表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/52

確信へ

 この試合だけなのか、それとも全ての試合なのかは分からない。


 ただ、間違いない事実として、この試合の判定を司る魔法円は明らかに正しく働いていない。完璧に防御した打撃に7ポイントなんて入るはずがない。目に見えない打撃の可能性も考えたが、それなら先ほどに一撃で終わりにしているはずだ。


「だめだ……動きづらい」

 

 色々と考えているが、左脇腹周りが締め付けられている感覚が気持ち悪い。頭がぼんやりしてくる。剣先で相手の攻撃をいなしながら間合いを取る。いい加減全く攻めようとしないおれの姿勢に嫌気がさしたのか、観客席から戦いを煽るような声が聞こえ始めた。だが、闇雲に近づくことは出来ない。


「ああああっ!!」


「くっ!!」


 いなしながら生まれた僅かな隙をおれは見逃さなかった。右手に持った剣を目いっぱいに伸ばし、スリズの男の左肩に突き立てた。思わず声が出てしまった。


「2ポイント!!!!」


「ああああああっ」


 これで3-7。さっきから「ああああ」としか言っていないが、とにかく痛いのだ。吠えてないと気持ちで負けてしまう。ただ、この2ポイントは大きい。一度スタートポジションに戻れるのがこれほど嬉しいとは。


「な、なあ審判さん……。魔法円の調子が悪いみたいで……。当たってないのに点数入ってますよ」


 とりあえず交渉してみる。


「何っ? そんなはずはない!!」


 と厳しい言葉を返されたものの、真面目な方なのか、試合を止め、おれの鎧を調べだした。言ってみるもんだ。

 会場は何事かと少しざわめいたが、いいトイレ休憩だとばかりに席を立つ人々が見えた。こんなどうでもいい景色について考えることが出来るのは、まだ思考力が残っている証拠だ。フウ達は相変わらず心配そうな表情をしていた。


 一方で、スリズの剣士は背中を向けたままこちらを見ようともしない。


「え~と…名前なんて言ったっけ……。審判さん、スリズの方の名前ってなんでしたっけ?」


「ん、ああ……剣士ユーキリだ。ってちょっと話かけるな。気が散る」


「あ、すいません」


 審判さんは、自分の右手に書かれた魔法円を、おれの体の隅々に当てては魔力を送り込んでいるようだった。この方法はおれもフウから習った。魔法円が正しく機能しているかを簡易的に調べる魔法円だ。ちゃんと調べてくれているようでホッとした。痛みもなくなり、いい休息になっている。


 自分も魔法使いの端くれではあるので(どちらかという魔法のが得意だが)流れている魔力をさらに追っかけてやることにした。もしかしたら異常が見つかるかもしれない。


「なあユーキリさん。あんた何か̪知っているか?」


「……」


 ユーキリは背中は向けたまま反応しなかった・


 そうこうしている内に魔法円の検査は終わった。


「何もなかったぞ!! 魔法円に異状なし!! きっと見えない斬撃だ。相手はかなりの強者だぞ。がんばれ!!」


「……ありがとうございます」


 『見えない斬撃』で片づけられたのは納得いかないが、魔法円に異状がない事は間違いない。審判の魔力を追っかけたが、おかしい動きをした形跡もなければ、それを隠してしるような事もなかった。

 『審判の魔法円』は正常に機能している。それは間違いない。


「両者前へ!!」


 審判の掛け声と共に左脇腹の締め付けが復活した。少し痛みから離れていたせいか、先ほどまでよりも気持ち悪さが増しているように感じた。だが、おれの身体と、鎧に残った自分の魔力が、それが正しい反応であることを証明していた。


「はじめっ!!!」


「終わりだっ!!!」


 すっと黙っていたユーキリがその言葉と共に強烈な突進を仕掛けてきた。おれは――――――完全に後れをとってしまった。脇腹の違和感と自分の残した魔力に気を取られた。――――――失態だった。


 鍔迫り合いに持ち込まれた瞬間。おれは――――――終わったと思った。間違いなく何かしらのイカサマがこの瞬間行われる。そして、おれはその対処法が分からない。


 とにかくおれは全ての攻撃を受け続けた。おれは、出来うる限り審判が見やすい位置を取り続けた。これしか対処法がなかった。


 その時だった。


 ユーキリの剣先から、微弱な魔力の流れを感じた。前は感じなかった感覚。


 その魔力はこちらの鎧に花入ってくると、描かれた『審判の魔法円』に侵入を試みてきた。おれは、残っていた魔力に追跡を命じる。侵入してきた魔力は、右脇腹ダメージ、3ポイントの制御を解除しようとしていた。


 こいつだ。この魔力が原因だったのだ。まさか直接魔力を送り込むとは。しかもかなり微弱でステルス性が高い。なんて悪質な!!! 頼む、魔力よ、間に合ってくれ!!!!


 審判の手が上がった。ダメージの宣告が始まる。間に合わなかったか!!


「2ポイント!!!!!!!」


 一際大きな歓声が上がった。


 3対9!!!!まだ負けてない!!!まだ試合は終わっていない。――――――間に合った!!!!ギリギリのところで3ポイントダメージの制御を止めることに成功した。


「ああああああああ!!!!!」


 本当に今日は「ああああ」とばかり言っている。だが仕方がない。「ああああ」と言いたいのだ。

 おれは思わず大きくガッツポーズをしてしまった。観客からしたら追い詰められすぎて頭が狂ったように見えたかもしれない。


 このガッツポーズの意味を知るのはただ一人。そう――――――ユーキリだけ。


 男の顔が青ざめていくのが分かった。残念だが、あんたにもう勝ち目はない。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ