魔法
さてどう戦うか。
「両者構えて」
審判の声に促されるように、剣先を相手に向ける。おれとの戦いを通じて、アクアと剣術のみ戦いたいと思わせることが一番だ。
少しでも長くブラッシュと戦い、その価値を伝える。困ったときの精神論だ。具体的な策はない。もう少し考えたい。何か方法があるはずだ。
思いつくまでとにかく防御に徹する。
「はじめっ!!!」
開始早々の攻撃はしてこない。完全になめ腐っている。ゆっくりと間合いを詰めてくると、大振りの攻撃を繰り返してくる。
「おらっ! おらっ!」
声がうるさい。1ポイントとれば勝ちなのに、それをしてこない。ひたすらに10ポイント狙いの攻撃だ。初手の攻撃で仕留めきれなかったのがよほど癪にさわったのだろう。
ひたすらに防御に徹することを決めていたとはいえ、これだけ隙が多いと攻めたくなる。試しに1ポイント狙いの攻撃をしてみたが、あっさりと封じられた。これが実力差か。
まあ耐えることはできるザル攻撃なのは確かなので、冷静に勝ちに来られる前に、なんとか打開策を見つけたいところだ。
「そんなにっ……。 強いのにっ……。レーナには不正しないと勝てないんだなっ!!」
ちょっと煽ってみることにした。怒ってもっとザルな攻撃になればいいが。
「さあ!! なんのことだ!!」
おーおー知らないふりですか。さらに攻撃が荒くなってきた。分かりやすいやつだ。
「当たりか。攻撃が荒くなってきたぞ、デカブツ。デカいのは身長だけだな。小さな女の子相手に魔法を使わないと勝てませんでしたなんて、恥ずかしくて言えないもんなあ」
煽れ煽れ。
「黙れ! 全てにおいて俺のが上だった!」
ちょろい。さらに攻撃が荒くなる。もう剣術というか怒りにまかせて振り下ろしているだけだ。そう思ってポイント狙いの攻撃をしてみるが、それは簡単に封じてくる。
そこもザルになれよ……。なんで守りの時は冷静になるんだこのデカブツは。
やり方を変えてみるか。
「魔法が使えるなら、今の俺でもお前に勝てる」
「なんだと!? ははっ! やれるもんならやってみろよ!!」
「じゃお言葉に甘えて……」
実際に魔法が通るかは分からない。これだけの実力者なら魔法の腕も相当だろう。無理は承知。相手の楔帷子にある、ポイント制御の魔法円に魔力を送り込む。
もちろん少ない攻撃機会に合わせてだ。審判にバレで失格になっては元も子もない。
やはり魔法円には防御がかけられていた。ブラッシュの魔力で守られている。魔法を使うと予告したのだから警戒するのは当然だ。
そして、その強固な守りを―――。強固な―――。とてつもなく強固な―――。
いや簡単に突破できたな。扉にカギが掛かっていないどころか、店員総出で『いらっしょいませ』からの『おススメの商品はこちら』ですだった。ザル過ぎて罠を疑うレベルだ。
実際魔力の練度は恐ろしく低く、単純な力不足なのは明らかだった。魔力の質の低さは、ちょっとアクアに似てるかもしれない。
「5ポイント!!! ミヤ!!!」
審判の声が響き、観衆が沸いた。5ポイントは取りすぎかなとは思ったが、まあいいや。
「甘えさせていただきました」
「くっ……」
ブラッシュは今までのデカい態度が嘘のように顔を伏せ、小刻みに震えていた。
その姿を見ていると、レーナが準優勝で満足してしまったのも、ブラッシュの魔法を封じ込めてまで勝利にこだらなかった理由が分かった気がした。
「審判さん、魔法円が誤作動を起こしてますよ。おれの当たってないです」
「なに? 本当か?」
「はい。当たってないです」
ブラッシュは驚いた表情でこちらを見た。.
こんなポイントもらっても仕方がない。
勝つためだけにこの大会に送り込まれたスリズの剣士には、どうしても分からないんだろうなと思った。
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