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スリズの剣士

 剣を抜き、ゆっくりと相手と向かい合う。どんなに鋭く冷たい目線を向けられようと、やることは変わらない。敵の弱点を見つけ、そこを徹底的に叩くこと。おれは別に強い訳ではない。だからこそ、弱点を見つけて謙虚にそこを攻めつづける。実践を通じて掴み始めているおれの戦い方だ。


「はじめ!!!!!」


 審判の掛け声と共に歓声が沸く。慣れてきたせいか、この瞬間がとても気持ち良くなってきた。おれは変態

だったのかもしれない。いや、血に飢える野獣か。そんな厨二的な考えが頭をよぎる。


 相手の剣が、おれの頭部を目掛けて一振、また一振と振り下ろされる。牽制なのだろうか? 殺気も威圧もない。ただ意図は感じる。おれはそれを剣で受け、また上体を逸らして避け、体制を整えながら再び剣で受ける。同時に、歓声の声が大きくなった事に気付いた。致命傷はない。おれの動きに歓声が反応した事がハッキリと分かった。


「……やるな」


 スリズの男が小さく呟いたのが分かった。あれだけ反応が薄かった人間に褒められるのは悪い気がしない。


「どうも」


 お礼の言葉を投げつけながら、おれは剣を払うように相手の胴に向かって攻撃した。


「1ポイント!!」


 審判の声が響き、歓声が沸いた。続けて繰り出した連撃は相手に止められてしまったが、1ポイント取ったことは大きい。


 間合いを取りながら元の位置に戻る。今までの試合で一番調子がいい。このまま押し切れるかもしれない。

 だが男の表情は変わっていない。強烈におれに睨みつけ、そして不気味なほどに落ち着いている。まだまだ油断は出来ない。


「……君は強いな。だが勝つのは私だ。悪く思わないでくれ」


 なんという自信に溢れた言葉。ポイントを取ったのはこっちだというのに。まだ何か隠し球があるのか。


 先ほどまでとは打って変わって急激に間合いを詰めてくる。つばぜり合いになりながらも相手の攻撃を受け止め、再び間合いを取る。この程度の動きならなんてことない。


 だが、突然左脇腹に強烈な違和感が走った。今までに感じたこのない違和感。


「7ポイント!!!」


 今まで一番大きな歓声が沸く。何かに縛りつけられ、自由にならない感覚。おれは思わず片足をつきそうになった。なんだ!!??なぜ拘束の魔法が発動している?? 攻撃はあたっていないはずだ。何でポイントが入った。


「くっ……何をした。攻撃は全て受け止めたはずだ」


「……」


 男は答えない。ただ、今までとは違い、睨みつけるようなことはなく、目を逸らしているようにも見えた。


 明らかに点数の入り方がおかしい。今までの試合でもおかしなポイントの入り方をしていたこともあり、思わず頭に血が上った。このクソ審判が!!!! と思わず叫びそうになったが、よくよく考えてみれば、審判は装備に着けられた魔法の判定を読み上げているだけだ。罪もないであろう審判に八つ当たりするのはお門違いかもしれない。


 取り敢えず落ち着こう。今の頭では勝てる試合も勝てなくなる。

 冷静になるために間合いを取りながら会場にいるフウ達の顔を見た。必死で応援をしてる彼女達の中で、唯一レーナさんの表情が曇っているのが分かった。


 それは、何かを悟ったような表情だった。そして、おれはその表情を知っていた。ギルマスとスリズ国のことを話していた時の表情だった。


 その瞬間、この試合が、正当なルールで行われていない可能性があることに気づいてしまった。

 

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