルさんの所にも人が並ぶようになっているため受付が2人じゃなく3人とも機能しているからだった。でも、この流れを断ち切って質問するのも憚れるからどうするか…とりあえず資料室を使わせてもらおう。
資料室内は少し暗めの照明になっていた。光によって本が変質とか黄ばんだりするから保存法としてはそうなるのか。ジャンル事に綺麗に整理されているから調べたい項目に関してすぐ資料が見つかりそうだ。
調べたい項目は熟練度と魔法に関してだ。熟練度について調べてみるとこの世界のものは熟練度は下がらないようだ(そりゃ死に戻りがないからな)。熟練度Lvはやはり熟練が100溜まったら1Lv上がるようだ。また、スキルを使っていないと段々熟練度が落ちていく…と。レベルも下がるようだが、下がる前には結構な期間の猶予があるとな(これはプレイヤーとして考えると連続死亡が当てはまるか)。
魔法はハルが言っていた2通りの方法があるらしい。魔法を受けることによりその魔法の感覚を覚える方法、講師から理論を学び魔力とはどういうものなのか理解する方法。手っ取り早いのは魔法を受けることだけど…発展性を考えるのならば理論を覚える必要がありそうだ。ギルドで講師の斡旋をしているか聞いてみるか。
調べものが終わり朝の受付ラッシュが終わったと考え、俺は受付に戻ることににした。朝に受付が混むのは俺が受けている常設依頼ではなく指定依頼、討伐依頼が早い者勝ちだからだ。依頼に貴賤なしと思うのだが…まぁ割りの良い仕事ってのもあるんだろう…受付には誰も並んでいないので少し相談しても問題ないだろう。
「アーテルさんおはよう。ちょっと相談というか聞きたいことがあるのですが時間は大丈夫でしょうか?」
「ナオヤ、おはよう。うん、もう混雑はしていないから大丈夫よ。それで…何が聞きたいのかな?」
「資料室でも調べていたんだけど、魔法を覚えたいんだ…先を見越すと講師を付けたほうが良いと思って。ギルドで講師の斡旋しているのかなと。」
俺が聞くとアーテルさんは少し考え、悩んで…悩んでいた。
「ん-…ギルドで紹介は難しいかな。ただ、依頼という形を取ってくれるなら大丈夫だけど…結構な金額になるよ?」
「魔族は魔法が得意って言われているけど、一般的ってわけではないのか…確かに教えるには時間もかかるし日程合わせるのも大変だから割高になるのも当然か…」
「あ…そういうのもあるんだけど、得意だからこそ理論まで知らなくても出来ちゃうんだよね。」
あー、いわゆる天才型だから教えるのが苦手っていうことか…そういう点だったら人族のが理論がしっかりしているのかも。
「なるほど…そして理論を学ぶ人は学び舎か専門に行くってことか。魔道具を作るには専門だろうしそりゃ高いわな…」
「うん。一つの魔法で良いなら魔法を受けるだけで済むんだけど、そうじゃないよね?」
魔法を受けて覚えるっていうのは受けた魔法を覚えるってことだからな…外国人は特殊な魔法を覚える可能性があるってハルが言っていたし、そっちの覚え方をすると上書きされて特殊な魔法が覚えられないと思われる。
「そうだな…お金たまってから考えるか。相談にのってくれて助かったよ、また常設依頼をやってくる。」
「力になれなくてごめんね。気を付けて行ってらっしゃい。」
ギルドから出て、まっすぐ探索に向かわずに道具屋に寄っていた。罠を仕掛けて寝るのもありだろう。道具屋に売っている品で出来そうな罠は…槍や矢を買ってスパイク、時限式の矢にすると毛皮が穴だらけになってしまうよな…毒を使うと肉に影響がでるだろう…こうやって考えると難しいな。トラバサミや落とし穴が無難か?スコップもあるし落とし穴なら大丈夫だろう。
念のため小型のナイフと肉切り包丁を購入。道具屋のおっちゃんが言うには街の近くで出る魔物は猪型と狼型らしく、毛皮は供給過多だから状態は気にしなくていいぞとアドバイスをくれた。そのうち、状態がいい倒し方を覚える必要があるってことね。
今は昼寝バフと膝枕バフの両方がかかっているので採取場所に魔物がいても太刀打ちできるだろう…1匹とかなら。3時間もバフがもつとか便利すぎる。まぁ、本格的に探索をするとなると短いんだろうけど、Lv1でこれなら破格すぎる。
俺は昨日の採取地点に向けてのんびりと歩き出した。