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第10話

 とりあえず道具屋によって厚手の手袋、鉄製のハサミ、鉄製のスコップを購入。鉄製だからか結構な値段だった…これ、戦闘メインの場合は武器や防具も購入になるしカツカツになるんじゃ?採取に時間をかけたりすると魔物が寄ってくるらしいから乱雑に活動すると余計に危険になるよな…?慎重にというより、花とか採取時の匂いが風下に行かないようにすればいいのか?要検証ってとこだな。


 宿代を払ってもまだ余裕はあるが贅沢をするとなると心元ないので探索者として動きますか。他の探索者流れていく方向に俺もついて行くと大きな門が見えてきた。特に街から出るときに呼び止められたりチェックはされなかった。まぁ…死に戻りとかあるから戻ってくる人を確認とか意味がないか…


 門を出て他の探索者について行ってたが採取場所に向かう分かれ道に来ても全員が奥へ進んでいった。…あれだけいてだれも採取をしないのか…?それとも探索ついでに採取ってことなのか?まぁ…群生地は他にもあるだろうし、種を植え直す必要性があるから他の所に撒いている可能性も否定できない。ま、人は人ってことで自分のことをまずは頑張らないとな。



 群生地は開けた野原になっていた。中心に木が立っており、周りには種別ごとにそれぞれの植物が群生していた。ここまできちんと整えるのって大変だっただろうな…この形を次につなげるために俺もきちんと種を植えなければ。


 俺は疲れるだろう薬草の採取から始めることにした。土を掘り起こし、根が傷つかないように土を払いのけながら抜いていく。背が高い植物ではないからシャベルじゃなくても問題ないのは助かった。サツマイモ掘りやジャガイモ掘りを思い出すなこの作業…薬草の根には球根らしきものが付いていたのでこれを植え直していく。すぐ根から球根が取れたことから乱暴に抜くと地中深くにのこって芽が出ない可能性があるのか?


 球根は結構小さいのでどのくらいの深さで植えればいいんだ…?よく言われているのが人差し指の第二関節とかだっけ?とりあえず土を柔らかくしてなだらかにし、薬草ではなく雑草が生えている場合は抜いておく。これ…結構大変な作業だぞ…?


 2時間かけて採取出来た数は15束、つまり75本の薬草が取れたことになる。はぁ…腰にくるなぁ…思いのほか雑草が生えていたからそっちの処理に時間がかかってしまった。薬草は匂い自体薄いから問題ないが次のメリッサだな…1片だけ先に試しで採取してみたが花の根元を切ると茎からレモンのような匂いが漂ってきた。これは注意しないと魔物を引き寄せると考え後回しにした。


 まずは風向きのチェックから。手袋を外し人差し指を口に含んで濡らした後に掲げた。探索者の向かった方角に風が向かっている。俺が下手に採取したら探索者に被害が行く可能性があるのか…あとから文句を言われないためにも気をつけないと。といっても探索者が奥で採取していたら更に先から魔物が寄ってくる可能性もあるか…


 とりあえず匂いの処理は切り口に小さい袋をかぶせて結んでおけばいいかな?確か植物って茎から液体がでて傷口を塞いだりするんだっけか?タンポポは乳液がでてゴムの素材にもなるらしいが…まぁ麻袋はそれなりの数あるし順々に付け替えれば大丈夫だろう。


 その後、魔物に襲われることなくキリがよく薬草と同じ15セット…45片の採取が終わった。薬草の採取は腰にきたけど、メリッサについては匂いの処理で神経をすり減らしたなぁ…せっかく魔物にも襲われずにできたし、ちょうどいい木もあるから昼寝していこうか。常設依頼だから死に戻りしたとしても違約金が発生するわけじゃないからね。ハサミやスコップはちょっと痛いけど…俺は木に体を預け横になった。毛布とか欲しくなるなこれ…



システム:【採取】を習得しました。

システム:【隠蔽】を習得しました。



-君達、ナオヤが寝てるのに邪魔する気?そう、向かってくるんだね。褒めてあげるよ、この一撃に耐えられたらね。あらら、骨すら残らなかったね、これに懲りたら邪魔しないでね。

 ナオヤったらすごく気持ちよさそうに寝てるね、僕も眠くなってきたよ…ってナオヤ!?うぅ…これじゃ動けないよ…


システム:【膝枕】を習得しました。


 ん?なにか柔らかい物が頭にあるんだが…木に寄りかかってたよな?手で確かめると頭の上からひゃっ!?っと声がした。え…?


 体を起こし目を擦りながら声がした方を見ると、ハルが顔を真っ赤にしていた。…うん、俺が触ったのは太ももだったのか…というかこの状況はどういうことだ…?


「あー…ハル、ごめん…でも、どうしてこうなったのか俺には分からないんだが…」


「い、いいよ…ナオヤは悪くないから!僕が隣で寝ようとしたらナオヤをを倒しちゃったんだ…」


「邪魔しちゃってたならどかして平気だぞ?そんなことで咎めないし。というか、なんでハルがここにいるんだ?」


「それはもちろんフレカで追跡…いや散歩してたらナオヤがいたからね!」


 今なにか変な事言ってなかったか…?まぁいいや。


「街に近い所だからって散歩するのは気を付けたほうがいいぞ?俺ら外国人はともかく、ハルは死んだらおしまいなんだから。」


「僕は強いからね、大丈夫だよ!でも心配してくれてありがと!」


「強く見えないんだよなぁ…ほんとに気を付けてくれよ?…そろそろ戻らないと暗くなってくるから街に戻ろうか。」



 俺達は連れ立って街に向かって歩を進めた。途中なにか草が1本も生えていない空き地が出来ていて不思議がっていたらハルに促されて街へ急いだ。


「…なぜか行きよりも体が軽い感じがする。寝たからか?」


「ナオヤってそんなスキル持っているの?」


「ん-…でも前も持っていたからここまで差がでるのはおかしい。」


「もしかしてさ…僕が膝枕したからじゃない?」


 照れるなら言わなければいいのに…原因としたら膝枕が怪しいな。


「そうかも?まぁそんな機会はないだろうから気にしなくていいか。」


「も、もしよかったら僕がしてあげるよ?身体能力が上がればナオヤが死ににくくなるだろうし…」


 小さい子に膝枕してもらう俺…傍から見るとかなり危ない奴じゃないか…


「気持ちだけ受け取っておくよ、外でされても危ない奴にしか見えないし。ハルだってやる事あるのに膝枕のために時間とるのも大変だろ?」


「僕は別に問題ないけどなぁ…暖かい気持ちになったし…あ、街が見えてきたよ!」


 俺達は街の中に入った。帰り道は探索者の姿を見かけなかったけど…すでに戻ってきているのか?昼寝もしてきたしゆっくりしすぎたか?


「それじゃ俺はギルドに寄って報告してくる、ハルも遅くなる前に家に戻るんだよ?」


「僕は子供じゃないって!でも、確かに戻る時間かも。ナオヤ、また会いに行くねー!」


 そう言ってハルは駆け出して行った。元気だなぁ…俺も小さい頃はあんな感じだったのだろうか?



 ギルドに入ると報告のために探索者が列を作っている。やはりこの時間は混むんだな…列を整理する人もいて、横入する人を放り出している。さすがギルドお抱えの人だな…俺ら外国人の探索者より強い…


 そうこうしていると俺の番になったらしい。


「常設依頼の納品に来た。薬草15束、メリッサ15セット、確認を頼む。」


「ワタリ、おかえりなさい。納品処理しておくね。…清算処理が終わったらこの洋紙に書かれた番号で順に呼び出すから待合室で待機してて。そこで報酬を受け取ってね。」


「ありがとうアーテルさん、結構混雑しているし休めるときはちゃんと休んでね。それじゃ待合室に向かっておくよ。」


「ありがとう。ワタリも無事に帰ってきてくれて嬉しいよ。」


 軽く一言交わし合い、俺は待合室に腰を掛けた。するとしばらくした後に俺の番号が呼ばれたので受付の隣にある清算所に向かった。


「はい、番号を確認しました。ワタリ様の採取したものは状態が全て良かったので買取価格は最大となっておりますのでご確認ください。」


 ほうほう…状態によってかなり差ができるんだな…クエストボードに書かれている値段は最大より1段階下の値段だったのか。きちんと採取していないものは安く買いたたいて、品質の良いものには+αとしてつくと。へぇ、こう考えると品質は重要なんだな。…もしかして解体とか必要なものを納品するときも注意しないと行けないんじゃ…?

 アイテムボックスというかポーチはあるんだが中にいれても時間が止まるわけじゃないからな…大きくても小さくても1枠使ってスタックすることはできるが、状態に差があると余計に枠を使う。ポーチは20枠あるが採取道具で3枠取られてるし、日常の着替えを含めるとそんな枠に余裕がない。


「問題ないです、ありがとうございます。」


 俺はお金を受け取り、併設された酒場で夕食を頼んだ。お勧めのを金額指定して頼んだんだが、探索者が利用しているだけあって肉料理とお酒がテーブルに並べられた。おぉ…脂っこい肉じゃなくさっぱりしてる肉を選ぶとは…あの店員の子なかなかやるな…俺が目線を送ると女の子はサムズアップして仕事に戻った。客の状態を判断するとかすごいな…ギルドの受付嬢と仲がいい可能性もあるな。


 美味しい料理に舌鼓しながら楽しんでいるとギルドの入口から涎垂らしながら酒場を見ている集団がいる…あぁ…そういえば死に戻りしたらお金も無くなるから食事もできないのか…慎重に探索すればいいのにな。ってあそこにいるのはチュートリアル後に会った女性だ。


 俺が見ているのに気づいたのか恥ずかしそうに顔を背けた…ん-、どうすべきか。知り合いだからって甘やかすのもお互いの為にならんが…流石に外で寝ることになられても寝覚めが悪い…か。


 俺は手招きをして女性を呼んだ。


「俺の心の平穏の為に一緒に食事してくれ。」

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