道。決着
俺の獲得した5ポイントは、魔法円の誤作動であることがすぐに確認された。見つけやすいよう、わざとシステムを破壊したのだから当然だった。ブラッシュは睨みつける訳でもなく、ひどく落ち着いた表情で俺の顔を見ていた。
「……どういうつもりだ?」
「こんな形で勝ってもつまらないからね。剣術だけで勝負したいと思った」
「……間違いなく俺が勝つぞ」
ブラッシュの言葉は、以前のような力強い言葉ではなかった。魔法を使えば勝てるのに、その選択肢を取らないことへ疑問を持っているようにも感じた。
「だろうね。ただ、強い相手と戦える機会なんてあまりないだろうし、アクア以外でここまで強い剣士は初めてだったから。そんな相手にこんな形で勝っても意味がないでしょ。優勝よりも強くなれる方が大事だしね。」
「……」
ブラッシュは何か考えているようだ。
「うむ。騎士道精神だな。素晴らしい。それこそがこの大会のあるべき姿だ」
突然審判が褒めてきた。そんな崇高な精神ではないのだが、まあいいか。正々堂々、スポーツマンシップ。特別好きな言葉でもないが、とりあえずそれでいい。ブラッシュはまだ何か考えているようだ。
「なあ、ブラッシュ。仕事も大変だろうけど、アクアとの戦いはきっと楽しいと思うぞ。めちゃめちゃ強いから。レーナといい勝負かも」
「………そうか……わかった……」
その言葉と共に、ブラッシュが少し笑った。今までの下衆な笑い方ではなく、何か憑き物が落ちたような、そんな笑いだった。
アクアとの決勝戦、きっとブラッシュは魔法で不正をしない。勝っても負けても己の剣術のみで戦うはずだ。これで目的を達した。すぐ負けても大丈夫だ。
だからと言って、参りましたと首を差し出すような真似はしない。俺は俺で、最後まで足掻かなくてはいけない。それがブラッシュへの礼儀であり、自分自身のためでもあった。
審判に促され、剣先をブラッシュに向ける。今までにない、冷静かつ闘志に溢れた目。この姿こそ、前回優勝者である人間の威圧感だった。試合当初の三下の姿はそこにはない。
そして――――――。
間違いなくあの一撃がくる。そう、紫電一閃の一撃だ。絶対に防がなくてはいけない。1ポイントでも取られた瞬間、この試合は終わるのだ。
「はじめ!!!!!!」
集中。全ての神経を眼球の筋肉に集中させる。
鋭い踏み込みと、長身と長い腕から繰り出される伸びるように迫ってくる剣先。分かっていても、防御の体制を取っていても、対応しきれないスピード。
最短距離で剣先に合わせにいく。
『ガキッ!!!!!!!!』
鈍い音と共に、剣と剣がぶつかり合う。そして、今までに感じたことがない重さが、俺の腕にのしかかってきた。なんて重い攻撃だ。
腕が悲鳴をあげ、持っていた剣は彼方へ飛んでいった。
そして、ブラッシュの剣先が、俺の顔の前に突き立てられていた。
「まさか反応されるとは思わなかった」
「止めるのが精一杯だったけどね。来年はカウンターを食らわせてやる」
「そうか! 楽しみにしている。……偉大なる魔法剣士ミヤよ、感謝する」
ブラッシュは嬉しそうにそう言うと、おれの右肩をやさしく剣先で叩いた。
「1ポイント!!! 合計10ポイントで勝者ブラッシュ!!!」
審判が高らかに宣言する。
敗北。
実力差があり、覚悟はしていたが、それはやっぱり悔しいものだ。
二か月とは言え、それなりに頑張ったと思う。
もう少し強くなりたいなという気持ちと共に、初めての剣術大会は幕を閉じた。
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