表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

労働

作者: 古宮 海利

 津留 真は今日から会社員になった。といってもまぁ、今日は家で仕事なんですがね。

今時っていうか、まぁ前から在宅勤務か会社のオフィスみたいなところに出勤か選べるシステムで、毎日選べる。人によって集中できる場所が違うことや、一時期流行ったウイルスの影響でこういうシステムになったらしい。


 仕事開始は9時。パソコンの前でスーツ姿。仕事を始める時は、政府が開発したアプリにログインしてから、会社専用のページにいき、仕事をするシステムだ。ちなみに、出勤予定以外でログインすることはほぼ不可能だ。まぁ、普通は残業なんてあり得ないんだけどね。


 なぜなら、この世界の労働はほぼ全てロボットが行なっている。この世界の人間がやる仕事というのは精々、ロボットの動きの監視とか諸々の最終チェックとかだしね。僕の仕事は、接客ロボットとの会話。コミュニケーション能力向上や知識を深めるために会話が必要…らしい。

 

 おっとそろそろ時間だ。初仕事始めよう。

ログインして、仕事のページに行くと、カメラのマーク。そこを押すと今日会話するロボが出てくる。最初に名前を聞いてから、今日はどんな会話をしたいかなどを聞いて、会話をしていく。


「番号、18267さん。貴方のお名前を教えてください。」


「はい。私の名前は源 九重です。」


「…なんだか苗字みたいな名前ですね。」


「ふふっ。よく言われます。」


「さて、今日はどのような会話をしますか?」


「そうですね…。じゃあ、スプラッター映画の話とかどうですか?」


「…は?え?いや、そういうのはちょっと…。今、朝ですよ。グロイのはちょっと…。というか仕事に関係ないでしょ!」


「?関係ありますよ。だってそれを聞くとその人のことがわかるって前回の担当さんが。」


「それ絶対嘘ですよ!大抵の人は朝からそんな話されたらドン引きしますって!騙されないで下さい。全く…。」


 …実はここにくるロボットはその…接客ロボにしてはポンコツなのだ。何かが欠けているのだろうか。突然、おかしな質問をされることも多い。だから、正しい方向に持っていくのも僕らの仕事だ。



「他にしたい質問は?些細なことでも構いません。」


「…うーん。」


「ないんですか?」


「少し待ってください…。」


「はい。」


「……あ!貴方の好きな食べ物について教えてください!」


「好きな食べ物ですか?いいですけど…どうしてですか?」


「私、他の者よりも食事に関する興味が薄くて…。食べれればOKって感じなんです。そのせいか接客の時に、お客様から食事の話についでに振られてもいまいち興味がないって反応になりがちなんです。だから、他の人が好きな食べ物とかその理由を知って、実際に食べてみて、食に少しでも興味を持てればなーって。」


「そういうことですか…。わかりました。私の好きな食べ物は馬刺しです。」


「…馬刺しですか?」


「はい!最初は本当に美味しいのか疑問に思いながら食べたんですけど、これが意外と美味しくて!特に辛味噌。アレを醤油と混ぜて食べると美味しいんです!魚より臭みないですしさっぱりしてるので食べやすいです!高いんですけどね、そのくらい価値があると思うくらいの美味しさです!」


「へぇ…馬刺しですね!わかりました。食べてみることにします!」


「是非、食べてください!」


「…他に質問とかはもうないので、失礼しますね!」


「はい!お疲れ様でした!」


 相手のカメラが切れる。初仕事にしてはなかなかじゃないか?と思いながら次の仕事についての指示を待つ。


(指示、これにて今日の仕事終了。)


 …え?まだ、30分も経ってないんだけどなぁ。まぁ、周りも初仕事は早めに切り上げられて、適正見られるって言われたし。気にしなくていいか!さーて、暇だし何しようかな…。



 _研究室_



「ふむ、会話に問題はなしだな。」


「はい!会社員ロボ真。動きに支障はなさそうです!読み込ませた記憶、身体、能力に問題なし、自分を人間だと思い込んでいます!」


「そうか…。では最終調整に入らせよう。これがうまくいけば量産に入れるな!」


「はい!これで我々、人間の仕事をこれでロボットに任せられますね!」


「そうだな。しかし、面白い考えだよ。反乱を起こされたら困るから、人間と同じような見た目と身体の構造に見えるように作って、ロボットに自分自身を人間だと思い込ませるとは…。」


「でも、こんなに精巧に作らせて、どうするんだ?ロボと人の見分けがつかなくなったら色々と問題が出てきそうなんだが。」


「心配ないそうだ。彼らは生まれた時からのあざと認識させられているみたいだが、体にはロボットの証である特殊な模様が腰に入っているらしいし、体内のマイクロチップも本人にはわからないようにロボットとして認識させられるような仕組みになっているらしい。」


「そっか!なら、安心だな。ただ、周りの人間がロボット差別しないように対策する必要がありそうではあるが。」


「それも問題ないらしいぞ。法律にも付け加えるらしいし、付け加えた部分はロボットだけに見えないように細工をするらしい。政府お抱えの技術部は流石だ。」


「それよりもあのロボット役の女優、ポンコツすぎないか?」


「設定的に問題ないですし、むしろアレが正解ですよ!」


「そうなのか…。」


「15分くらいで済んでお金が貰える労働とか羨ましすぎるっ!!俺らなんてほぼ休みなしだぜ…。誰だよこんな設定考えたやつ!あー、ロボットが羨ましい。」


「まぁまぁ。上が適当に考えたから今はこうなってるだけだしね。次はブラック企業てボロボロの会社員って設定にするみたいだよ。」


「よっしゃ!メシウマ!俺、人間で良かったぁ。」


「はぁ、お前らうるさいぞ。さてそろそろ、最終調整に入る準備をするか。」


「ああ。」




 思考型仕事ロボ真。彼が世に出る日も近い。

最後まで見ていただきありがとうございます!

ロボットが自我を持ったら反乱を起こすという話を耳にして、じゃあ逆に私たちが自我を最初から与えて人間として扱ったらどうなるのかというものを現実にしようとしているところまで思いついて書きました。実は私たちの知らないところでこんなふうに開発が進んでいたらいいなという想像も膨らませたらこうなりました。

自分なりのロボット像です。初めて投稿したので、反応を頂けると嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ