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「はぁ・・・
来ない・・
ハルったらまた親友との約束
ほったらかしたのね。」
今頃きっとエリカは
図書室で
数学の教科書を開いて
待っているだろう。
「眠いし・・」
私はそう言って
エリカとの約束を
ほったらかした。
「私だって・・・
忙しいんだから。」
私は机の引き出しの
鍵を開けて
赤い本を
取り出した。
「今日も頑張るか。」
その本の題名は
【罪と罰】
ドストエフスキーの
代表作だ。
勉強もできない私も
原書を読む。
なぜかって??
私は青春に生きて
青春を楽しんでいるってこと。
これを持って
いつもの場所へ向かう。
暖かい日差しは
しだいに傾き
私の赤い自転車を
さらに鮮やかに
しているんだ。
颯爽と自転車をこぐ私は
きっとかっこいいのだろう。
もしかしたら
綺麗な顔をしているかもしれない。
これが青春を楽しんでいる証。
「あ、いた!!!」
私は近所の公園に行く。
広い公園で
夕焼けが綺麗に見える
穴場。
真ん中にある
白いはずのすべりだいを
赤く染めるんだ。
そして
すべりだいの前にある
ベンチに座った。
向かいにもベンチがあって、
同い年くらいの
男の子が座っていた。
黒縁メガネの彼は
知的な感じ。
本を読みながら
彼を見る。
「・・・カッコいい。」
彼の読んでいる本は
【罪と罰】
もう
私は
彼に
おぼれてしまっていた。
昔・・
一ヶ月ほど前
一人でブランコをこいでいた時
彼がベンチに座って
本と読んでいた。
そのときの彼の顔
好奇心でいっぱいのあの笑顔。
本が大好きな彼は
とても魅力的だった。