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お昼休憩

 全ての二回戦が終わった後、おれとフウとアクアはお昼を食べることにした。もし決勝まで行くとなると、あと3試合戦うことになる。腹ごしらえは必須だ。


「屋台のご飯を食べてみたい」というフウのわがままもあり、闘技場会場内で販売している屋台めぐりをすることになった。ちなみにエニス王女は来客があったそうで、がっかりした表情で城内に戻っていった。


「何食べようかなー」


「い、いろんのなのがあるんですね!!


「私はなんでもいいですよ」


 先程までの緊張感はどこへやら、とても穏やかな空気が流れていた。


 屋台は闘技場の場外に観客席に出口を取り囲むように乱立していた。よく知った日本の夏祭りのような規則性はなく、良さげな場所に隙間があれば、その僅かな隙間に無理やりねじ込んでいた。時には歩くのも困難なくらい狭い場所もあったり、食材を踏んでしましそうになるくらいはみ出して営業をしている屋台もあった。


「ねえ、ミヤは何を食たい?」


「そうだな……」


 獣の肉あり、魚肉有り、小麦粉を固めた何かがあったり、スープがあったり。意外と種類がある。おれの腹はスッカラカンであり、何を食べても美味しい状態だったが、どうせなら一番美味しいのが食べたいと思った。


「フウのオススメは?」


「そうだなあ……、これなんてどうかな?」


「指をさしたのは謎の赤い液体だった」


「血液……かな?」


「なんで血液なんてすすめるのよ!!! 果物のジュースに決まってるじゃん。甘くて美味しいよ」


「へ、へえ。じゃあ飲んでみようかな」


 本当にうまいのだろうか……。


「よーし、じゃあ初勝利記念で奢ってあげよう。おっちゃん、二つくださいな」


「はいよ!!」というおっちゃんの威勢のいい声が響く。木製のコップに赤い液体が注がれる。見た目は間違いなくトマトジュースだ。とにかく赤い。


「二つで300ギルだ」


 フウは布の袋から硬貨を取り出すと、屋台のおっちゃんに渡した。久しぶりに硬貨で支払っている姿を見たかもしれない。


「『キャッシュ』は使わないのか?」


「こういう屋台はだいたい硬貨だよ。いろんな理由はあるけど、『キャッシュ』を信用してない人もいるからね」


「全部の店で使えると思ってた」


「ファンニル周辺はね。外から来た商人さんは使えない場合があるから、硬貨も用意しておいた方が安心だよ」


「なるほど。気をつける」


「それはそうと、ほらほら、グイっといって!!」


「あ、ああ」


 おれの手が止まっている事に気付いたのか、フウは執拗に飲むことを勧めくる。実はマズイんじゃないのか、この飲み物。そして今更だが、おれはトマトジュースが大の苦手だった。


「ほれほれ」


 うーん、取り敢えず鼻をつまみ、液体を喉に流し込んだ。液体が僅かに舌先に触れ、空っぽの胃袋に落ちていった。


「ああ! そんな不味そうに飲んで!!」


 結果は――――ーー。


「あれ、本当に美味しいねこれ」


 美味かった。冗談抜きで甘くて美味しかった。酸味が弱いオレンジジュースが近いかもしれない。


「でしょー! もっと味わって飲まないと。もう一杯飲む?」


「飲む」


「あーでも不味そうにのんだしなあ。どうしようかなあ」


 フウはイタズっ子のような目でおれを見ている。からかうのが楽しくてしょうがないと言った目だ。


「ごめんなさい、もう一杯ください」


「よーし、そこまで言うならしょうがない。えへへへー。」


 どんだけ嬉しそうな顔をしているんだよ。


「おっちゃん、もう二杯追加ね!」


「はいよ!!」またもおっちゃんの威勢のいい掛け声が響く。二杯って、お前も飲むんかい。

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