レーナと約束
太陽の光を感じ、おれは目を覚ました。目覚めると朝だった。目覚めると朝なのは当然だろう、という人はどちらかといえばまだ幸せな人だ。社畜生活を強いられてきたサラリーマン時代には考えられなかったことだからだ。
フウと買い物に出かけてのは一昨日のことだ。今日、その時に購入した荷物が届くという。
昨日は特にやることもなく、一日中外で日向ぼっこをしていた。働き詰めの生活に疲れ果てていたせいもあり、特に何かやれという命令がないのであれば、出来る限り動きたくなかった。
せっかく冒険が出来そうな世界にやってきたのだから、冒険者ギルドにでも行ってみるのも悪くないのだろう。
だが、おれには金がある。働く必要がない程の金だ。
昨日、フウがお金をくれた。ペラペラの一枚の紙切れだった。聞くと、どうやらこの紙切れだけで1億ギルまで買い物が出来るそうだ。フウの魔法で管理しているそうで、お店で使うたびに残金が減っていくとのこと。言ってしまえば一億ギルがチャージされた電子マネー『ス○カ』と言ったところだ。
「何にでも使っていいよ。なくなったらまたあげるから」とのフウの言葉である。
それからというもの、おれはずっと考えていた。このお金を何に使うのが有益なのかと。青空の下、心地よい風に揺られながら色々と考えが頭を巡っていた。何に使おう?何がいいだろう?
「あっ!」思わず声がでてしまった。そろそろ荷物が届く時間のはずだった。メイドのレーナと荷下ろしの手伝いをする約束をしていたのだった。
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「おはようございます。遅いですよ」
レーナが相変わらずの無表情で声をかけてきた。
「すまない。ちょっとぼんやりしてた」
「そうでしたか。朝がお辛い体質なのでしょうか?」
「いや、そういう訳ではないんだ」
「そうですか? それならよかったです」
初対面の時は全く話をしてくれる雰囲気ではなかったが、昨日から少しづつ声をかけてくれるようになった。一見冷たさそうに見えるが、話をしてみると意外に気を使ってくれる。
本人曰く「メイドです」とのことだが、正装が男性用スーツに近いので執事のようにも見えてしまう。ただ、唯一男性用スーツと違うところは、自宅にいる時のみスーツにチャイナドレスのような大きなスリットが入っていることだっだ。
男性用スーツとチャイナドレスが混在した不思議な服装である。ただ一つ言える事は、スリットがとてもえっちだということだ。当初感じたそこはかとないエロさはこのスリットを着こなすうえで身につけてしまったものに違いない。
「………どこを、見てるのですか?………」
「え、いや、良い生地な服だなと。おれも欲しいなと」
レーナが少し怒った口調だったので慌てて嘘を言う。流石に舐めるように見ていたのはまずかった。
「良い生地?………本当ですかね?まあ、貴重なモンスターの毛から作られていますからね。もし気に入ったのでしたら男性用もお作りしましょうか?」
「それは遠慮します。フウにもらったこの服が好きなので」
「そうですか。ふふっ、フウ様が本当にお好きなのですね」
レーナの笑顔を初めてみた。わずかに口と頬をが緩んだ程度ではあるが、なんとも可愛らしかった。朝から良い物を見た。
この世界でもスーツを着ることに抵抗があったというところが本心ではあったが、フウにもらったこの服を気に入っているというのも間違いではなかった。
「もう到着してますよ」
そう言うレーナが指差した建物には、多数の馬車が停まって荷物を降ろしている最中であった。思った以上に荷物が多そうだった。腰痛、筋肉痛確定である。




